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吾輩は神によって殺され悪魔の手によって過去に蘇った  作者: 赤い獅子舞のチャァ(実際の人物及び団体とは一切関係在りません)
明治技術革新編
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【改定版】兵器開発編 Vol.4

いよいよ自動小銃の試作が完成するか?と思いきや様々な障害が・・・

しかし一太郎は・・・

兵器開発編 Vol,4

只今ニトロセルロースの試作中に付き、お静かにお願いします。

こんにちは、先日何でも無い事のように脚気の解決策を軍に提示してしまうと言う地雷原に足を踏み入れてしまった、やっちまった益田一太郎です、皆様如何お過ごしでしょうか、小官只今、冒頭に書いた理由に付き、今これまでに無いほどに慎重に実験致しておる次第であります。

濃硫酸だけならばそんなに扱いが慎重にならずとも良いのですが、濃硝酸の方においては洒落にならないレベルの強酸、やっと届いたばかりの実験器具を掴む小官の手にも緊張による妙な震えが出ております。

取り敢えず、作業は大気中の酸素との反応を避ける為に、まぁ気休めでしか無いのですが空気中最大濃度の窒素よりもずっと比重の重い気体、アルゴンを充填した水槽の中で行う。

粘性の高い濃硫酸に、ゆっくりと濃硝酸を注ぎ、慎重に混ぜ、混酸が完成、さぁ此処からも気を抜けない作業だ、グリセリンを混酸の中に混ぜ込む、これでニトログリセリンが完成、だが未だここから更に工程を踏まねばいけない。

綿花を買い付けた理由は、セルロースを抽出するにあたって木の皮とかを使うと手間暇がかかりすぎるが綿花であれば綿、綿はほぼ98%程がセルロースで有る為、精製が必要ないのだ。

綿花から綿を集め、容器に入れ、上から少しづつニトロを流し込む、すると硝化反応が発生する、硝化反応が終わるまでしばらく待ち、硝化済み綿を取り出し、煮洗いと流水洗いを複数回繰り返し行うのだが、ここからは非常に時間が掛かるので今は大量の水に漬けて煮洗いを始めた、これで一段落ではある。

さて、うまくできたかは三日後になる、丁寧に酸を洗い流す必要性が有るからだ。

この洗い流しが出来ていないと自然発火等の事故の頻度が格段に上がるのだ。

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今は試作でほんの少量だけなので、煮洗いにしても大型ビーカーでやっているが、本格的に作るとすればかなり大掛かりな施設が必要になるのは仕方が無いだろう、この火薬を作ると言う事は自動小銃を出来る限り安全に運用する為には絶対条件だからなのだ。

流水洗浄をしながら慎重に裁断をして別けていく、その過程で不純物が有れば取り除いていく、この辺りの地道な作業を部下に交代で行わせる。

何度も煮洗いと流水洗いを繰り返す、こうやって酸を取り除くしかないのだ。

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「隊長、煮洗い10回、流水洗い5回に伴い裁断も終了しました、ご確認下さい。」恐らく夜通し洗ってくれていたのだろう、若干目の下にくまを蓄えて井上軍曹が報告に来た。

一応これでニトロセルロースの完成、の筈である。

現在ビーカーに並々充填された水の中に沈む“綿”状のそれを一つまみし、その感触を確かめると、確かに硝化はして居るのだろう、元のふわふわした綿では無く、そうだな、敢えて表現するならばキッチンで使う食器洗い用のスポンジの繊維のような硬めの感触の綿と言う感じだろうか。

「よし、では次の作業だが・・・」

これが一番危険だ、脱水作業。

この為の人力遠心脱水機を作成していた小官は、それを抱えて作業場へ向かう。

うん、丁寧に洗って裁断したのが伺える白く美しい綿状の物質がそこに存在した。

遠心脱水機に入れ、ハンドルをグルグル回すと中の笊が高速回転をして水分を飛ばすようになっている。

さて、脱水も完了である、成功して居ればこれはニトロセルローズ、シングルベース火薬である。

僅かに残る水分を、和紙に挟んで丁寧に水分を取った後、細かく裁断されているそれを一つまみして、作業台の上に置かれた鉄板の上に置く、ほんの少量だ。

「さて諸君、貴官達が先ほどまで丁寧に洗い続けた綿がここにほんの少し、微量にある、成功であればこの綿は、叩くと破裂する、つまりこれは、成功して居れば火薬である、誰かこれを破裂させる役をやって見たい者は居るかね?」

「小官にやらせて頂いても宜しいでしょうか?」

と真っ先に手を挙げたのは、脚気騒動で小官に名前を憶えられた佐藤上等兵だ。

「よし、では決まった、それでは此方へ来たまえ、良いかね?ここに一本の金槌が有る、これでその綿を軽くで良い、叩いて見よ。」

「は、では、参ります。」

佐藤上等兵が金槌を構え釘を打つ程度の強さで叩くと、 バンッ!と言う音と共に火花が散り、金槌が跳ね上がる。

成功である。

跳ね上がった金槌を思わず手放してしまった佐藤上等兵は慌てて※鉄鉢(てっぱち)を被った頭を抱えて蹲る。

カンッと言う音を立てて佐藤上等兵の鉄鉢の上に金槌が落ちた、かぶってて良かったな、佐藤君。

「成功だ、山田軍曹、中将閣下に報告しに行ってくれ。」

「は、了解しました。」

中将閣下には今何を作って居てどんな意味が有って作って居るのかが伝えてあるので、直ぐにお越し頂けるはずである。

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「とうとう完成したようであるな。」

ご機嫌で中将閣下が現れる。

「はい、遂に出来ました、この火薬ならば、新しい装薬になります。」

「では早速見せて貰おう。」

「は、了解しました、こちらが無煙火薬となります、無煙と言っても完全に煙が出ない訳ではありません、ごく少量の煙は出ます。煙があまり出ないと言う事は灰があまり出ないと言う事なので、小銃の火室が汚れ難いと言う事になります。」

「白いな、綿のようだが本当にこれが破裂するのかね?」

「では、今からお見せ致します、佐藤上等兵。」

「は、実験開始します。」

先ほどと同じように実験が行われ、また、大きな音と共に火花が散り金槌が跳ね上がる。

今度はしっかり握ったらしく佐藤上等兵は金槌を飛ばさなかった。

「如何でしょう、あの少量でこの威力です。」

「よし、これならば威力にも申し分ない、採用としよう。 付いては、民間で生産させようと思うのだが良いか?」

「勿論です、雇用を増やせば国が潤います。」

「それから、貴官には特許申請を薦める、生産が増えれば貴官の懐も潤う事になるるからな。」

「そのようにさせて頂いても宜しいのですか? 小官はあくまでも軍の・・・」

「気にするな、今後もどんどん新しい発明品には特許を取得せよ、儲かれば遣り甲斐も生まれる、ますますな。」

脚気の事件以来、中将の小官への信頼度は鰻登りの様でこんな素晴らしい提案を頂いた。

その後、一日休みを設け、試射用に四日掛けて少し多めのニトロセルロースを作る事にした。

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翌日、小官は一人休暇を取らず、例の反射炉に出向いて来たのだった。

建物もすっかり奇麗に改修されており、小官の希望の通りに反射炉の上に熱再利用発電機に使うための簡易蒸気機関とも言える水タンクと配管のジョイントが設けられていた。

「まんず、良い炉だなす、あっちゅう間に高温になって扱いやすいずら。」

既に少しづつ部品を作り出して居る様で、いくつかの部品の試作が転がって居る。

其処へ、少佐殿がやって来た。

「ああ、来てたのかね、益田准尉、どうだい、良い施設になったろ?」

「どうもお久しぶりです少佐、小官の方は電気の重要性を政府に理解させるべく電球と溶接技術の確立と、自動小銃に使用する装薬の開発に奔走しておりましてやっと手が空いた所であります。」

「そうか、私は教鞭を執りながらなのでこうしてその日の全授業を終えてからでないと来られないが、そろそろこちらに本腰を入れたいと思って居てな、先程転属の希望を出して来た所だ、貴官等と一緒に兵器開発に本腰を入れたい、それ程に貴官の構想が魅力的だったのでな。 あ、心配せんでも良いぞ、私が兵器開発部に配属されても所長は君のままで行くようにしておいた。」

「あ、いえ、そんなお気遣いは無用です、小官は純粋に研究開発が出来れば良いのですよ、むしろ所長等と嘯こうともこの通りまだ数えで十の子供でしかありません。

むしろ少佐殿に所長職を買って頂きたいと思って居った次第なのですが、お受けして頂けませんか?」

「ふーむ、貴官がそこまで言うなら一考して置くとしよう。」

「お願いいたします。」

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後日、少佐殿が所長職を買って出て下さったので小官はこれまでより動きやすくなった。

今日は部隊を引き連れて、買い付けた銅線等、発電機の材料全般の受け取りに浦賀港に来ている。

形状を考えてその通りに作るように指示した部品が間違いなく設計図通りの物になって居るかを調べる為には出向く必要が有ったのだ。

「何だこの部品は、何でこんな平面的になって居るのだ、違うものになってしまって居るではないか・・・うーん・・・いや待てよ?この位なら自分で直すか。」

少しでも早く発電機の完成をさせたかったのでちょっとおかしな部品はあったものの、自力で成型出来ない程で無かったのでそのまま受け取った。

後日、この部品が下手に発注通りに作られて居るより、平面的に作られていて自由度が高かった事が不幸中の幸いになったが、発注に使用した製図の書き方が間違って居た事に気付いたのだった。

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発電機が完成し、反射炉の熱を再利用する計画を実行する、これを足掛かりに本格的な発電所が建てられるように成れば、完全に技術革新を推進できる。

アーク溶接もさる事ながら、電気を使った炉、アーク炉の開発にも繋がるだろう、もっと大量の金属を精製出来るだけで無く、本格的にステンレスやチタンなどを得るには必要だ。

其の上この発電機はピストン式蒸気機関の試作モデルでも有るのだった、これがうまく機能すれば、蒸気機関車、木炭車に流用出来るだけではなく、ガソリンや軽油を利用した化石燃料エンジンの足掛かりにもなるだろう。

工房へと顔を出すと、少佐殿が工房事務室で頭を抱えていた。

「如何なされました?少佐殿。」

「ああ、来たかね、益田君。 どうしても錬鉄で作れる部品が少ないのでな、鋳物だと強度に不安が残るのだ。」

「そうですか、では次の手を試しましょう、実は京都は大江山にてたまたま地質調査を行った所、ニッケルと思しき金属の層が発見されたので、原石を送らせたのですが、小官の見立てでも恐らくニッケルでした、これを鉄と混ぜましょう。硬度が確保出来る筈です。」

「なんと、それは試してみる価値がありそうだ、ではクロムも混ぜて見よう。」

「それは大変良いと思います、配合を色々試してみましょう、もしかすると後世にも残せる金属が出来上がる可能性も有ります。」

当然ながらこの組み合わせで出来る金属はステンレスだ。

当面は普通に鉄鋼として運用出来れば良いが、エンジン等を作るのならば願わくば硬化系ステンレスに発展させる事が必要となるだろう。

しかし、予想以上に自動小銃の試作に手間がかかって居る。

ここ迄苦戦するとは思って居なかったが、先に発電の重要性をお偉い様方に説き、発電所の建設を急がせた方が後々の発展がしやすいだろうと発想を切り替えて見る事にした。

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何にせよそろそろ年末だ、自動小銃の完成は翌年に持ち越す事にした。

そして発電所の重要性を説くプレゼンをする為に奔走している矢先に、中将閣下より正式書面での呼び出しを受ける。

一体何だろう、こんな時に・・・・・

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