壬午軍乱
朝鮮国のクーデター、壬午軍乱が発生、だが・・・
壬午軍乱
明治15年、7月26日、朝鮮国首都 漢城にて、朝鮮人兵士達による、大規模な反日反乱攻勢が起こった。
しかし、大日本帝国軍は、すでにその動きを読んでおり、最新鋭軍艦4隻と陸軍海軍の混成部隊4000人が漢城に上陸しており、未然に防がれる事になる。
「何かが起こると解っておった以上最善の対応策を講じる位容易である。 これで事件は被害無しで治める事が出来た。」
とは海軍大将の後のお言葉であった。
恐らくは既に警戒をしていて数名のスパイを放って居たのでは無いかと思われる。
この動乱は、閔氏政権並びに、大日本帝国公使館へ対する、前政権の興宣大院君〈フンソンデウォングン)とその親派によるクーデターであった。 この反乱軍は、旧装備(火縄銃など)しか持ち合わせていなかった為に、自動小銃と短機関銃の敵では無かった。
直後、完全制圧の後、興宣大院君は逮捕拘束の後、幽閉される。
閔氏政権は近代化を推し進める為に帝国軍に協力を求めておったのだが、資金が不足し、真面に兵への支給配給が行き届いて居ないのが現状で有ったのだ。
このクーデターを察知した清国は、建前上鎮圧の為に、本音では軍隊を駐留させたい一心で出兵するも、帝国軍の素早い配置と圧倒的火力によって朝鮮国へ入国前に事態は収束してしまい、思惑が外れてしまい憤りを感じる事となる。
---------------------------------------------------------------------------
日本では、作戦が成功し、公使館に滞在中の公使館員や軍事顧問など、誰一人の死者も無く事態を収束出来た事で、作戦を立案していた海軍大将を筆頭に参謀本部は胸を撫で下ろしていた。
そんな参謀本部へ、小官は呼び出しを受けていた。
この糞忙しい時になんだ、と言いたい所では有るけど、小官自身が予言した壬午軍乱が史実通り起きたので意見を求められているのだと悟った小官は素直に応じる事にしたのだった。
それにしても、7月に朝鮮で事件が起こると言って置いただけなのに、見事に歴史をガラっと変えてくれたもんだ、恐るべき対応力だな、元未来人の熱い男、海軍大将閣下殿・・・
「さて、被害が無くホッとした所だが、ここでこの作戦に立案に一役買った者を紹介したい、益田少佐、入りたまえ。」
「は、失礼いたします。」
身嗜みを整え、勲章を曲がって居ないかチェックしてから重い鉄の戸を開けて入室すると、其処は煙草の煙でモクモクと真っ白に煙った幻想的な世界であった。
(ウ、タバコくせぇ!)等と思いつつ歩を進めると、周囲がざわつくのが良く解った。
「おい、何だこいつまだ子供では無いか。」とか
「噂の神童様でありますか、あの歳でもう勲章迄賜っとるんか。」と揶揄する声も聞こえる。
そこで、「諸君静粛に、彼が今回の作戦が立案するに当たっての、言わば預言者とでも言えるのでは無いかな? 益田少佐だ、さ、少佐、自己紹介を。」
「は、では失礼して。 兵科技術研究所所属、益田一太郎少佐であります。 先ほど海運大将殿の仰られたような預言者と言う事は無く、今回の動乱は朝鮮国の国力を考えると至極当然で起こりえた事なので予期するのは簡単で有りました。 なので小官の開発した新装備を早急に試験配備して頂き、今回の鎮圧劇で運用試験が出来たので、実験の成功を喜んで居りますのは我々兵科技研の方で有ります。 以後お見知り置きをお願いしたく存じ上げます。」
「はっはっは、謙虚だな、益田君。」
「いえ、未だ若輩者故、目上の方々を敬って居りますので当然であります。」
「で、この度君に来て貰ったのは、この度の朝鮮国での事後の策についての意見が聞きたくて呼んだのだ。」
と、大将閣下は小官に丸投げしてきた。
「小官にで有りますか? ご意見出来る立場には無い様に思うのですが。」
「いや、経済にも精通している貴官にこそ聞きたいのだ、賠償額であるとか、相手に対してのその他の要求をどうするべきかとな。 思った事を言って貰って構わん。」
「は、了解いたしました、其れでは申し上げます。 現在の朝鮮国の財政は、兵にろくな給金、配給、支給が出来ない程ひっ迫しておる状況になります。 更にはそこに我々帝国軍が西洋式軍隊の運用等を教える為に軍事顧問等を派遣して居るのが旧政権親派は気に入らなかった事で起こったと推測されるこの事件で有りますが、幸いな事に、今回我々帝国側は戦闘員だけで無く非戦闘員に置いても誰一人欠ける事無く生存して居るとの事ですので、新装備及び新戦法の検証も出来たと言う事で今回は賠償金は不問にしては如何でしょうか?」
と意見を述べると、
「それでは帝国軍の威厳に関わるのでは?」
とか、「軍艦の運用や弾薬も只では無いのだぞ、そのような事では舐められる。」
等と否定的なご意見が飛び交う。
「お言葉ですが、あのような貧乏国を相手にしても仕方が有りません、小官の開発した兵器や様々な電気製品並びにエンジン、自動車等を英帝国や合衆国へ輸出する貿易でかなりの外貨を稼いでいて国家的には潤って居ります、貧乏な国に何を売りつけた所で一文にもならず損をするだけと思って居ります。 実際に益田一三年式小銃をかの国に持ち込んで配り教導をしていたようですが、其れによってかの国からすでに対価が支払われた記録が有りますか? 恐らく一時金として僅かに支払われたきりで以後入金は無いのでは?」
「・・・・・・・・・・・」
「当たりのようですね、朝鮮国にこれ以上賠償金を払えとか、軍の駐留を認めろ等と言った日には、またいつ同じような事件が起こるか知れた物では有りません、追い詰められれば鼠も猫に噛みつくのです。」
「うむ、一理あるな。」ざわつきが起こる。
「そこで提案なのですが、折角開国のお手伝いをと思って行った行為に対して兵の統率も出来ずクーデターを許すような脆弱な国では公使館員を滞在させるに値しない、国交は断絶しないでおきますが引き上げさせて頂くとでも言って全員引き上げて来たら宜しいかと思います。 朝鮮国は清国やロシアも狙って居り敵が多すぎます。 君子危うきに近寄らず、であります。 確かに帝国の軍事力は世界一となって居ますが、清国やロシアの広大な土地を持つ国が相手では、一体どれだけの人的資源を持っているかもわかりません、一時的に勝てても継続して抑えられないのでは意味が無いのです。
我が帝国の数百倍の徴兵が可能、むしろ数千倍でも可能かもしれない相手に真っ向から向かい合うのは避けた方が良いと思います。 圧倒的な物量の前ではこちらの資源には限りが有りますので。」
「詰まる所貴官は帝国は戦争に勝てないと言うのかね?」
「その言いようでありますと少々意味が違います。 短期決戦で一時的には確実に負けません、ですが、何年も続けば相手も技術向上をして来るでしょうし、何よりも兵士の数がまるで違います。 百丁の自動小銃に対して、2万人の単発小銃ではどちらが強いですか? そう言う事です。」
「こちらも2万人用意したらよいでは無いか。」
重箱の隅をつつく様な意見が飛んで来た。
「ああ、つまり小官の例えを鵜呑みにされたのですね、申し訳ございません。 では言い換えます、現在帝国軍人は末端から大将閣下まで含めまして60万人強の兵が存在致すると思います。 それに対して 3000万人以上の兵を持つ国は相手として大き過ぎると申しておる次第であります。 あれだけの大きな土地を保有する国家ですから、あり得ない事では有りません、どんなに捻出しても無い袖は振れないと言う事です、圧倒的な物量の前ではどんな凶悪な兵器でも赤ん坊同然で有ります。」
こんな事言っても小官は未来から来てるので圧倒的大量虐殺兵器の存在を知って居るのだが・・・原爆、毒ガス、生物兵器、そんな大量虐殺の兵器は認めてはいけないのだ、そんな物を根絶やしにする為に小官は挑んで居るのだから。
「・・・・・・・」
反論は無くなったようだ。
「反論やご意見は無くなったようなので続けさせていただきます。 駐留しないと言う事で、もう一つの効果が得られると思います、駐留すれば今回の様に反旗を翻す輩が現れる事も容易に考えられる事では有りますが、その必然性は消え、我が国の軍事力は脅威にはなりますので近隣、特に挑戦には必要となる戦力で有りましょうから、支援だけはしてやる事で恩を売る事は出来ます。
目先の事より50年100年先に、朝鮮国が良い関係の友好国となるかそうは成らないかの差がここで出るのです。
支援はすれど統治せずであります。
我々も、もしも維新戦争の後、海外よりの駐留軍を受け入れ、統治関連の口出しをされる事態になって居た場合、今回の朝鮮国のような事件が起きた事と思われます、むしろ我が国の方がもっと頻繁に起きていても可笑しく無いと思います。
で、あれば恩だけ売れればそれで良いと思いましょう、欲をかき過ぎても何も良い事は有りません。 只せめて朝鮮国に資源があれば、今後貿易によっていい関係を築けそうで良いのですが、期待できそうにも無いのでそこだけは問題で有りますね、かの国は金も無いので・・・。」
「其れこそ我が国の企業を派遣して労働力を提供させれば宜しいでは無いか。」
ハイ来た、それでもやはり外国企業となれば日本人と同程度の給金を出していても徴用されたの奴隷扱いだのと言い出しかねない、それでは歴史上と同じ轍を踏んでしまう、彼等には彼らのルールでの自主性を大事に育ててあげねば成らないと思う。
「それでは結局外国企業による乗っ取りであると曲解する者が現れても可笑しく無いと思います。 そうでは無く、朝鮮国政権へ直接交渉し、我々と取引が出来る様な国家企業を作らせてその製品を買い取ると言う方法で恩を売りましょう。 実際に今までどのような支援をしても蔑ろにされて居たのでこちらとしても只の商売相手としか見ない様にしてしまいましょう。 信用等は後から付いて来るものです。」
「しかし、清国から独立したいのでは無いかね?かの国は。」
「ええ、だからこそ我々に縋り付いて来たのでしょう、ですが見返りが期待できない以上、静観するしかないでしょうね。 だからこそ、商売相手として見ると言う方が都合が良いのでは無いですか? あくまでも自分達の力で公社を立ち上げさせ、我々や、ヨーロッパ諸国との取引で外貨を稼いで頂いて自力で独立の国力を付けて頂けば良いのでは無いかと思う次第であります。 我々が今からしなければ成らない事は外貨は自力で稼げと煽る事です、我が国が維新戦争の際に最終的に植民地化しなかったのは外国から見て魅力的な文化や産業が既に在ったからであると思って居ります、朝鮮国はまともに長期間統治された歴史が無くずっと戦乱であったのでそのような産業や文化が何もないですから、自力で産業を開拓させる必要があるのです。」
この取り組みが成功すれば、朝鮮王后の地位も不動の物となるだろうし我が国に信頼を寄せる王后が我が国との国交に一役買ってくれる事だろう。
---------------------------------------------------------------------------
参謀会議から解放された小官が兵科技研へと帰ると、大佐殿が何やら格好の良いサーベルを下げてご機嫌である。
「益田少佐、ただいま戻りました。」
「おお、益田君、見てくれ、格好良いだろう、フランスの将校の下げてるサーベルを手本に日本刀を一寸西洋風にしてみた、これを村田式サーベルと名付けて将校に持たせようと思うのだがどうかね?」
なんと驚いた事に、小官の開発に釣られたかのように2年も早くサーベルを開発して嬉しそうな大佐が居たのだった。
「素晴らしいでは無いですか、軍服にはこのデザインの方が似合いますし、小手の防御も出来そうですな、良いと思いますよ。」
かくして村田サーベルは2年も早くお目見えする事になった。
早速小官用にも一振り、体に合わせて少し短めな物を作って頂こう、結構好きだ、このデザイン。
じわじわとお気に入り登録して下さる方が増えています。
私の拙い文章力でも読んで頂いて有り難い限りです。
より一層精進致しますので今後もよろしくお願いします。
宜しければ評価、感想、ご意見等、お待ちしております、よろしくお願いします。