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9.友達だから

 

「あの、ところで他にも部員の方はいないんですか?」


「いることはいるけどねーでも、人数合わせと設立の為に集めただけでほとんど顔は見せないんだよね。ま、その内来ると思うよ。その時には月渚るなちゃんにも紹介してあげるね」


「は、はいっ! よろしくお願いします」


 他の人もこのふたりみたいに優しい方なのかな。たくさんお話出来たらいいな。


「おい、結城ゆうき……月渚さんに紹介ってあいつをか? あいつはあまり優しくないだろ。だからあまりいい評判を受けてないようなもんだし……」


「そうだけど。さすがに同じ部員のコには優しくするはずだし、それに問題なのはあいつだけじゃないでしょ。ウチは他のサークルとは扱いが違うわけだし。何とかするって!」


「……だといいけどな」


 な、何だろ? そう言えば文芸部に入るって言ったら喬子きょうこちゃんは首を傾げていたような……? それに勧誘して来た人たち特に男子たちはさいさんを恐れていた気がする。


「月渚ちゃん、不安にさせてごめんね。大丈夫、心配しないでいいよ。ちょっとクセのある部員がいるけど、わたしらはその子らより一つ上の3年だから文句言わせないからね」


「はい」


 色んな人がいてもおかしくないよね。どんな人なのか分からないけど、会って話をしてみないことにはその人のことを知ることも出来ないだろうし、うん、大丈夫。


 コンコンコン……


「どうぞ? 開いてるよー」


「……」


「何? いたずら? ごめん、月渚ちゃん一応ドアを開けてみてくれないかな?」


「あ、はい」


 ドアをノックしてきたけど、彩さんの声に対して返事が無い。誰か来ているのかな。近くにいたわたしは部室のドアを開けると、そこに立っていたのはゼミの男の子だった。


「あ……え、えっと」


「月渚さん、ちょっと下がってていいよ」


 カエデ先輩に言われた通り、少しだけ後ろに下がって様子をうかがう。


「何か用かな? ここは文芸部だけど。入部希望……じゃ、なさそうだね」


「……そこの、女子を呼べって言われて」


 わたしに向かって指を指しながら、じっと顔を見つめて来る男子。な、何で?


「人に指を指すのは失礼だと思うけど、君はどこの誰? 名前は?」


石動いするぎ。そこの女子と同じゼミで、同じゼミの女子が呼んで来いって言ってたから」


 気を付けて彼の顔を見ると、確かに同じゼミの男子だ。わたしを呼べって……それってきっと、マキちゃんのことだよね。あ、そっか、勝手にいなくなってしまったから心配させたよね。


 だけど、石動さんだけ来させたのかな? しかもどうして男子を……。


「カエデ、あんた月渚ちゃんをどういう状態でここに連れてきたの? まさか無理やりに拉致ってきたとかじゃないよね」


「あっ……」


 彩さんに言われた槭先輩は、理由はどうあれ勝手に連れてきたという事実に首を左右に振って、何とも言えない表情に変わっていた。


「いくら月渚ちゃんが落ち込んでたからって、勝手にゼミの子たち置いて連れ出すのはいただけないなぁ。気持ちが逸った気持ちは分かるけどさ。だからカエデはヘタレなんだよ」


「ご、ごめん。それで、月渚さん。彼とそのゼミに戻る? いや、戻れる?」


「え、えっと……多分、友達が待ってるはずなので戻ります」


「月渚さんがそう言うなら大丈夫かな? それじゃあ、石動さんは彼女を連れて行ってくれる?」


 石動さんは軽く頷いて見せ、ドアの前から離れて廊下でわたしを待っている。


「月渚ちゃん、またおいでよ。あなたはもうウチの部員だし、いつでも気軽に部屋に来ていいからね」


「ありがとです、彩さん。それと槭先輩、そんなに落ち込まないでください。突然手を引かれたのはびっくりしましたけど、ここに来られて良かったです。じゃ、じゃあまたです」


 文芸部の部屋を後にして、廊下で待っていた石動さんの後ろを付いて歩くわたし。カフェに戻った時、きっとマキちゃんに怒られちゃうよね……。そんなことを思いながら、重い足取りで歩いていると前を歩く彼が口を開いた。


「……キミ、苦手?」


「え?」


「俺のこと……」


「そ、そんなことは……でも」


「ふぅん……ただ、気になった。それだけ」


「……え、あ」


 それだけのやり取り。その後はカフェに着くまで、石動さんが声を出すことが無かった。そしてカフェに着くとすぐにわたしから離れて距離を置いた。


「ちょっと、月渚っち! あんた、今までどこに」


「あぅ……そ、その、ご、ごめん」


 もの凄く怒られるかと思って、体を萎縮させて目を瞑るとふわっとした風と共に、マキちゃんが抱きついてきた。


「ごめんね。わたし、月渚のことをまだよく知らないのにヒドイ事して、本当にごめん」


「う、ううん。わたしも勝手にカフェからいなくなってごめん……心配させてごめんね。で、でも、マキちゃんは、もうわたしのお友達だから、だから大丈夫。ヒドイ事したなんて思ってないよ」


 昼間のカフェで抱きつく女子ふたり。注目を浴びたけど、気にならなかった。そういうこともこれからもあると思うし、何より友達だから――

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