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8.恋愛希望、です


「それで、月渚ちゃんは何を書いてるの?」


「あの、書いてなきゃ駄目ですか……? わたし、読むのが好きでそれで……」


「ううん、そんなことないよ。書く人も読む人も大歓迎だよ! じゃあ、どういうのがお好みなの?」


「その、わたし……恋を知りたい、です。もし、そんな本があったら読んで恋愛をしてみたいんです……」


 人見知りを、主に男子への人見知りを何とかしたい。そんな想いも含めて、本の力を借りてみたい。本に書かれている気持ちや言葉を自分の心に写すことが出来たらいいな。


「なるほどね。じゃあ、ここは槭の出番かな」


 彩さんが退屈そうにしている槭先輩に目をやると、応じるように彼は何かのフレーズを口にした。


「I miss, and NO can have already made that a sigh by a tear.」


「え? ハ、ハロー?」


「月渚さん、そうじゃないよ。これの意味はね、『恋ってのは、それはもう、ため息と涙でできたもの』って意味なんですよ。これを言ったのは俺の愛読書の作者でシェイクスピア。知ってるかな?」


「き、聞いたことはあります。そ、その意味はどういう……」


「月渚さんは恋愛をしたいんだよね? この先誰かを好きになると、ため息もするし時には涙も流すことを知ることになる。ってことなんだけど、それでも恋愛を知りたい? そしてそれを数多の本の中から学んで感じ取りたいってことだよね」


「それでも……知りたいんです。槭先輩、わたしに教えて下さい」


「え? それって本のことだよね? 本当の恋愛ってことじゃないよね」


「そ、それは……」


「カエデ……あんた、飛躍しすぎなんじゃない? 月渚ちゃんは恋愛の本が読みたい、知りたいって言ってるんじゃないの? 何でカエデから恋を教わるって風に取れるの……」


「あ、そ、そうだよね。ごめんね、月渚さん。もの凄く勘違いしてしまった」


「ち、違うんです。わたし、恋を知ってそして、本当に恋愛をしたいんです。だから、槭先輩の言ってること、間違いじゃないです」


 恋愛の本を読んで、わたしも本に書かれてるような恋をしてみたい……


「そ、そうなんだ。そっかー、月渚ちゃんが恋をね。まぁ、その前に月渚ちゃんは克服しないといけないことがあるし、まずは本をたくさん読んで少しずつ覚えていくしかないね」


「は、はい」


「そんなに難しく考えなくていいからね。何なら、恋愛が描かれたマンガ本でもいいし、俺が月渚さんの練習相手になることも出来るよ」


「槭先輩と恋を……」


 そう言えばいつの間にか、槭先輩の顔を見ながら話が出来てる。サイさんが近くにいるからかもしれないけれど、何だか怖い感じがしないし……優しいからなのかな。


「あーダメダメ! カエデが彼氏役とか務まらない。ヘタレだし」


「それは傷つくなあ。俺も人並みには恋愛をしてるんだけどな」


「へー? 人並みねぇ……」


 何だかふたりのやり取りを見ていると心がホッとする。もしかして、サイさんと槭先輩はお付き合いしているのかな? でもまずはここで本を読んで、それからもっときちんと話が出来るようにならなきゃ。

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