4.新たに出会うお友達
文芸部に入るって言っただけで、サークル勧誘の人たちが気まずそうに去っていったのは一体、何だったのだろう。
男子が苦手にしている女性でもいるのかな。よくわからないけど、行ってみないことには分からないよね。うん、お昼にでも文芸部のある部屋を探してみよう。
自分の希望した学部のオリエンがあるということで、広かった大講堂から講義教室へ移動をして中へ入ってみると、やっぱりというべきか男女それぞれで固まっていて、すでに知り合いらしき人たちで話が盛り上がっていたりで、どうすればいいのか分からずに立ち尽していたわたし。
マキちゃんは同じ学部じゃないのかな? ちょっとしか話をしていないけど、今のわたしにはマキちゃんしか話す人がいない。かと言って積極的に話を出来るかと言うと出来ないし。
「座らないの?」
「えっ、あ、えと……」
「オリエン始まるまで暇だし、ウチらと話、しよ?」
悩んで教室の入口に立っていたら、気にしてくれたのか数人のコたちが声をかけてくれて、戸惑いながらも頷いて、そのコたちが座る席についたわたし。
「オリエンだるくない? 同じの聞いても仕方なくない?」
「う、うん」
「緊張してるの? しなくていいよ。4年も同じなんだし、仲良くしよ? 名前聞いていい?」
「え、えと……月渚です。宮原月渚、です」
「月渚か~いいなぁ……私もそんな綺麗な名前が良かった。ちなみに私は、佳那ね。森下佳那」
「……山田喬子。てか、名字で呼ぶの禁止」
「で、自分が奈織。名字は省略ってことでよろしく~」
佳那さんと、喬子さん。それと奈織さん……一気に3人の女子に声をかけられるなんて思わなかったな。
「え、えと、みんなは最初から知ってるの?」
「そそ。自分以外の、佳那と喬子は塾が同じだったっけ? 自分は喬子が高校一緒だった。だから、話しやすかったっていうかそんな感じ」
「そ、そうなんだ。じゃ、じゃあ、他のコのことは知らない……?」
「そりゃあね。高校とは違うし、みんなと仲良くなる必要はないからね。後は~サークルが同じになるか、ゼミが一緒になるかで変わるんじゃない?」
「そ、そういうものなんだ」
遅刻してきたマキちゃんはここにいないみたいだけど、まだ怒られてるとか? ううん、さすがに解放されてるよね。やっぱり違う学部なのかな……
「それにしても月渚って肌白いね。モテたっしょ?」
「ううん、ずっと女子だけの学校だったから」
「へぇ~それでそんな感じなんだ。男子を全然見れてないけど、苦手?」
「その、接したことないから、だから」
「てか、大丈夫なのそれ? 自分らがいつも近くにいるとは限らないし、月渚1人で学内歩ける?」
「た、たぶん……」
3人とも顔を見合わせながら驚いているけど、でも別にわたしから話しかけるわけじゃないし、きっと何とかなるはずなんじゃないかな。
こうやってみんなと話をしている最中でも、どことなく視線は感じるけどそれはそんなに大変じゃないし、高校じゃないから話す人は限られてるし男子と話す機会はきっと無いよね。
そうこうしていると、オリエンが始まってみんなは渋々と、前に立つ学部長の話を聞いている。その最中、勢いよく前側の扉が開き、みんなが注目した先にはマキちゃんの姿があった。
「すいませーん。迷ってました!」
『早く座りなさい』
「あ、はい」
さすがに遅れて来たのが彼女だけだったので、一番前の席に座ることになったみたいで、わたしが座っている後ろの席からはマキちゃんの姿がよく見えなかった。
それにしてもマキちゃんは遅刻と言い、態度と言い何か目立っていた。初めて会った時から仲良くなれたくらい親しげだったし、彼女が一緒ならわたしもここで頑張れるような気がしてきた。
声をかけてくれた3人のコたちと、マキちゃんと一緒ならここでの生活も何とかなる予感がして、わたしは、お昼の時間になるのを心待ちにして時間を過ごした――