最終話:好きな人に出会うために。
文芸部に入れたわたしは、優しい先輩たちに出会えて少しだけ変われたような気がした。かけがえのないお友達のマキちゃんとは運命の親友といった形で、これからもお付き合いしていく予感さえ感じられた。
「守ってあげるよ! 月渚っちみたいにふわふわっと飛んでいきそうな子は、あの子たちとは違う気がするんだよね。月渚っちも薄々は気づいていたでしょ? キツイなとか、強すぎるなーとか」
「う、うん。そ、そうなんだけれど、でも、でもね……こんなわたしに話しかけてくれて、ちょっとでも仲良くしてくれたのは凄く嬉しいの。でも、文芸部の先輩たちのことをよく知りもしないで、学友会の会長とか、それをしているってだけで、やめた方がいいとか言われるのは何だか違うなって思ったの」
「本当に優しいよね、月渚は」
「そう、なのかな? でも、やっぱりわたし本が大好きなの。先輩たちもそう。裏で何かをしているって言っても、直接わたしには何も無くて……だから嫌いになんてなることはなくて、だから」
入学したての頃、同じゼミ生となった喬子ちゃんと、奈織さん。それに佳那ちゃんも。三人ともいち早くわたしに話しかけてくれたお友達。そうなれたらいいな、そう思えたけれど文芸部に入った頃から三人とのお付き合いも薄れて来て、ゼミでも上手く話せなくなっていた。
それを見捨てずにいてくれたのはマキちゃんだけだった。同じゼミの男の子も、結局わたしの態度的なものが苦手だったのか、親しくなることが叶わなくて途中でゼミも変わって行ったりして、お友達とのお付き合いや男の子とのお話も簡単には行かなくなってしまった。
「槭センパイって、彩さんだっけ? 付き合っているとか何とか」
「ううん、詳しくは分からないの……でも、お似合いだよね。羨ましいなぁ」
「男の子が苦手なのを克服するつもりなんじゃなかったっけ?」
「うん……わたし、卒業までには克服する……したいの」
「あー……ま、まぁ、卒業までには出来るんじゃないかな? 分からないけど」
「だ、だから、マキちゃん!」
「う、うん?」
「こ、これからもお友達でいてくださいっ!」
「何を当たり前のことを言うかな、この子は。たとえ卒業したってずっと友達でいる気だけど? それでいい?」
「うんっ! マキちゃん、ありがとう」
文芸部に入ったわたしは、先輩たちが卒業してわたし自身が就活を迎えるまで、結局男の子を克服なんて叶わなかったけれど、でもいつかきっと初恋……素敵な恋に出会えたらいいな。
いつか、好きな男の子に出会えたらいいな、そう願いながら――
これまでお読みいただきありがとうございました。
月渚のその後エピローグをもちまして完結します。




