19.文芸部のウワサ
「――なるほどね。月渚の願いってやっぱりそうだったんだ」
「う、うんっ……そ、そうなの」
「それにしたって身近すぎるのもどうかと思うんだけどね。確かにイケてる先輩ではあったけど、もっといるよ? 男子が苦手だから仕方ないと言えばそうなるけど、文芸部ってそんなに親身なんだ?」
「み、みんな優しくて癒されて、カエデ先輩も男子一人なのにすごく優しくて……だから」
「先輩ねぇ……月渚はまだ年上先輩のリードを受けるのは厳しいと思う。だから、先輩には後で断りを入れておいてあげるよ。月渚には荷が重すぎるってね! それでいい?」
「マキちゃんに任せていいの?」
「友達じゃん? やってあげる。甘やかしは駄目かなって勝手に思ってたけど、月渚の周りの女子はちょっと違う気がするし」
マキちゃんはお友達。出会いこそ衝撃的なものだったけれど、何だか奈織ちゃんたちとは何か違う感じ。近さを感じるようなそんな温かさ。
「あ、あのっ、それでね、あの……」
「月渚っち、落ち着いて。言いたいことは何となく分かるから、合ってるなら頷いて」
流石すぎる。マキちゃんについて行けば間違いないのかなとさえ思えた。
「文芸部のウワサのコトでしょ?」
黙って彼女の言葉に頷いて見せた。どうして彼女は分かるのだろう。ゆっくりと話をして、聞いて、それから決めよう。マキちゃんのお友達なのだから。
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