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17.初めての?


 槭先輩がわたしの彼氏になるだなんて想像すら出来なかった。たとえお試しだとしても、初めて男の人と一緒に歩くことになるだなんて、こんな所をみんなに見られたら何て言えばいいんだろ。わたしの恋、これが初めての恋を経験することになるのかな。


「月渚さん、緊張してる? 本当の彼氏とかじゃないんだし、そんなに深く考えなくてもいいからね? むしろ、俺でよかったのかなって思ってるし」


「せ、先輩がいいんです! わ、わたし、まだ男の人が怖いのは変わってないですから。でも、先輩は一緒にいても怖くないので、その、安心感があるんです。だから、良かったです!」


「それなら、うん。俺も頑張って守ろうかな」


 文芸部の槭先輩は優しい。だからこそ、男の人に抱いていた怖さがわたしの中で、僅かながらに取り除かれたような、そんな感じがしていた。


 先輩としばらく一緒に歩く。それだけのことなのに、ずっと緊張が消えなくてずっとずっと、何だか胸が苦しい。この痛みは何なんだろう。本当に付き合っているわけでもないのに、ずっと胸の辺りが苦しくて、思わず立ち止まってしまったのがいけなかったかもしれない。


「月渚さん? どうしたの? 具合悪くなったならテラスに移動して少し座ろうか」


「え、いえ、その……」


 わたしを心配そうに覗き込む先輩の顔が近くて、さらに胸が苦しい。本当にどうしてしまったんだろう。困らせるつもりなんて全然無いのに、それなのにそう見えてしまったのかな。


「「あーー! 月渚!」」


 少し苦しい気がして、前なんか見ていなくて先輩の背中だけ見ながら歩いていたら、向こう側からわたしを呼ぶ大きな声が響き渡って来た。そのままわたしたちの所に近づいて来ているみたいだった。


「ん? あぁ、月渚さんの友達かな? 俺はサークルの――」

月渚るな! ちょっ、どうしたの? 顔赤いし、胸が苦しそうにしてんじゃん? って、月渚になにしてんですか! 迂闊に近づくとか、なに学部? 離れてもらえますか?」


「奈織ちゃん、ち、違うの。せ、先輩なの。そ、それと、つ、付き合ってる彼氏さん!」


「は? 月渚に彼氏? え、うそ、だって……男性恐怖症なんじゃ?」


「えと、な、なんていえばいいんだろ。痛いとかじゃなくて、よく分からないけれど胸が苦しいだけなのにどう言えば分かってくれるの」

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