就職
THE☆説明回です。遅れてすいません。
「……何言ってるんですかシャルナートさん。俺に働けと?」
その時の俺の顔は、かなり不機嫌気な顔だったと思う。その証拠にシャルナートさんは、かなりご満悦そうだったし、ティオラが滅茶苦茶あたふたしてた。
「えぇ、そうよ。私の為に!働いてもらうわ。」
ふふん、と自慢気に腕を腰に当てて胸を張るシャルナートさん。何故かは分からないが、ドヤァア…という音が聞こえそうだ。というかムカつく。
しかし、その条件を聞いてしまった以上、俺はこれを受けなければいけない。逃げると言う手もあるが、それをやるとシャルナートさんの性格上いじけてもう俺と話をしなくなる気がする。そうなると色々面倒だ。結局金の出が一番良いのはこのギルドなんだから。あの行商、売るものが大したことないときでも俺が払える最大限の値で売ってくるし。ちゃんと定価で売れ定価で。働きたくはないが、もうそろそろ俺も働かなくてはいけないだろう。いや、昔は働いてたよ?て言うか今も働いてるよ?(シナの森の管理人)…まぁ、非正規雇用だけどね。
「わかりました。受けますよ。その代わり」
「ダンジョンのマップは一枚につき大銅貨三枚ね♪わかってるわよ。」
満足気に眼を細めて微笑むシャルナートさん。るんるん、という音が聞こえてきそうだ。
「さて、じゃあ早速冒険者になるための手続きを済ませましょう。マップはそれから!大丈夫大丈夫!いつも通りちゃんと一種類につき五百枚買ってあげるから!あ、ほらほら、皆邪魔だから退いて退いて!野次馬根性はわかるけど、あんまり一階に集まってても困り者よ?さ、早く早く!あ、受付の子~!誰かステータスストーン持ってきて頂戴!」
早口で周りに指示しつつ、自分のペースで話を進めるシャルナートさん。どこまで俺をこき使いたいんだよアンタ。
しばらくして、俺が冒険者になるための手続きの準備が完成した。木でできた丸いテーブルの上にナイフと金属でできた小さな板、翡翠色の丸い石が置かれた。あとインクと羽ペン。
「さ、まずはそのカードに名前を書いてね。」
「はい、ヤナギ…っと。」
「次はナイフで指を切って、カードに血を垂らすのです。それでそれがヤナギさんの物だという証明ができるのです。名前と血、この二つが両方あって初めてその人のカードだという認証ができる、って最初に教わったのです。」
「成る程。良くできてるな。よくわからんが、盟約魔法、って奴の応用か?これなら、誰かに盗まれても悪用できないわけだ。」
シャルナートさんとティオラに説明を受けながら、手順を踏んでいく。
「それじゃ!最後の行程に移りましょう!その石、ステータスストーンに触れてね。」
「触れた人の魔力を吸って、その人の身体能力や、スキルを数値化することができるのです。」
「ふむふむ……。」
言われた通り、翡翠色の石、ステータスストーンに触れる。一瞬、何かが吸いとられたような感覚を受け、その直後、ステータスストーンが光ったと思うと、その光があのカードに移った。
「ステータスストーンで数値化された魔力が、カードに転送されたわね。カードに使われているのは、まあ、金属に密接に触れる貴方の事だもの。わかっているでしょ?」
「ええ、魔映鉄と玉虫鋼の合金ですね。魔力を吸収し、様々な用途をもたらす玉虫鋼と、他の物質の特性を写す魔映鉄。この二つを合わせることによって、ステータスストーンの特性を写した魔映鉄によって数値化された情報を、玉虫鋼の効果でカード内部に記録し、定着させる。魔力を込める度にその情報が更新されるようにも細工してある。本当に、良くできてます。」
「そうだったんですか!?というか、み、見ただけでそんなにわかるですか!?」
「ん?あぁ。見ただけというか視ただけというか。」
「!?」
「あ、いや気にすんな。知り合いの鍛冶屋の受け売りだから。」
「は、はぁ…」
驚いたり納得したり忙しないティオラ。表情豊かすぎだろ。
「で?で?どうだったのかしらん?」
興味津々、という風に聞いてくるシャルナートさん。てか近い近い。
「あ、そうでしたね。てか寄りすぎですよ。えーっと…」
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ヤナギ 年齢:18 種族:竜人族
職業:《無し》
Lv.15 生命力:862 魔法力:437 攻撃性:675
防御力:324 俊敏:526 魔力操作:489 体力:763
スキル:「剣術」 「水魔法」 「不意討」 「身体強化」
「皮膚硬化」 「鍛冶」 「精神統一」 「料理」
「製薬」 「鋭化」 「サメハダ」
固有スキル:「????」効果:?????????
「????」効果:?????????
装備:麻の服
革のズボン
革のベルト
鉄の刀
革靴
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「……ふむふむ、隠したい情報は完璧ではなくても伏せられるのか。即興でやってみたがやればできるものだな。」
「Lvはその人の経験値、生命力は文字どおり命そのものです。魔法力はその人が持つ魔力の許容量、攻撃性は腕力とか握力を総合したもの、防御力は体がどれぐらいのダメージに耐えられるか、俊敏は脚力や反射神経を総合したものを数値にした値です。」
そこまで言ってティオラは一度ふぅ、と息をついたあとまた説明し始めた。てかよく息続いたね。
「魔力操作は魔法を自在に操るセンスのようなもので、体力は、まあそのまんまです。スタミナです。」
「駆け出しからいきなりLv二桁とか、最近じゃ見ないわよ?攻撃性も500越えしてるし、竜人族としては非力な方なんだっけ?」
「気にしてるんでやめてくださいよ。」
ふふ、と笑うと、今度はシャルナートさんが話し始めた。
「スキルは、その人が会得している技能的なものよ。戦闘に関するものだけではなく、料理や鍛冶みたいな、生活面や職業面に関する技能もあるの。ま、そこら辺はわかるわよねぇ。固有スキルに関しては言わずもがな。その人オリジナルのスキル、よ。職業は後々説明するわ。」
と一通り二人から説明を受けると、シャルナートさんが手を広げて微笑みながら言った。
「まぁ、ひとまずこれで、冒険者としての最初の知識は伝えたわ。今後は自分の手で探りながら知っていきなさい。では改めて……
冒険者ヤナギ、私は、私達パテラのギルドは、貴方を歓迎するわ!」
俺の職が、ここに決定した瞬間だった。
~蛇足的補足~
竜人族…竜の角や鱗、牙等を持つ種族。世界各地に集落があるようだが、東のとある島国は、国全体が竜人族の所有地である。主な登場キャラクターはヤナギ。
長耳族…長く尖った耳と抜群の魔力操作センスを持つ種族。自然を好み、植物の実りが多い所に集落を作る。主な登場キャラクターはティオラ。
宵人族…感情によって色が変わる髪と膨大な魔力量を誇る種族。薄暗い地域に好んで集落を作る。主な登場キャラクターはシャルナート。
人間族…特に特徴はない。様々な種族と比べると見劣りするが、その分生き残る力に特化した種族。主な登場キャラクターはファットン。