僕のおねえちゃん。
僕は捨て猫で、拾われっこだけど、ずっと死ぬまで幸せでした。
僕のお姉ちゃんは僕をほんとうに愛してくれていた。優しく抱きしめてくれたのです。
僕は小さくて細いけれど、お姉ちゃんは辛くないように花束を包むように抱きしめてくれるのです。そんな優しさが大好きだった。
僕は生まれた時から病気だった。あちらこちら痛かった。息が苦しくて眠れない時もあった。お姉ちゃんはそんな僕を過剰なほどに心配して、大事にしていた。
ずっとお姉ちゃんのそばにいてあげたかった。死んでしまうつもりなんて、生きているものすべてにないんじゃないのかな。
僕が死んだら、お姉ちゃんも死んでしまうような気がした。
僕はもう事切れる寸前だ。お姉ちゃんはたくさん病院に僕を連れてった。僕は病院は大嫌いだけど、お姉ちゃんのために生きていたかった。
針は太くて骨に擦れる、本当は毎日悲鳴をあげていたんだ。
僕のため、痛いのも針も僕のため。でもね、お姉ちゃん。僕はもう、注射をたくさん打っても治らないんだよ。
僕はもう直ぐ死んでしまうのだから。
お姉ちゃんがぼろぼろになっていくのは、砂場の砂のお城が崩れていくようだった。
僕がご飯を食べなければ、あなたも食べないから、吐いても吐いても頑張って食べた。その横でお姉ちゃんは泣いていた。
僕がいなきゃダメになってしまうって、わかっていたの。僕じゃずっとそばに居られないのに裏切り者だよね。
骨と皮になっていく僕のことも、あなたはずっと触れているのかわからないくらいの慎重さで抱いてくれた。一緒に寝るときだって、自分の寝返りで僕を潰してしまうんではないかと、ほとんど寝てなかったのでしょう。
悲しいね。僕は残酷だね。あなたはこんなにも尽くしてくれるのに、身体がもう動かないや。猫だから涙も出ないんだ。
早朝、身体が冷たくて目が覚めた。
ああ、もう逝くのかなあって思ったら、お姉ちゃんの涙が僕を濡らしてたんだね。
直ぐにあったかい毛布をかけてくれた。その涙を止めたくて、もう泣かないで欲しくて僕は大声で叫んだ。
ギャー!と声を出した。最後の声を大声で出した。もうやめてくれ、泣かないで。僕のことで泣いたりしないで。こんなに愛しているのに。僕は幸せだったんだから。
弱々しかった心臓がキシキシと止まってゆく中で、お姉ちゃんは涙を流しながら何度も謝って、神様を呪って、
僕の目が白くなる前に笑って見せた。
その顔が見たかったんだ。
僕のことは忘れて、その顔で生きて欲しい。
さようなら僕のお姉ちゃん。
さようなら。




