三章01 夢について
俺はどうなったんだっけ?
何か、とても酷い事があった気がするけれど頭に霧がかかったみたいでよく思い出せない。
ここは何処だ?
暗い。いや明るい?
それすらも認知できないような不思議な空間だ。
辺りには何も無い。ただ何処までも広い空間が目の前に広がっている。俺はここで何をしていたんだ?
「……っ!」
そんな事を思いながら振り返ると、かなり遠くに二つの人影を俺の目は捉える。そして人影を捉えた瞬間、俺の胸の内に耐えがたい感情が渦巻いてくる。
怒り、恐怖、不安。そう言った負の感情が混ざり合った強迫観念のようなものが渦巻き、頭がグラグラして吐き気を覚える。
「待ってくれ……!」
その人影は依然としてその場を動かないが俺は何故かその二人を追いかけなくてはいけないと感じている。二人の元へ行き、助けなくては……
助ける?
誰を?
何故?
それすらもわからないのに。
「やめろ、やめろ……!」
すると人影の一つが複数の鎌に斬られるようにバラバラに砕かれる。そしてそのすぐ後に残った人影の腹部大きな風穴が空く。
これはよく見る夢だ。
何者かわからない誰かを助けようとして、助けられずに逆に殺される夢。だからこそ、今から自分に襲いかかる出来事は何となく予測が付く。
俺はこれから死ぬのだ。
そう直感した瞬間、俺正面から何か鋭利なものが俺の目へと目がけて飛翔し、それが眼球ごと脳みそを貫き俺を思考停止へと追い込む。
――この夢を見るのが怖い。
そんな薄れゆく意識の中、声に出てるかどうかもわからないような意識状態の中でふと思う。
――俺は、怖いんだ。殺し殺される夢を見るのは、俺が心の奥底で血生臭い戦いを求めているからなのではないのだろうか。
「そんなサイコ野郎を慕ってくれる人はいるのか?」
頭の中で呟くが帰ってくる答えなど無く、ただただ視界が黒く塗り潰されていくのを静観する他なかった。




