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治る身体の異世界ライダー  作者: ツナサキ
二章 死の蔓延する国
33/55

二章22 トラウマ

 それから馬車は特に何も起こらないまま目的地へと着々と進んでいた。途中の街で一夜を明かし、皆が乗り込んだ馬車で更に街道を走る。

 ゴルウズは鉄の豊富な国と聞いていたがそこらの風景は意外と緑がある。流石に遠出とはいえこの辺りも王都周辺という区域になるわけだから緑が多いという事だろうか。王都にも自然に悪そうな工場はいくつか見受けられていたのだが、きっと街全てが工場みたいな所もどこかにあるのだろう。


 そんな事を車内でウトウトしながら考えていると、段々と馬車のスピードが落ちてくるのを慣性で感じる。


 「着いたぞー。全員降りろー」


 外からガルディアの声がそう聞こえてくる。

 俺はあくびと背伸びを同時に行い体をほぐし、傍に居たハティへと話しかけた。


 「揺られてると眠くなるよなぁ」


 「そう? 私は眠くはならないけど」


 そう言うハティは確かに眠たくなさそうであり、背伸びどころかあくびの一つもしていなかった。


 「へいへーい、降りた降りた」


 後部の布が開いたかと思うとそこには前にいたはずのガルディアが腰に手を当てて布を捲りながら立っている。恐らくスキルを使用して前方から車体を飛び越える形で後ろに回ったのだろう。


 「はいよー」


 そう言って前方気味の場所で座っていたロロは自分の荷物を持ち元気よく外へと飛び出る。それに続いて俺も外へとジャンプ。

 俺たちの乗っていた馬車は比較的広い空き地のような所に停まっていた。辺りを見回すとどうやらここは出発の時にエルが言っていた馬車を置いていく街のようで人の生活が伺える家々が見受けられる。


 「王都よりかは自然的な街だな」


 森に近い街という事もあってかその印象としてはそんな所だった。

 王都の工業地区のような煙を噴き出す工場は見受けられず、至る所に丸太やら角材やらがまとめて置いてあり、行き交う人々は数の絶対数こそ少ないものの斧を持った野性的なと言うか、木こりのような人が存在する。煌びやかな衣服に身を包んだ人は見えず、男女問わず農作業に適していそうな動きやすい服装の人が多い。


 人口自体は多く、国の中心からそこまで離れてはいないもののこの街は片田舎にある大きめの街という印象を俺は受けた。


 「おお、工業的な王都から一日程度の距離なのに随分自然的なとこだ」


 「森が懐かしい?」


 そう言って辺りを見回す俺に近づいてきたのはハティだ。

 その表情には笑顔が見受けられる。


 「そうだな。結局ハティの家に戻ってないし」


 「でもヨルは森って苦手だよね? だって虫苦手だもんね」


 「うるへっ、虫って気持ち悪くて苦手なの!」

 

 「私は全然大丈夫だよ?」


 ハティは表情を一切崩すことなく思いを馳せるような清々しい表情をして笑っている。女の子が虫大丈夫ってのも珍しい気がしなくも無いが、


 「流石に森で過ごしていた年季が違うな」


 「人を年寄りみたいに言わないでよっ」


 ハティはポコンと俺の頭を叩く。

 怒ったようだがあまり力は込めてられいなかった。


 「でも懐かしいな。ハティと森の中で暮らしてた時の事さ」


 「……そうだね。あそこでも色々あったもんね。ヨルと会ったり、魔法教えたり、ヨルが死にかけたり」


 「そうだなぁ、それにハティが寝てる俺にチューしてきたりとかな」


 「ふぇ、えぇ!? しっかり寝てるの確認したのに……」


 「……え?」


 冗談交じりに俺はそう言ったのだが、どうやらそれは結果的にカマをかけたみたいになってしまったようでハティは酷く動揺していた。


 すると俺は顔を赤くしながら俯いているハティの後ろの方に遠くを眺めている様なロロの姿が目に映る。その方角には俺たちが調査する森だろうか、そんな森林群があった。


 「何見てんだロロ?」


 黙ってしまったハティから俺は離脱し、ロロの下へと歩み寄る。

 するとロロもまた思いを馳せている様な寂しそうな表情をしていた。


 「森を見てる」


 「森に何か思い入れでも?」


 「あぁ、俺の住んでた村はここみたいなのどかな村だったんだ」


 「へぇ」


 俺が適当に相槌を打つとロロは両手を上げて背伸びをする。

 そしてロロはいつも通りの元気な雰囲気を取り戻しており、


 「ま、お前には森での動き方ってもんを俺様が教えてやんよ!」


 と俺に向かってポーズをキメながら俺に言った。


 「でもあれだな、ハティは炎魔法使うから草木のある場所での戦闘は難しそうだよな?」


 ロロは俺に同意を求めるようにそう呟いたのだが、その言葉に俯いて照れていたハティがピクリと反応する。


 「別に、だって魔法以外にも戦う方法なんていくらでもあるもんね」


 結構な喧嘩腰でハティはこちらに近づいてくる。

 するとロロは好奇心をそそられたような言い方で、


 「ほう、どんなどんな?」


 と言っているのだが、ハティは煽っていると捉えたようでムスリと顔をしかめながら片腕を軽く振り上げる。

 そしてその腕を一気に振り下ろすとロロの足下に小さめのスイカのような穴が空いた。


 「うおっ!? っんだこれ!」


 ロロは反射的に後ろに飛び退く。


 「私のスキルだよ」


 ハティは嬉しそうに、いや勝ち誇ったようにそう言う。しかしそれ以上口を開かなかったので流れで俺が補足してやろうか。


 「ちなみに説明するとハティのスキルは半透明の『牙』を出現させるスキルだ。見えにくいから回避が難しい、実体はあるが重力の影響は受けないでハティは操れる。殺傷能力はご覧の通り」


 「す、すげぇな」


 説明を聞いたロロは気圧されたように驚いている。

 すると突然何かを考え付いた様でロロは自身の指をパチンと鳴らした。


 「じゃあさハティ、そのスキルを魔法で強化とかできるんじゃねぇのか!?」


 俺たちがそんなやりとりをしていると俺の視界の端に誰か町の住人と話しているガルディアが映る。

 何かお互いに指示を出し合っているように見えるため住人と交流をしているという訳ではなさそうだ。


 暫くそんなガルディアの姿を見ているとガルディアからその人物が離れて街の方へと去っていく。その姿は、いや服装は少しばかり浮いているような印象を受けたが、俺はその人が完全に去るのを待ってからガルディアに近づいた。


 「知り合い?」


 「ああ、従者掃討作戦の隊長さんだよ」


 「え、それって偉い人なんじゃないの? 何でここに」


 「俺たちが黒竜の痕跡を見つけたらすぐ捜索出来るようにだと」


 俺たちの情報待ちということだろうか。隊長であれば隊員だっているわけで、でもここにいるって事は彼らの仕事は黒竜を追う事であって痕跡を探すことではないということかな。


 「ともかく、俺たちは森を調査して報告すれば異常があろうが無かろうが御役御免だ。行くぞ、皆を連れてこい」


 そうしてガルディアはその隊長から渡された紙に目をやりながら街の中へと入って行く。俺はその姿を見失わないようにハティ達を呼んでガルディアの後ろを付いて行った。


 街の中はとてものどかだった。

家々には木が多く使われており、鉄が目に付く王都とはまた違った雰囲気を持っている。家の路地裏、隙間から右手のほうに大きな森林郡が確認出来るのだが、おそらくはあれが俺たちの目標である森だろう。


 森と街はそれなりに距離があるものの、遠いとは言えずむしろ近いといえる距離だ。あの森で黒竜が目撃されたのであればこの街の人々はとても心配だろう。何しろレイル・ロードとも噂されている竜なのだから。それもあってか道行く人々は皆気が立っているというか、少しばかり殺気立っているといった印象を受ける。


そんな街の中を抜けて俺たちは街の外れにあった小さな宿屋に不要な荷物を置き、森へと向かった。




______




 森の手前


 荷物を置いた俺たちはそのまま調査をするべく森へと向かっていた。

 傍から見れば俺たちは調査ではなくピクニックに来た子供たちを見られてもおかしくないようなテンションで話し合っていたのだが。


 「え!? ロロって元々森の中で暮らしてたのか!?」


 「そうだぜ、自然とともに暮らしましょう……って感じの部族だったんだ。まあもう故郷は無いんだがな」


 「な、何かあったのか?」


 「いやぁそれが俺たちの住む森を領地に持つ国が開墾したいって言って来てな? それで村全体で協議した結果森を明け渡すことになったんだよ」


 「え、そういうのって断固としてでも森を守ろうとして戦争になる感じのあれじゃないの?」


 「いや全然? ただ偶然俺たちの住む森が立地的に良い所にあるから立ち退きをお願いしますって行って来たんだ。代わりに住んでいい森の候補を四つくらい持ってきながらな」


 「何それめっちゃ気遣ってくれてるやん・・・・」


 「それで俺たちが立ち退かないと国の人たちも困ることになっちまうからって引き受けたんだ」


 「優しい世界だなおい」


 俺はロロが話してくれている自身の昔話を聞機ながら歩いている。俺の後ろには構ってもらえず機嫌が悪そうなハティの気配を感じ、その隣にはエルが歩いているようだ。


 「ほら、ヨル君もロロ君は男の子ですから気が合うだけですよハティちゃん」


 後ろでエルがハティにフォローを入れている小声がこちらの耳まで届く。その声だけでハティが不機嫌なのがわかるような内容だ。

 後ろから立ち昇る殺気にも似たオーラを俺は気にしていると直後に一番前方を歩くガルディアの足が止まり、身を反転させてこちらを振り向く。


 「よし着いたな。それでは改めて調査について説明するぞ!」


 反転しながらそう言ったガルディアはそのまま続ける。


 「竜のいた痕跡を探す! 以上!」


 「こんな酷い説明初めて見た。いや聞いた」


 「補足するとですね」


 俺が溜息を付きながら愚痴をこぼすとガルディアの説明に加筆するようにエルが指を立てて話し出す。


 「先ほど馬車を置いてきた街がありますよね?」


 「あああのめっちゃ木材置いてある」


 「そうです。あそこの住人がこの森の中から正体不明の咆哮を聞いたという情報があるんです。本来ならば近隣の街の兵士等が確認に行き、安全を確保するのですが、今回は森の調査をベルウィング家が引き受け、そして依頼という形で兄さんが調査を行うというものになっています」


 流石に遠出ということもありエルはいつもの執事服ではなくラフだが地味な黒を貴重とした服を着ており、普段の堅苦しいイメージは幾らか和らいでいるのだが、それでもまだ堅苦しさを感じられる話し方だ。

……まあ性格は全然堅物じゃないのだが。


 「兄さんへの調査依頼の具体的な内容は二つ。黒竜の存在の有無の確認と、およびその黒竜の居場所または移動方向の特定となります。ヨル君達にはこれのお手伝いをお願いするという事ですね」


 「まあそういう事だ。だがこの森は広い全員で固まって動いても効率が悪いだろう。だから二、三でチームを作ることにする!」


 ガルディアはエルの補足を踏まえて簡潔にそう言う。

 俺たちはそれを近くで聞いていたのだが、ふと隣にいたハティが、


 「そういえばキズガラスは置いてきたのヨル?」


 と不思議そうな表情で聞いてきた。


 「ああ、馬車止めたところから動かなかったから置いてきた。疲れてるみたい」


 「うーん、馬車とか引っ張ったこと無いから疲れたのかな?」


 「かもしれないし雌馬から離れたくないのかもしれない。まあ理由はともかく引っ張っても動かなかったから置いてきたよ。ホントに役に立つ気あるのかなあいつら」


 ちなみにあいつらにはキズガラスとパーシヴァルが入る。

 というかむしろキズガラスよりも明らかに強そうなパーシヴァルの方が役に立っていないのだが。


 「兄さん、今回は効率が悪くても固まった方が良いんじゃないですか? 迷ったら大変ですよ」


 「ん、そうか? 俺とエルが別々になれば大丈夫だと思ったんだがな。じゃあエルの言うとおりにしよう。チーム無し! みんなで行くぞ」


 「コロッコロ意見が変わるな」


 「うるせーぞロロ」


 幾分か機嫌が良くなったハティと話しているとそのすぐ横でエル達も話し合っており、ロロは意見を替えたガルディアをからかう様な言動をしていた。


 「じゃ、まずは森の外側を回ってみましょうか?」


 「いや、森の外側に痕跡があったら誰か気づくだろ。だから奥を調べよう。そこで何も見つけられなかったら外側に捜索範囲を広げていく方がいい」


 「わかりました」


 エルはガルディアの意見に頷きながら答える。


 「それじゃあ行くぞ!」


 「はい」

 「うん」

 「おう!」

 「あいよ」


 ガルディアは自分に付いて来いと言わんばかりに片手を振る。俺たちは声を上げながらその後ろを付いて行った。



 俺たちは森の最奥へと向かうべく木々の隙間を歩いていく。

 生い茂る気の量でいうならばハティの住んでいた森よりも密度が感じられる。その為辺りが常に薄暗く、気味の悪い雰囲気が漂っていなくも無い。


 「この位暗いとロロのスキルが使えるんじゃないか?」


 俺はふとそう思い、隣を歩くロロへと話しかける。

 するとロロは木々を見上げながら、


 「確かに。この位暗いなら使える。ただ俺のスキルは暗ければ暗いほど身体能力が上がるから真っ暗よりはポテンシャルが落ちるな」


 「お前らー、しっかり辺りを見とけよ」


 そう言うガルディアは既に持っている剣を抜刀しており、邪魔な枝木を斬り飛ばしながら前を歩いている。


 「となると当然木々の間での戦闘になるな」


 「気をつけろヨル」


 と呟く俺に前を歩くロロが警告を投げかけてくる。


 「ゴルウズの森は……出るぞ」


 「な、何が出るのさ?」


 「何だと思う?」


 「……幽霊、とか?」


 「ある意味正解かもな」


 そう言いロロは俺の傍へと近寄ってくる。

 俺が剣で武装しているからかロロは弓と矢をその手に持っており、近場を警戒する俺とは別に遠くを警戒している。

 ちなみに隊列としては先頭ガルディア→ハティ→ロロ→俺→エルとなっている。多少形は崩れているが概ねそんな感じだ。


 すると突然ロロは弓に矢を番える。

 そのまま弦を引き絞り、軋むような音を辺りに響かせながら矢の切っ先で遠方の森を指しながら言った。


 「そらきたぞ」


 「な、何が!?」


 「もちろん、『従者』だ」


 そうロロが呟いた瞬間、木々の奥から茂みをかき分けるような音が響く。そしてそのすぐ後、草むらから人ならざる動きをした何かが飛び出してくる。


 飛び出してきたのは猪のような姿をした生物だった。

 既にこの事態を察知していたらしいガルディアは俺たちとこの生物の間に割り込むように立ち回っており、剣を前へと向けている。

 生物自体はガルディアの腰ぐらいで大きいには大きいがそこまでではない。だが、一番に目が行く部分はそこではなかった。


 「ほ、骨が……見えてる」


 俺はつい言葉にして漏らしてしまう、それ程に表れたコレは異様な風貌をしていた。

 まずは片目が無い。そしてその無い目の部分の筋肉が剥がれており、白い頭蓋が見えている。それにどうやら血液が渡り切っていない四つ足の末端が黒く変色している。腹からは腐食した肉を貫くように肋骨らしきものが突き出ており、とても生きているようには見えない。


 従者だ。


 一目でわかった。


 「見た感じ豚系の従者だな。それも死んだばかりの奴じゃねぇ、腐りかけを動かしていやがる、か。こりゃあ存外いるかもしれねぇな」


 ガルディアはそう低く呟きながら豚の従者を見据えている。

 頭がその言葉を理解するまでに少しだけ時間を要したが、ガルディアはつまりレイル・ロードと噂される黒竜がこの森に潜んでいるのではないかと言っているのだ。


 俺は腰に提げた紅剣を抜こうと腰に手を回す。

 が、その手は剣のさやに当たる前に何かにぶつかり阻害される。まさか後ろにも、そう思い咄嗟に首だけで振り向くがそこにはエルとハティの姿があった。


 「ゴルウズの特色、レイル・ロード編の授業で教えましたね? 基本的に従者となった死骸はその時点から腐ることはありません。その為腐った従者というのは極稀にしか見つかりません。そして見つかる時は必ず……」


 「黒竜の噂が流れる。だったよね?」


 エルが言った言葉の最後をハティが締めくくった。


 ハティは怖いのか俺の手をギュッと握ってくる。

 いや、逆だな。俺を怖がらせないように握ってくれているのか。


 気づけば俺の手は少し震えていた。


 怖かったわけでは無い。カルトに剣術を教えてもらい、実戦訓練で命を懸けて戦いもした。その後だって何回もその辺にいた動物と戦ってきた……戦うという事が楽しくすらあった。


 けれど、『従者』は別だと言うように俺の手は小さく震えている。


 脳裏にあの光景がちらつく。

 血の沼に座り込むルーリアの姿が。

 あの醜く抉れた首の傷が。


 あの豚を見ていると、臭気を嗅ぐと、あの耳障りな鳴き声を聞くと、心が削られるような圧迫感を感じる。


 「怖いかヨル?」


 「……え?」


 そう言ったのはこちらに背を向け、従者の方へと剣を向けているガルディアだった。


 「俺が思うに恐怖とは、人がこれ以上踏み込んではいけないという事を知らせる警報の様なものだと考えている。故に恐怖を感じる事は至極当然だ」


 「あ、ああ」


 「だがお前は『治る身体』を持つ。それは使いこなすには恐怖を捨てなくてはならない。だが恐怖を捨てるとは人ではなくなるというだ」


 「じゃあ……どうすればいい?」


 自然と声が出ていた。

 その背中を見ていると幾らか心が落ち着いてくる。


 「恐怖も痛みも絶望も、全てを感じて全てに耐える心を作れ。捨てるんじゃねぇぞ」


 そしてその大きな背中は動き出す。

 不規則に人ならざる三段ジャンプを駆使して立体的に森の中を動き回る。そして従者の隙を作り出し、その隙に付け入るように首を真っ二つに斬り落とした。


 ガルディアはこちらを向いて親指を立てて笑みを向けてくる。

 ハティは俺の手をまだ握ってくれていた。

 みんな俺に優しくしてくれるが、そんなに俺は怖がっているように見えたのだろうか。自分じゃよくわからないな。自分で思ってるよりルーリアの母親の件が心にきてるのかな。


 思えばルーリアのと初めて会った時から従者に遭遇したことは無かった。王都周辺という事もあってあの辺りはかなり安全だったし、食い物を狙う獣が街道に出れど従者は狩られているかのようにいなかった。

 そう考えるとそれだけルーリアの村が襲われたのは異常事態だったのかもしれない。


 「はは、俺、そんなに変だった?」

 「あれ見た瞬間に呼吸が跳ね上がるくらいにはな」

 「そっか、そんなにか……ありがとハティも」

 「うん!」


 みんな心配してくれる。俺はその状況に何だか照れくさかったのでつい視線を外してしまったのだが、視界に入った斬り落とされた豚の隻眼がいつまでも俺を睨み付けている様な気がしてならなかった。

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