二章13 実戦訓練①
「実戦訓練?」
ベルウィング邸で働きながらの剣術訓練が大体半年くらいを過ぎ、何回かあった日喰も無事に過ごしルーリアとの訓練でもあの不規則な動きになんとか対応できるようになってきた頃、カルトは俺にそう提案してきた。
実戦。
いや、わかってる。無論剣術の本質とは殺し合いの術であり、それを実践するという事はつまり命の奪い合いなのだ。
カルトの執務室に呼ばれた俺は隣に暇そうに座っているロロを横目で流しながら、
「いやー遂に実戦か。俺生き物殺せるかなぁ……」
初戦闘で生きている人間相手という事は無いだろう。おおかたその辺の森にでもいる魔物とか、悪くてレイル・ロードが操る従者とかだろうか。
だがそんな不安そうな顔をする俺を見てカルトはにこやかな笑みを崩す事無く言った。
「生物を殺すという点において、少なくともヨルは才能がある」
「才能?」
「ああ。君はいざとなれば人ですら殺せる。そんな……子だよ」
「俺を殺人鬼みたいに言うのやめてもらえませんかね!?」
片手を後頭部に当てて「悪い悪い」とカルトは軽く笑う。
ったく何を根拠にそんな事を言うんだか。
「で、実戦の詳しい内容なんだけど。ロロが受けた依頼をヨルにも同行してもらう。僕は一緒にはいけないけれど、ロロがヨルの戦いを見て採点するから。無事合格出来たら卒業だね」
「そうか……じゃあそろそろ仕事を探さないといけないのか。あーあベルウィング邸みたいに雑務するだけで金が貰えたりしないかなー」
「おい夜。俺とつるんで仕事するんだろ?」
ロロが隣から俺に話しかけてくる。
そういやかなり前にそんな約束したっけ。まあ一から探す必要無いっていうのは便利っちゃ便利か。
「どんなことやってるんだロロは?」
「基本何でもだな。物資納品、魔物退治、護衛、密偵、潜入等々。犯罪以外なら何でもさ」
「潜入は犯罪だろ」
「細けぇ事は気にすんなよ。だから大体はドルク運営の『ギルド』から仕事貰ってるぜ」
ギルド。
ギルドかー。こう、冒険者たちが仕事を求め日々訪れる斡旋所。みたいなやつ。やっぱり異世界となるとギルド入って日々魔物を倒して賞金稼ぎ、みたいなのにも憧れがあるが。
金を稼ぐにゃうってつけか。ロロも利用できるって事は年齢制限とか無いみたいだしな。
「ドルク運営って何ぞや?」
ギルドは聞いただけで大体わかるが、ドルク運営って何だ? ドルクさんが運営してるって事?
そう聞くと俺の正面でにこやかな笑みを浮かべて座っていたカルトは仰々しい口調で、
「その昔まだ朝と夜の大陸の境目にロクな対策が取られていなかった頃、ある王国にドルクという王様がおりました。王様は大勢を見極める事が大変得意な方でした」
「ロロ。カルトさんが何か語りだしたんだけど」
「こいつ昔話とか話したりそれについて考えたりするのが大好きなんだ」
「ドルク王はある時気づきました。人間たちの戦力は夜の大陸から襲い来る魔物に劣っているわけでは無いという事を。戦力を効率よく、しっかりと機能させることが出来ればと思った王は私財を投じ、ある組織を作りました。国家という枠を超えて、戦力を効率よく回す事の出来る組織を。そしてその組織は瞬く間に世界へと広がり、国々の特色を吸収しながら成長していった。それこそが今世界中どの国にもある『ドルク運営ギルド』ってわけだね。といっても元から独自のギルドがある国もあるんだけど、規模で言うなら間違いなくドルクが一番大きいからね。どうだいわかったかい?」
指を立てながら自信満々にカルトはそう言い、正面を向き直す。だが正面の椅子に座っていたのは苦笑を顔に張り付けるエル一人だけだった。
いつの間にか少年二人は居なくなり、すれ違いで入ってきたのか見慣れた使用人の少女が目の前に居ることを確認し、軽く硬直していたカルトに正面のエルは、
「もう行っちゃいましたよ二人とも」
「……そっか」
部屋の中にある窓に近づいていきながら大空を見やるカルトは何処か寂しげな表情をしていた。
話を聞いてもらえなくて。
そういえば「これタメになるか?」「ならない」「じゃあとっとと実戦行こうぜ」なんて話の最中に聞こえてきたなと思いながら、カルトは遠くの空を見つめていた。
「ハティちゃんとルーちゃんも連れていくという事でいいんですよね?」
「ああ、ロロに言っておいたよ。といっても女子二人は必要ないくらいに強くなったみたいだけど。ハティちゃんはどうだい?」
「はい。あの子は天才ですよ」
カルトはニコリと笑みを浮かべるエルを見て、「それは凄い」と呟きながらまた大空へと視線を戻す。下の方で何かが動くのが見えたため、視線を下ろしたカルトの両眼はいざ実戦へと旅立つ四人の子供たちを捉えた。
「何見てるんです?」
「ん。皆無事に帰ってくると良いなぁって」
「ですね。あ、今日は『セセラギ外務卿』がお見えになるんですよね。お屋敷を綺麗にしておきます。ではこれで」
そして部屋の方へ歩いて行ったエルをカルトは目で追いかける。
エルは扉から部屋を出る直前その視線からある事を思い出したように口を開いた。
「そういえばヨル君に人を殺せるとかどうとか言ってましたよねっ。あんまりそういう事言わないで下さい怒りますよっ」
そう捨て台詞を吐くようにしてエルは扉を強く閉め、部屋にはカルト一人が残される。
そうして気まずそうに片手で軽く頭をかきながらカルトは、
「だって、人殺しが悪いと思うのは人だけだろう?」
意味深な台詞を口にするがそれを聞く者はこの部屋にはいなく、そう言ったカルトの冷笑を見る者も一人としていなかった。
______
俺、ハティ、ルーリア、ロロの四人組は冒険者が集まる地区、通称『武器庫』を歩いていた。相も変わらず往来を武装した冒険者的な人やストリートチルドレンといった様々な人種が行き交い、一種のカオス空間へと成り果てている。
治安は辛うじて保たれているものの喧騒は絶えず、ボロボロの衣服を纏った少年少女が両手に果物やパンを抱えて走り去り、それを大人が追いかけている様も最早この地区では見慣れた光景だ。
「ロロは貧富の差について何か意見をお持ちかな?」
「あぁ、国なんてどこも大体こんな感じだ。偉い奴がいて、偉くない奴がいる。であるならば変わるべきなのは国じゃなくて自分自身ってな」
「厳しいな」
俺の軽い問いかけに即座にロロは答える。
そういえばロロはこの国出身ではないんだっけ。いくつか国を見てきたような、そんな返しだった。
「それにしても夜。お前面白い剣持ってるんだな」
ロロは話題を変え、俺が背中に背負っている剣を指差してそう言った。
俺は剣を手にし鞘から少しだけ刀身を抜き、ロロに薄紅色の刃を見せつける。
「あぁこれか? ハティに貰ったんだ」
「これは、『紅鋼』だな。滅多に出回らない鋼だ」
「お? 伝説の武器と同じ素材で出来てる的な!?」
「いや、錆びないらしい」
「それだけかよ! いやそれも凄いけど!」
淡々と話すロロについ突っ込みを入れてしまった。
そんな風に話しながら王都から出るべく城門? を目指して歩いていると、ロロの隣を歩いていたルーリアが、
「それよりさ、実戦って具体的には何と戦うの?」
ルーリアはいつもの執事服とは違い暗めの動きやすい服装に身を包んでいる。ロロは肩や腕に革製の防具を身に付けているが、対してルーリアは防護できるものを何も付けていない。まあそれには理由があるのだが。
ルーリアを強さで五段階評価するのであれば、
力:4
魔法:2
素早さ:5
持久力:3
器用さ:3
あくまで訓練で俺が感じた個人的な評価だが。
そのため、ルーリアは前線で足を土に付けて戦うようなタイプではなく、走り回って敵を攪乱し、ダメージリソースとなる機動力剣士だ。
だから自慢の機動力を敢えて防具を付けない事で阻害しない様にしているらしい。
ちなみに俺とハティはこうだ。
ハティ
力:2
魔法:5
素早さ:3
持久力:2
器用さ:5
俺
力:2
魔法:1
素早さ:3
持久力:5
器用さ:3
うん。言いたい事は沢山あるが、まあいいや。
ロロはどのくらい強くてどんなタイプなのかはこれからわかるだろう。
と話がそれた。えーと今の話題は……そう、何と戦うかだった。
「気になるかルーリア?」
「それなりには」
「今日はギルドである依頼を受けてきた。街道で食料の積んだ馬車を襲う『猿人狼』の討伐だ。それが今回戦う事になる敵だな」
「……はぁ」
「どうした夜溜息なんかついて」
ロロの話を聞いてつい隣で溜息を漏らした俺にロロはその黒肌を近づけてきた。
そりゃ溜息も出るんだよなぁ。
「やたら狼と縁があるなぁって。モンキーウルフって狼だろ?」
「おう。二足歩行でやたら腕が長い狼だぜ」
「え? 人狼?」
「全然違う。似てるが知能は雲泥の差がある。ま、雑魚だよモンキーウルフは」
「って事は人狼とかもいんのか……」
そして俺はこの世界に生きるまだ見ぬ凶悪な魔獣に思いを馳せながらも、隣を俺の上げたローブを着ながら歩くハティに微笑んだ。
そして俺たちは王都から外へと出る門を通り抜け、外に出た。
ゴルウズの立地は確かに王都を形成するには向いているのかもしれない。王都の近くには大きめの森があり木材や獣なんかには困らなそうだ。それに今出た門の反対側の門の方には小さめではあるが川も流れている。
今回は王都と他の街を繋ぐ街道に出る魔物らしいので道沿いに歩くことになるだろう。
そんな事を考えながら俺は王都から少し離れたところでキョロキョロと辺りを見回しているとある物が目に留まった。
黒く、傷だらけの馬。
「キズガラス」
俺がそう声を上げるとキズガラスはゆっくりとこちらに4つの足を動かしながら近づいてきた。
「お、あの時の黒馬」
「ああ、空から降ってきた」
「久しぶりキズガラス!」
それぞれロロ、ルーリア、ハティの順に彼らもキズガラスに声をかける。するとキズガラスはやはり女好きなようで撫でようと手を伸ばしたハティに首を近づける。
「そういやたまにベルウィング邸に出没するけどどうやって街中移動してんだ? まさか誰も背中に乗せないで普通に歩いてんのか?」
俺が独り言気味に呟くと、キズガラスが俺の方へと首を伸ばし、
「え? わ、わわわ何だぁ!?」
顔でも舐められるのかと身構えた瞬間、キズガラスの体が一気に黒く変化し、目や傷すらも見えなくなるほどの黒い塊になってしまう。そしてその『ドス黒い塊』は徐々に形を変えていき、キズガラスだったはずの黒い塊は、
流浪の剣客といった風貌の見慣れない男になっていた。
少なくともゴルウズでは全く見かけない袴のような物を履いており、黒髪が『和』テイストの服装とよく似あう。服の間から見える顔、首、腕には多くの傷が見受けられ、眉の部分にも傷があるため迫力があり剣客という言葉相応の風貌だ。
まあ刀なんかもっていないのだが。
そしてその剣客は俺の前まで無言で進み出て、片膝をついて敬うように頭を下げた。
「キズガラス、なのか?」
俺が下げた頭の上からそう言うと剣客は一歩下がり、頭を上げて再度頷く。
間違いないようだ。傷だらけの黒馬が変質した黒い塊から形成されたこの男は『キズガラス』で相違ないらしい。
「ど、どうしたのその姿。実は人間だったとか?」
明らかに状況について行けずに軽く狼狽していた俺であったが、無論他三人も開いた口が塞がらないといった感じで、
「凄い! 変身魔法だぁ!」
俺たちとは別種の驚きから口をポカーンと開けていたハティがキズガラスの手を握って興奮していた。
変身魔法。もう聞いただけでわかりそうな名前だが一応聞いておこう。
「知ってるのかハティ」
「エルさんから聞いたの。理論とか相変わらず話してはくれなかったけどすっごい難しい魔法なんだって!」
「へぇ、人間に変身する変身魔法か……あ! もしかしてそれ使って街中歩いてたのか!?」
剣客……もといキズガラスはまたしてもコクリと頷く。だが頷くだけで返事をしない。
「もしかして喋れない?」
再度の頷き。
まあ変身するだけじゃ言葉も喋れないって事か。
「ちなみに変身魔法ってどのくらい難しいの?」
「エルさんも使えないって。だから使える人は大抵ちょーほーきかん? とかにいるらしいよ」
「ちょー……諜報機関か。確かに潜入とかにはうってつけか」
エルがどれだけすごい魔導士なのかは詳しく知らないが、少なくとも人に教えられるくらいには凄いみたいだし。そのエルが使えないとなるとそれは本当に凄いのかもしれないな。
そんなすごい魔法を森に棲んでいた馬が使える物なのか。
「キズガラスがそんなに凄い馬だったとは……もしかして当たり引いた?」
するとキズガラスは否定的に首を横に振った。そしてそのまま苦笑を崩さずにある方向を指差す。馬に指差されるというのも変な気分ではあるが、その指の先には白髪の男性が道端の木にもたれかかるように立っていた。
キズガラスとは対照的に洋風の軽装騎士といった感じで全身が白で覆われている。とても目立つ雰囲気であるが同時に近寄りがたい高貴な雰囲気を併せ持っている。
そして何より目立つのは、白い白髪からキラリと生えて光る白い一本角。
あれ、俺こんな奴どっかで見たことある様な……
「おいキズガラス。まさかとは思うがあの白い奴……パーシヴァルか?」
キズガラスはコクリと頷く。
「マジかよ! あのイケメンパーシヴァルかよ! どっかの種族の放浪貴族だろアレ!?」
―――キズガラスの姿は私が変えてやっている。
「あんだって!? ああそういう事ね! キズガラスが凄いんじゃなくてお前が凄いのね。お前が魔法系チートなのね!」
直接脳内にパーシヴァルの声が響く。
周りの三人にはその声は聞こえないのであたかも俺が壊れたみたいな表情を浮かべているのだが。
―――今回はそいつを連れていくと良い。面白い働きをしてくれる。
「ん。お前は手伝ってくれないって事か?」
―――今はそいつで十分だ。
「はぁ……連れてけって言うなら連れていくけど」
そう言い切ると軽装純白騎士、またの名をパーシヴァルは王都の方へと人間姿で歩き去って行ってしまった。振る舞いが完全に人間そのものみたいな動きをしている辺りこの半年間人間姿で遊び回っていたことが見受けられるのだが。
あいつはあいつなりに森から出てきて楽しいという事だろうか。
「おい夜。いきなりどうした幽霊とでも会話してんのか?」
「え、ああいや違う。まあ何だ、道中ゆっくり話すよ」
「そうか。いきなり大声上げるから壊れたのかと」
「たまに頭のボルトが全部抜け落ちるからねヨルは」
「はいルーリア君何かある事に僕に突っかかってくるのやめて頂きたい! 理由があるんだよ理由が!」
そして俺たちは楽しく騒ぎながら、モンキーウルフ討伐へと向けて街道を道なりに歩き出す。その途中でキズガラスは人間の姿から元の黒馬に戻っており、俺たちは目的地を目指すのだった。
「はぁー、パーシヴァルが脳内に直接ねぇ。だから俺たちは何も聞こえなかったってわけか」
歩いている最中に先程の経緯を話すとロロは納得したように頷いていた。
結構信じやすいなコイツ。
「で、このキズガラスが役に立つから連れて行けって言われたんだ」
「ふむ……ちなみに夜。馬は乗れるのか?」
「え? あー訓練した事無いけど多分知能があるキズガラスとパーシヴァルなら乗れると思う。乗りやすいよう配慮してくれるし」
「なるほど……」
すると質問をしたロロは少し考える間を置いた後、自信満々な笑顔を浮かばせながら、
「ルーリアは剣士!」
「私?」
隣を歩くルーリアを指差した。
そしていきなり名前を呼ばれて驚いているルーリアを余所に続けざまにハティを指差し、
「ハティは魔導士!」
「んー?」
その後でロロは親指を立ててはにかみながら自分を指差し、
「俺は斥候!」
そして最後に俺を指差し、
「そして夜は……『騎士』だ!」
と高らかに言ってのけた。
「いいチームになるぜこれは!」
言いたい事はわからんでもない。
つまり今のロロの言葉は俺たちのそれぞれの役割、いわゆる『職業』を表しているのだろう。
ロロの斥候は恐らく盗賊とか工作員とかそんな感じか。俺が騎士なのはよくわからんが。
けどこういうのって楽しいよなぁ。中二心がくすぐられるし。ただの役割分担なのにテンションが自然に上がってくる。
「はいはーい質問!」
「何だ?」
「ルーリア剣士とハティ魔導士はわかるけどロロと俺のはどういう意味だ?」
「俺は偵察、攻撃、追撃。何でもござれの万能男だからな! いわゆる遊撃手だな!」
「自分で言うか」
自信家なのか。はたまた事実なのかは今の俺には知る由も無いが、今この話をすることについてなら心当たりがある。
どうやらロロは仲間を欲しがっているらしい。
何かしたいことがあるのか、ただ寂しいだけなのか。当然そこまではわからない。
「ちなみに夜の『騎士』は国を守る様な騎士じゃないぜ。意味合いとしては『騎兵』『魔物使い』『ライダー』だ!」
「ライダー……!」
確かに意味合いとしては騎士とは元々馬などに騎乗して戦う者の事を指す。そういう意味では間違ってはいないのだろうが、ロロの言った全ての言葉が俺の中の『カッコいいの大好き』中核を鷲掴みにした。
「カッケェなライダー! 魔物を使役して戦うライダー。俺それ目指すわ!!」
「ハッハー! カッコよさにかけては俺の右に出る者はいないのだよ夜君」
想像してごらん。
馬、ユニコーン、竜やまだ見ぬ怪物たちに騎乗し戦う者の姿を。これに憧れない奴は男じゃない。そう思わせるほどにライダーとは子供たちの憧れであり、魅力的……!
俺の中でどでかい指針が立った。ライダーを目指す。
「剣士、魔導士、騎兵、遊撃。見ろ、このチームはまさに連隊の縮図になっている!」
「おお!」
「どうだ皆。チームを組もうぜ。仲間にならないか?」
ファンタジーものド定番。
仲間たちとパーティ、チームを組み、戦ったり稼いだり旅をしたり。憧れる。
まるでロロは俺がどんな事を好み、どんな価値観を持っているかを全部把握しているかのように俺たちに語りかける。そしてその原動力は単純明快、
ロロも同じくカッコいい、やって見たいと思っているから。
そんな思いが見て取れるほどにロロの目は輝いていた。
「やる! チーム組もうぜ! ロロの提案を俺は全面的に肯定します!」
「おおそうか! 夜はこう言ってるが二人はどうだ?」
ロロは俺の言葉に気を良くしたようでニカッと笑いながらハティとルーリアに顔を向ける。俺も一緒に顔を向けたのだが、女子陣は俺たちよりテンションが高くはなかった。
「ヨルがやりたいなら良いよ。人手は多い方がお金稼げそうだもんね」
ハティははしゃぐ俺とロロを見て『可愛いなコイツら』みたいな笑みを浮かべながら快諾した。
「私は無理。今回一緒に来てるのは腕試しだし……私はカルトさんのところで鍛えてもらってるから」
「そうか……まあ無理にとは言わない」
「ん」
反面ルーリアはやはりという返答だった。
そも、ルーリアは金を稼ぐ必要が無い。兵士になり、レイル・ロードを倒すことを目標にしているわけだし。しかも兵士になれれば金も入るからだ。小遣い稼ぎにギルドの依頼を受けることはあれどそれを専業にする必要は無いのだ。
しかし俺たち余所者は違う。
ゴルウズには仕事が無いのだ。厳密に言えばあるにはあるのだが。店のウェイターとか事務とかそういう仕事はゴルウズの国民が就いている。
そのため他の国から来た流れ者は戦いとか、そういう仕事が多く割り当てられる事が多く、稼ぐのであればギルドで仕事を貰うのが率が良いらしい。
エルが言ってた。
「ちなみにロロ。今回のモンキーウルフ討伐は報酬いくら?」
「陽銀貨十枚」
「……やっぱりこの国服高くね?」
隣を四本足で歩くキズガラスが「それオレも思った」と言わんばかりに低く唸った。




