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治る身体の異世界ライダー  作者: ツナサキ
二章 死の蔓延する国
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二章11 暗闇からの凶愛

 ふと目が覚めるとそこは見知らぬ天井だった。


 といっても周りはまだ暗く、天井の薄暗い色を視認するのは難しい。俺は目を擦りながらゆっくりと起き上がる。どうやらベッドに寝かせられていたらしい。


 薄暗闇の中俺は辺りを見回す。

 寝ていたためた目は暗闇に慣れており、幾ばくか部屋の様子を映し出す。


 机。カーテン。寝ているベッド。どれも暗闇のため色は視認できないのは目がしっかりと覚めた今でも変わらない。

 そしてベッドに座ったままの時間がどれほど過ぎたかわからなくなるような感覚に襲われた瞬間、俺は寝起きのガラガラ声で呟いた。


 「今……何刻?」


 咄嗟に『何時?』ではなく『何刻?』と出てくるあたりこの異世界での生活にも慣れ始めてきたことが窺える。


 「クロノで時刻確認したいけど、仕方ない外まで行くか」


 クロノはとても便利な魔法だが欠点もある。

 その一つに地面に正円を描かなくてはいけないというものがある。


 厳密には地面に触れているものに描くことでも発動するのだが、その場合は光量が目減りする。

 一応屋敷は地面の上に立っているわけだから屋敷内で使用もできるが屋敷に傷をつけなくてはならない。そして二、三階まで地面から離れると上手く発動しなくなることがある。らしい。


 実際に屋敷に傷をつけてやって見たことは無いのだが。


 そのためクロノを使う際は外まで出て行くのが普通だ。

 遠くにそびえ立つ時刻塔を見るのも一つの手段だが今は外が暗くてよく見えない。


 俺は屋敷からカンテラを持ちだし外に出て、庭の土の部分に足で簡単に丸を書く。


 「クロノ」


 眠たそうにつぶやいた。


 すると足で書かれた不格好な円は光を帯びて浮き上がり、現在の時刻を俺に示す。


 「……ん、三刻半過ぎ? その割には真夜中みたいに暗い……あ、日喰に入ったのか」


 どうりで太陽が昇ってないわけだ。そういえば月の光も無い。王都を照らす頭上からの光は一切なく、街灯や松明の光のような物だけがチラチラと見えている。


 「月は太陽の光を反射して光ってるんだっけ。それなら太陽の消えた日喰の時は月も見えないって事か。そこまで地球と同じなのか知らないけど」


 耳を澄ますと王都の様子は比較的静かだ。

 前日の様な騒がしさはそこまで感じられない。だが壁際で警戒をしている兵士たちの影響だろうか、それとも暗闇がそうさせるのだろうか。街全体に不安の様な感情が渦巻いているように感じた。


 「これが『日喰』」


 「ええ。そうです」


 「うわっ! ビックリした」


 ポツリと俺が呟き黄昏ていると背後から急に声がし、振り向くとそこにはエルが執事服に着替えて遠くを見るように立っていた。

 そしてエルはそのまま俺の方へと近づいて来て、背後から抱きつくように両腕で俺の体を包み込んだ。


 「……どうか、した?」


 「いえちょっとね。今大陸中で戦いが起きて、沢山の命が消えて行ってると思うとちょっと怖くて……カルト君は日喰の時はいつも警備に出てますから、この暗闇に人と居れるって久し振りなんです」


 そういうエルの声は少し暗みを帯びており、普段落ち着いている感じのエルが少し心境に揺さぶられている様な。それでも年下の俺に心配させまいと心を強く持とうとするエルを後ろに感じ、姉に抱かれている様な感じがした。


 「……そっか。じゃあ俺でよければギューっとしてもらってもいいですぞ?」


 「ありがとう。それじゃあ、ギュー!……昨日はすみませんでした、ハティちゃんが魔法とても上手かったのでつい説明を怠ってしまって」


 「あ、そういえばどうなったんだっけ?」


 「覚えてませんか、無理もないですね。リーデが爆裂してその衝撃で気を失ってしまったんですよヨル君。あの魔法は光の射出口を調節して先を照らす魔法ですから、流れ込んだ魔力量に光の球が耐え切れず暴発したんです」


 「あーなるほど。俺の方こそゴメン、もっと手加減するべきだったなぁ」


 ふと客観的に見ると街の光を前に暗闇で後ろから美少女に抱きつかれているって凄いロマンチックな雰囲気であったが、それを口に出すのは雰囲気にそぐわないのでやめておこう。


 「そういえば『契約印』の事ですが、調べてみてわかりましたよ」


 「ホント? 何か意味とかあったんだやっぱり」


 「はい。本当は当事者の方がよくわかると思うんですけど、契約内容がわかりました。形状から契約した生物は『馬』ですね。それも眷属を連れている馬です。心当たりはありませんか? 馬を従えている馬なんですけど」


 「ある。物凄いある。完全にパーシヴァルだ」


 そういやキズガラスはパーシヴァルにペコペコしていたな。あいつ眷属だったのか。


 「パーシヴァルって馬の名前ですか?」


 「そう」


 「なるほど……じゃあヨル君はその馬に信頼されたんですね。あと具体的な内容は『剣となる』と『譲渡魔力分の力の行使』でした」


 エルは簡単にそう言うが俺には全くチンプンカンプン。

 するとエルは俺が頭の上に?マークを出しまくって混乱しているのに気づいた様で補足の言葉を入れる。


 「あ、私の解釈で申し訳ないんですけど『剣となる』は戦う際には力を貸す、みたいな意味だと思います。それと『譲渡魔力分の力の行使』はヨル君がそのパーシヴァルに与えた魔力の分だけ力を貸すって事だと思いますよ」


 「なるほどわかりやすい。ところで何故俺の頭に顎乗せてるんですかね」


 「何となくです」


 「痛い。頭のてっぺん痛いから」


 エルは俺にそう指摘されると頭を横に揺らして顎で俺の頭をグリグリと抉る。エルにとっては年下の子供とじゃれているだけなんだろうが、俺の方は顔から火が出るんじゃないかってくらい気まずい。

 だって背中に当たってるんだもん。エルの胸が。


 「では今日は日喰で暗いですけど魔法の勉強しますよ! しっかりついて来て下さいね!」


 「あ、ああ! 望むところだぜ。才能が無いなら努力と発想力で補ってやるぜ!」


 「その意気です!……まぁヨル君は魔導士の適性が無いだけで魔防力という点では群を抜いて凄いんですけどね」


 そして俺たちは飯を食って今日の魔法の訓練に備えるため、暗闇に光る星屑のような王都を背に屋敷へと入って行った。


 「ちなみに俺が寝かされてた部屋って誰の部屋?」


 「カルト君の寝室です。現当主の寝室ですね」


 「わぉ」


 「ちなみにハティちゃんは私が抱き枕として使わせていただきました」




______




 朝食を終えた俺たちはいつもの勉強室に来ていた。


 俺は横目で隣のハティを見やる。

 まだ少し眠たそうにしているが、ハティのモコモコした長髪が綺麗に整えられていた。エルに抱き枕にされた割には綺麗だ。とかしてもらったのかな。


 俺の正面に座るルーリアは短髪ストレートであるためクセのつきにくい髪質であるみたいだから整えなくとも良さそうだ。


 「では魔法について勉強していきましょう。暗いですけど日喰ですから仕方ありません。ではヨル君、魔法とは何ですか?」


 「いきなりだな……えーと、魔力を使う事で使える力。現象の事でーす」


 「じゃあ魔力って何ですか?」


 「そんなの知らんよ」


 「ヨル君は結構開き直る性格してますね……」


 エルはコホンと軽く咳払いをして仕切り直し、続ける。


 「魔力とは生物が生きているだけで生成されるエネルギーの事を言います。ですから死体である従者は魔力を生成できないので魔法を使えないんですが……まぁこんなこと知っても意味なんて無いので説明は割愛しますが。魔法を使う生物=それなりに知性があるとでも覚えておけばいいと思います」


 「毎回思うんだけどエルの説明って結構ざっくりしてるよね」


 「だって魔力はどう生成されて何処に溜まってどこを通ってどう変化して、なんて知ってるより魔力が少なくなると体がけだるくなってくるって知ってる方が有用ですから!」


 その点においては全面的に肯定。

 正直な話魔法なんてものが無い世界で生きていた俺に理解できるのは精々後者くらいなもんだ。


 「で、その魔力には大きく分けて六つの属性がある訳です。まぁヨル君はどれにも該当しない無属性ですが」


 「結構気にしてるんですからやめていただきたい」


 エルの辛辣な台詞に心折れかけながらもなんとか振り払う。するとニコリとエルは微笑みながらさらに続けた。


 「皆さん魔法の事はあまり勉強していない様ですから教えますが、六属性にはそれぞれ特性があるんです」


 エルは自信満々に自分は勉強してますから感を出して説明すると、ハティは自身に直結することなのでエルから貰ったノートに黙々とエルの言っている事を要点をまとめてメモしている。いいんですか? 紙ってファンタジー世界だと高価なんじゃないんですか? あれ、文字とか書いてある『本』が高いんだっけ? よくわからなくなってきた。


 「まず熱操作と攻撃の炎。補助、防御の水。攻撃、強化の雷といった具合ですね。ハティちゃんの炎は熱を奪ったり与えたり、魔法自体を攻撃として使う事が得意です。そしてルーちゃんの雷は敵を攻撃したり自身に纏わせることが得意ですね」


 「俺は、無属性は?」


 「魔防力が高い」


 「何度聞いてもやっぱりそれだけかい!」


 なんか話のオチに使われた気がしないでもなかったが、無いものは仕方がない。受け入れざるを得ないだろう。


 「で、自分の得意属性を使うという事には三つの利点があります。効力の強化、魔力の節約、扱いやすさですね」


 「前にも言ってたやつだ」


 「そうです。ハティちゃんを例に出して教えましょう」


 「私?」


 ノートにメモをしていたハティは首を上げてエルの顔を見やる。

 そういやハティって文字書けるんだな。ゴート爺さんに教えてもらったのかな。


 「ハティちゃんが得意属性の炎魔法を使うと、その場合他の属性魔法を使った時よりも威力の向上、消費魔力の減少、習得難易度の低下が起きます。つまり簡単に言うと、強い魔法が簡単に覚えられて使う魔力も少なくて済む。ということですね」


 「良いことずくめってことか」


 「魔導士と呼ばれる魔法を使って戦ったりする人たちは当然、より少ない魔力でより強い魔法を使おうとしますから得意属性というのは大事なんですね」


 「なるほど。だから無属性のヨルは魔導士に向いてないって事なんだ」


 エルが指を立てながら話しているとそれを遮るようにそう言ったのは隣のルーリアだった。軽く馬鹿にされた気がする。


 「その通りです」


 「にゃるほどねぇ。悲しいなぁ。俺密かに魔導士とか憧れてたんだけど」


 「それでは魔法の基礎も覚えたところで実際に試してみましょう。ルーちゃんは雷魔法、ハティちゃんは炎魔法、ヨル君は……文字の書き取りにしましょう?」


 「何か俺だけのけ者にされて悲しいんだけど!?」


 エルの思わぬ発言に無論反論する俺であったが、肝心のエルは軽く顔に憐れみを浮かべているように見え、


 「その……昨日見せたリーデは魔力制御の適性も見れるんですけど、その」


 「え、ちょっとやめてよ。何か嫌な予感がするんだけど俺」


 「多分ヨル君は魔力制御するのが難しい体質みたいなんですよ。ちょっと室内では危ないかなぁって……」


 申し訳なく手のひらを合わせながらこちらに愛想笑いをするエルを見て、ちょっと心が傷付いた。

 剣術ではルーリアに勝てず、魔法ではハティに勝てない。取り柄は生存力のみ。どう生きるのが正解なんだろう。


 「べ、別に悲しくなんかないんだからね」


 そう言った俺は少し涙ぐんでいたような気がする。

 そんな俺を見かねてか、正面にいるルーリアが頬杖をかきながら、


 「別にいいじゃん。剣が振れないってわけじゃないし身体は治るし」


 少し照れくさそうに呟いた。

 まさかルーリアに励まされるとは俺も思っていなく少しの間目が点になっていたが、何とか俺は平常心を取り戻す。


 「やだ、ルーリアが優しい……」


 殴られてばかりだったからちょっと感慨深いものがある。

 どういう心境の変化か知らないが多分他意は無いんだろうけど。


 そしてルーリアとハティが簡単な魔法を教えてもらっている間に俺は黙々と文字の書き取りをすることとなった。




______




 今は夜では無いが外は真っ暗である。

 それも現在進行形で日喰が起きているため仕方がないとはいえ、当然ベルウィング邸も真っ暗な事には変わりない。人がいる部屋は照明がつけられるものの廊下は月の光さえ無いため外と同様に暗い。

 あれから密かにリーデの特訓をしているがまだ上手く照らせないため、俺は渡されたカンテラを片手に屋敷の窓拭きをしていた。


 「暗いよ! 怖いよ! 疲れたよ!」


 一人でぼやきながらも正面の窓を綺麗に拭いた俺は窓の縁に腰を下ろした。


 「これだけ部屋も多いと窓も多い。それはつまり俺の仕事が増えるという事。よくエルは一人でやってこれたな」


 真面目に感心しながら俺は休憩を終えて立ち上がる。まだまだ拭いてない窓はあるのだ。それを片っ端から綺麗にする必要がある。

 カルトは剣術の訓練は軽く打ち合うくらいにしておけと言っていたらしいがこの暗闇でどう打ち合えと言うのか。流石のルーリアも断念したため日喰中はかなり暇。


 「そのため雑務をこなしているわけだ。さあ次の部屋行くぞ!……あぁ!? カンテラの火が消えた!?」


 燃料切れか。はたまた風か。

 いや風は無い。ちゃんと風で消えないような作りになっている。という事は燃料切れか。満タン入っていなかったのですね。


 「いや冷静に分析してる場合じゃねぇ。全く何も見えん!」


 暗過ぎ。

 こんな暗さ今まで体験したことが無い。いつまで経っても目が慣れてこなく、まるで時間が止まってしまったと錯覚するほどに視界からの情報がシャットダウンされている。

 魔法で光源を確保したいのは山々だが暴発したらと考えると恐ろしいからできない。


 王都の屋敷で軽く遭難したんですけど。


 「……どうしよう」


 手詰まりである。

 そうして闇の中ロクに動くことも出来ずに佇んでいると、何かを感じた。

 何かはわからない。けれど感じる。


 「え? 誰かいるのか?」


 闇の部屋に俺の声が反響する。

 人の気配はない。だが、何かがいる・・・・・


 「誰だ。どこにいるんだ?」


 またしても俺の声が響く。

 しかしながら返事は無い。きっと自分の感覚が闇に飲まれておかしくなったのだろう。そんな風に心の中で思い、またこの状況を打開する方法を考えようとすると、


 「「アハハハハハ」」


 「ひっ!?」


 部屋の中に俺以外の声が響いた。

 腕組をして考え込んでいたヨルの後ろから背筋が凍るような冷たい少女の笑い声が聞こえる。その声は二つの声が重なっている様であったが、その声の持つ気味悪さを倍にしたような声だった。


 余りにも唐突なホラー要素。最早幻聴でしたの方がまだ楽だったかもしれないが、これはまさしく現実である。

 そしてその少女の声はお互いに話しかけるように、俺ワザとに聞かせるように艶やかに、


 「姉様。面白い生き物がいるよ」

 「ええ。さぞいい声で鳴くのでしょうね」

 「「アハハハハハ」」


 一人は綺麗で上品な声。もう一人は少し元気のある様な声だ。

 まるで値踏みするかのように話した後、また情緒不安定になってしまいそうな笑い声をシンクロさせる。余りの恐怖で汗ばんだ首筋をどこからか吹いた風が抜け、まるで体温を失った手に鷲掴みにされる感覚を覚えてた。


 「なっ、何!? ぅあ、ああ!!」


 パニックになった俺は部屋中をかき回すように動き回る。

 壁にぶつかり、机にぶつかり、カンテラが地面に落ち耳をつんざく金属音の後に燃料が漏れる。部屋中を暗闇のまま動き回った俺の体は、全身に痣が出来るほどだった。


 「ひぐっ、がぁ、っハ……」

 「フフフフフ」

 「アハハハハハ」


 暴れ回る俺は自身の首周りの筋肉がギシギシと悲鳴を上げる音を捉え、その影響か軽く耳鳴りがし、謎の声の笑い声が脳を直接侵していく。

 その圧倒的な恐怖による不快感に耐えられず、俺は床へと倒れ込んでしまった。


――なん、だこれ……


 「決めた姉様。この子を玩具にしましょう」

 「良い考えね。それじゃあ機会を待ちましょう」

 「フフフフフ」

 「アハハハハハ」 


 「ぁああ!! ああああああああ!!」


 まるでその声には人の精神を蝕む効果でもあるのだろうか。それ程に俺の精神は波打つ水面のように不安定になっているのを感じる。だが俺は一寸先は闇の中であるのにも関わらず、上手く動かない体を引きずりながら部屋の扉を手探りで見つけ出して逃げ出した。


 走る、走る、走る。

 闇の中を切るように走る。あの声が追い付いてこないように、耳を両手で塞ぎながら走る。


 怖い。ただひたすらに怖い。

 あの声は人の、それも少女の声だった。

 だがあれは、命の見えない声だった。それが怖い。命を感じさせない生物の声なんてものがあるのだろうか。

 もしそんなものがあるとすればそれは、その人物は『人』として壊れている。


 あの声から逃げたい。

 その一心だった。


 その一心から廊下を走っていると、突然廊下の真ん中で何かとぶつかる。


 「どうしたんですかヨル君!?」


 一瞬先程の声の主に先回りされたのではと恐怖に顔を引きつらせたが、乱雑に部屋をかき回した音を捉えたのだろうか。いくつもの魔法の光源を体の近くに漂わせたエルがとても心配そうに俺を抱き寄せたのだった。



 そしてエルは気づく。

 怯えるヨルの首に両手で絞めつけられたような痣がある事を。それもかなり酷い、一歩間違えれば窒息してしまう程の痣だった。


 「何、これ……?」


 すぐにエルは襲撃を懸念し、追撃しようと追ってきているはずである『敵』への迎撃態勢に入るが何も来ない。


――襲撃ではない……? ではヨル君の痣は一体。

 エルは咄嗟に起きている事を理解しようと思考を巡らすが、


 「カッ、ヒュかはっ」


 「ヨル君!?」


 思い切り『何か』に首を絞められ、その状態で走ったヨルが辛そうに息をするのを見てエルはヨルを担いでその場を後にした。


 その頃、ヨルがカンテラを落とした部屋の中では奇妙な笑い声が木霊しており、カンテラから零れた燃料の溜まった水面に足跡のようなくぼみが付いたままになっていた。

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