お屋敷のメイド達
他のメイドさん達です。
今回会話が多くて誰が発言しているのかすごいわかりづらくなってしまったすまねえ~~~
「あ、そろそろ着きますよ。ここがディーヴァ領です。
農村と私達のお屋敷しかありませんが、自然豊かで良い所ですよ。」
そう言われ馬車の小窓から外を覗くと長閑な風景が広がっていた。
畑で農作業をする人、後ろには大きな山ときれいな青空が広がっている。
村を通り、山の麓まで来ると馬車が止まる。
ティスアさんが扉を開けて「どうぞ」と言ってくれる。
その仕草はメイドとして完璧なものだった。
馬車を降りると、目の前には周りを囲む森を大きなお屋敷が佇んでいた。
ティスアさんが馬車の御者と話してからこちらに来る。
「ようこそディーヴァ家へ。
主人に代わって改めて歓迎しますよ、トッコさん。
ついてきてください、まずはお風呂とお着替えからですね。」
そう言うと開けっ放しの門を通り、庭へと入っていく。
中央には敷石が通り、立派な正面玄関へと続いている。
庭には洗濯物が干されていたり頑丈そうな大きな机といくつかのイスがあったりとなんだか賑やかにゴチャゴチャしている。
庭の中腹くらいまで来た所で正面玄関の扉が開き、誰かが出て来る。
人影はこちらに気づき、近づいてくる。
その人はメイド服を着ていて金髪に近いような明るい茶髪で、癖っ毛をそのまま自由にさせているような髪型をしている。
しかしその髪型以上に目立つのがその頭に生えたもこもことした耳だ。
明らかに人間ではない。
赤い目を赤いフレームのメガネ越しに輝かせ、彼女はこちらを興味深々に見ている。
「お?おお??新しい娘かにゃ??」
「あらリコリスさん。」
とティスアさんが言った瞬間、その明るい髪の毛が翻り、素早くこちらの後ろに回って襲いかかってくるのが目の端を掠める。
予想外の行動に思わず回避できず、そのまま後ろから抱きつかれてしまい声をあげてしまう。
「ひぇぁああ!」
そのまま彼女は私を抱きしめる形で
「スンスンスン・・・・懐かしい匂いがするにゃ~。くさいにゃ。」
匂いを、嗅がれた・・・。
「リコリスさんやめてください・・・。」
呆れ気味にティスアさんがリコリスと呼ばれた女性を引き剥がす。
「へへぇ~通過儀礼にゃ。」
「もう・・・。まずはお風呂に入れますから、他の人を呼んでおいてください。
あとでちゃんとご紹介しますので。」
「はいはーい了解にゃーん。かわい娘ちゃんまたにゃん!」
そう言うと彼女は駆け足でお屋敷の中に戻っていく。
怒涛の展開に素直な気持ちを呟いてしまう。
「マモノが居る・・・。」
それを聞いてティスアさんが謝ってくる。
「ごめんなさい、あの人は誰にでもああなので・・・。
あれはリコリスさん。このお屋敷の炊事担当の人です。」
誰にでもあんなのって普通に問題があるのではないだろうか・・・。
もしかしてこの屋敷の住人は変な人しか居ないのだろうか?
「見ての通り、リコリスさんは亜人です。
ちょっと変わってる人ですが、普段は面倒見もよく良い人ですよ。
トッコさんならきっと仲良くできますよ。」
本当に仲良くできるだろうか・・・。
早くも心配事ができてしまって辟易してしまう。
「私達もいきましょうか。」
そう声をかけられお屋敷に入っていく。
お屋敷の中へ入るとエントランスホールに出る。
エントランスホールには彫像に本棚、真っ白なテーブルクロスが掛けられたテーブルなどが置かれている。
普通、貴族の住まいとはこんなものなのだろうか?
なにより目を引くのは、なぜか本棚や食器棚の上にぬいぐるみが置いてあるのことだ。
高級そうな調度品にかわいいぬいぐるみが悪目立ちしている。
これもミントスの趣味なのだろうか?
正面には2階に上がる階段が2つ伸びており、その中央には廊下が続いている。
ティスアさんに先導され、そのまま廊下を突き当りの扉まで直進する。
狭いのか広いのかよく分からないお屋敷だ。
ティスアさんが突き当たりの両開きの扉を開けると少し石鹸のいい匂いがしてくる。
「えーと・・・お風呂は、わかりますか?」
唐突な質問に少し戸惑う。
「えっと・・・?」
「あ、いえ、分かるなら大丈夫です。
お風呂という文化が無い方も稀にいらっしゃいますので・・・」
お風呂がない文化というのがよく分からず少し考えていると、ティスアさんが私の服を脱がそうとしてくる。
「え、あ、あの!」
「どうしました?」
「じ、自分で出来ます・・・」
さすがに今日会った人に脱がされるのは恥ずかしい。
「あら、そうですか?
では1人でお風呂も入れますか?」
なにか、こう、当然のことを堂々と聞かれるのは恥ずかしさを感じる。
「大丈夫です・・・」
聞かれるということは過去にそれが分からない人も居たのだろうか。
「では私は替えの服を持ってきますね。
あ、お風呂で寝ないように気をつけてくださいね。危ないので。」
そう言うとティスアさんは出ていく。
粗雑に作られた服を脱ぎ、腕に巻いてあるスカーフもカゴに入れると奥のカーテンを引く。
そこは自分が想像していたよりもとても大きなお風呂だった。
「すごい・・・」
思わず声が漏れる。
故郷に温泉はあったが、こんなに広くなかった。
こんな大きなお風呂がある所で暮らせるなら、少しくらい変な人が居ても全然いいかも、とはしゃいでしまう。
たっぷりとしたお湯で体を洗い、お風呂に浸かる。
やっぱりお風呂はとても良い・・・心まで洗われる気がする・・・。
お風呂で気持ちを溶かしながらも、ミントス、ご主人様とティスアさんとリコリス?さんについて思い返す。
ご主人になる人は話した感じでは普通の人間という感じだった。
しかし奴隷となる相手にここまで優しく接する訳が分からない。
もちろん威圧的に話す意味もないが、なぜ道具となった奴隷に対してここまでの待遇を与えるのか。
もしかしたら初日はサービスで、次の日から死んだほうがマシな思いをさせられる、という可能性もありえる。
これでは終身奴隷というより、契約奴隷の、それも上位の契約奴隷と同じような環境だ。
それになんというか、こう、得体の知れない気持ち悪さというか・・・。
情報が少なすぎて偶然なのかもしれないけど、持っているモノに一貫性が無いというか。
とにかく警戒はしておいたほうが良さそうだ。
次にティスアさんだ。
ティスアさんはあまり表情を変えないからか、感情が読みづらい。
さらに言えば、表情から嘘かどうかを判断できる、と自負していた私に少し疑問を持つ。
嘘を言われれば、表情から自信を持って嘘だといい切れるが、ティスアさんに関してはこう、なんというか、漠然と嘘を言われたのではないか?というくらいにしか感じない。
もしかしたら人間ではないのかもしれないが、どう見ても人間にしか見えない。
実は小さな尻尾が生えていたり、回復能力が異常に高いのかも知れない。
人間で無い種族は、人間顔をしていればある程度読めるがそうでない場合はあまりアテにならない。
それでも、それほど警戒するほどでは無いとは思う。
ただ女というのは強かなものだ・・・警戒までは行かずとも、信頼してしまうのは危ういと判断する。
最後にリコリスさんは・・・まあ、警戒しておけばいいのだろうか。
初対面でいきなり抱きついてくる、というのはどうゆう環境で育てばそうなるのか・・・。
それに彼女は亜人だ。
亜人は人間とは根本的に性能が違う為、純粋な肉体能力では人間が大きく劣ることが多い。
私は魔法の知識が乏しいからあまり亜人と争いを起こしたくはない。
亜人には魔法が無いとまず太刀打ちができないだろう。
仲良くやれれば良いのだけど・・・。
ここまで警戒対象しか居ないことに少し頭を抱える。
「心細い・・・・村へ帰りたい・・・・」
天井を仰いで心の叫びを呟く。
感傷的な気分を溶かす為にもゆっくりとお風呂に浸かっていたいが、自分は奴隷となった身だ。
ティスアさんの言動から察するにきっと他の人に紹介するために待っているのだろう。
「魔物に襲われた時も、1人でお使いに行かされた時も、なんとなくなんとかできたんだ」
と、根拠のない自信を自己暗示する。
少し目を閉じて繰り返した後、意を決して勢い良くお風呂からあがる。
「あ、お待ちしておりましたよ。」
脱衣所に戻ると声がかかる。
早めに上がって正解だったようだ。
「服は――」
ここまで聞いた所で察する。
「着れます、大丈夫です。」
「常識はあるみたいですね。」
理解してもらえたようだ。
もしかして試されてるのだろうか・・・?
ではここに置いておきますね。と言う声と共にメイド服が入ったカゴが棚の端から出てくる。
玄関で会った女性と同じフリフリのかわいいメイド服だ。
触ってみて初めて分かったが、このメイド服、魔法の力も宿っているし生地も上質なモノを使っている。
この一着だけで一体いくらかかっているのだろうか・・・。
金目のモノを持って逃げずとも、このメイド服を売るだけで十分金になるくらいの価値はある。
奴隷になった初日に高価なものを渡すとは、やはりご主人は頭がおかしいのだろうか・・・。
いそいそとメイド服を着た所でティスアさんが顔見せる。
ティスアさんもメイド服に着替えていて、先程のドレスとはまた違った印象を受ける。
美人は何を着ても似合うものだと羨ましくなる。
「あら、まだ髪が濡れていますよ。
ちゃんと乾かさないと。」
そういうと羽の着いた道具を持ってくる。
その見たこと無い道具に魔石をセットすると生ぬるい風が送られてくる。
「これはそちらにはありませんでしたか?
これは温風を送って髪の毛を乾かす魔道具ですよ。」
こっちでは結構普及しているものなのだろうか。
しばらく生ぬるい風に当たっているとスカーフのことを思い出す。
「あ、あの、さっきのスカーフ、どこへ・・・」
「ああ、これですか?ここにありますよ」
死角にあった服とスカーフが入ったカゴを持ってきてくれる。
「よかった、ありがとう」
礼を言い、スカーフを腕に巻こうとする。
「大切なモノですか?
そのスカーフ、だいぶ汚れているようですが、キレイにしましょうか?
貸していただかなければなりませんが・・・」
そう提案され、少し考える。
ティスアさんは今の所悪い人ではないし、今の発言する表情からも悪意は感じられない。
大切なものではあるのだけど・・・。
キレイになるのならば、と半分賭ける気分でティスアさんにスカーフを差し出す。
「少し濡らさせてもらいますよ?」
と許可を求めるので頷く。
それを見て、ティスアさんが魔法を使い水の球を作り出す。
私にも出来るレベルの、高位の魔法ではないが、とてもキレイに水の球が形成されている。
こうゆう形成などの
その魔法で出来た水の球にスカーフを入れると続いて何かを呟き始める。
魔法のことはよく知らないけど、呪文だろうか。
小さな声で早口で言っている為「水」や「旋回」など断片的にしか聞き取れない。
水の球に浮かんだ紫色のスカーフが、まるで泳ぐ魚の用に動きだした。
「キレイ・・・」
思わず感想を口から零すと、突然水の球がボンッと小気味よい音を立てて爆発して煙を充満させる。
突然の光景に目を丸くする。
故郷の思い出のスカーフが・・・!
もっと警戒するべきだったと内心でものすごく反省する。
「はい、終わりましたよ。」
と言うとティスアさんが真顔で空の手を差し出してくる。
バカにするようなその行為に怒りが湧き出て自然と口を開いた所で、スカーフがひらひらとティスアさんの手に落ちてくる。
開いた口が閉まらない。
「ごめんなさい、驚かせましたか?
ちゃんと無事なのでご安心ください。」
確かに渡してきたスカーフはどこも破けたりしていないし、むしろツヤツヤになって帰ってきた。
一体どうやったのだろうか・・・私の知っている魔法ではこんなことをできる魔法はない。
もしかしたらティスアさんは高等な魔法術士なのかもしれない。
もう分からないことが多すぎて思考停止したくなる。
いや、もういいや。
あまり考えないほうが楽だと踏んで、起こることをそのまま受け止める気持ちになる。
「さあ、では参りましょうか。
皆さんがお待ちですよ。」
改めてスカーフを手首に巻くとティスアさんと共にエントランスに向かって廊下を歩きだす。
エントランスに戻るとテーブルクロスのかかった机に様々な彩りのお菓子と良い香りのするお茶が並べられていた。
そしてそこには自分と同じメイド服を着た人らしきモノが2人と、同じメイド服は着ているが明らかに人間ではない亜人が2人居た。
「あっ!来たにゃ!かわい娘ちゃんにゃ!」
その声が聞こえたと思ったらケモ耳が今度は正面から抱きつこうとしてくる。
それを横に避けると予測していたかのようにそのまま通り過ぎ、後ろから抱きついてくる。
もう諦めて受け入れる気持ちを持っているので諦めて匂いを嗅がれる
「変な匂いにゃ。」
変って・・・。
ちゃんと洗ったはずなんだけど・・・。
「やめんか」と声と共にゴッと鈍い音が鳴る。
同時に「ニ"ャッ?!」とリコリスが悲鳴をあげて、拘束が解ける。
それを良いことにそそくさとティスアさんの一歩後ろまで隠れ逃げる。
リコリスさんが頭を抑えて悶ている・・・どうやら角の生えたメイドが助けてくれたようだ。
「それでは歓迎のお茶会を始めましょうか。」
ティスアさんがなれた手つきでイスを引いて、座るように促してくれる。
席につくとピンク色の髪をしたメイドがお茶を淹れて差し出してくる。
「どうぞ、あなたの分ですわ。」
紅茶というやつだろうか、飲んだことはないが聞いたことがある。
ティスアさんにもお茶が届いた所で自己紹介が始まった。
「今日ご主人様が買って来ました、新たなメイドのトッコさんです。」
「・・・どうも(?)」
何を言えばいいかわからず雰囲気に流され曖昧な返事をする。
「初々しいですわね。」
「トウコは落ち着き過ぎにゃ。」
「ふふ、そうですね、トウコさんは特別ですよ。」
他のメイドが自分に関すること話していると、ティスアさんが進行してくれる。
「はい、では次誰かお願いします。」
匂いを嗅いでくるメガネケモミミメイドが勢い良く手上げて応える。
「はいはいはーい!リコリスにゃ!お料理担当にゃ!よろしくにゃ!」
「よ、よろしく・・・」
元気の良さに気圧される・・・。
リコリスはそのまま隣に「ほら次お前にゃ」とお菓子を差し出し促す。
隣の緑髪の角の生えた小さな少女は仕方なさそうにお菓子を食べながら
「カセッタ。見ての通りデミヒューマンじゃ。
お主より年上だから敬うように。」
と言って視線を外す。
容姿は明らかに子供なのだが頭に角、そしてさっきからたまに動いている尻尾がとても特徴的だ。
一体何の亜人だろうか・・・?
自分の亜人の知識と特徴を照らし合わせていると次の紹介が始まってしまい、思考を中断する。
「リンです!サイファですがよろしくお願いします!!
あ、主にお掃除を担当してます!」
とリコリスとはまた違った元気の良さそうな声で紹介してくれる。
長髪で青い髪をしている、胸の大きなメイドさんだ。
メイド、といえば普通こんな感じ、と言ったような普通の優しそうな人だ。
だが普通とは違う点がサイファという所だ。
この魔法が便利な世の中において、サイファとは魔力を保たずに産まれた者たちのことだ。
魔力が無いと言えども魔法が使えないわけではない無いらしく、魔石があれば普通の人と同じく魔法が使える、というのは聞いたことがあるが実際はそうゆうわけにも行かないらしい。
魔石を継続的に買い続けれる財力がある家にでも産まれない限りサイファは基本的に奴隷となるか武を極めるしか道がないという。
人間の中でも下手すると亜人奴隷よりも下に見られる、圧倒的弱者だ。
どうやらこの屋敷のメイドは本当にイロモノ揃いのようだけど、最後の1人はとても普通の少女に見える。
ピンク色の髪をした、同じくらいの年齢の少女がこちらに笑顔を見せてから自己紹介を始める。
「トウコですわ。私も最近このお屋敷に着ましたの。
お茶が得意ですわ。お茶担当でしてよ。」
比較的普通の少女で拍子抜けする。
ただ動作や言葉遣いが育ちの良さを感じさせる為、奴隷には似つかわしくない。
もしかしてここに居るヒト達はサイファのリンさんを除いて奴隷ではないのだろうか?
明らかに数人は奴隷ではない気がするが・・・
ここは素直に聞いてみて情報を集めた方が良いだろうと判断する。
「あの、皆は、奴隷なの?」
様々な答えが帰ってくるが
「奴隷~にゃね。うん、奴隷にゃ。」
「奴隷じゃの。」
「奴隷ですね~」
「奴隷ですわね。」
「奴隷ですよ。」
まさかの全員奴隷だった。
残念なことに全員嘘を言っている顔はしていない。
イロモノ奴隷のフルハウスを見ている気分だ・・・デミヒューマンと人間の比率的な意味で。
しかし同じ奴隷というだけで味方認定してしまうのはどうかと思うが、似たような境遇のヒトが多いのは心強い。
それにしてもご主人様抜きで、エントランスで堂々とお茶会をしているのだけども大丈夫なのだろうか?
いやそもそもこのお茶会自体ご主人様が企画したものかもしれない。
それより自分はこれからひどい目に会う可能性が・・・
と、俯いてごちゃごちゃと考えてしまう。
そこにトウコが思考を中断するように話しかけてくる。
「ふふ、冷めない内に飲んでみてくださいな?」
とお茶を目の前に来るようにソーサーを動かしてくる。
「そうですね、そんなに心配なさらずとも大丈夫ですよ。
トッコさんにやってもらうのは炊事洗濯掃除、大体はそこら辺です。
自分の部屋も与えられますし、働きによっては報酬もちゃんと出ますよ。」
そういうティスアさんの表情に嘘は・・・無い。はず。
どうも読みづらい。
そこにリンさんが裏付けるように、嬉しそうに言う。
「慣れるまで大変でしょうけど、ここは他に比べると有り得ない程自由ですよ!
私もお力になるのでなんでも頼ってくださいね!」
私じゃなくても分かるくらい表情に感情が出ている。
嘘とか付けなさそうだなぁこの人。
グダグダ悩んでも仕方ないので周りを観察する。
カセッタさんがモリモリお菓子を食べている。
あまり上品とは言えない食べ方だ。
自分もトウコに催促されたお茶を口へ運ぶ
「・・・!」
「おいしい・・・。」
思わず感想が零れ落ちる。
初めて飲んだけどこれはすごくおいしい。
鼻からとても良い薫りが突き抜けて、暖かさがお腹に染み渡る。
「でしょう?おかわりもありましてよ?」
トウコが誇らしげにこちらを見ている。
そういえば今日は何も食べていないことを、お茶を飲んだことで思い出す。
そしてそれを読んだかの用にリコリスがお菓子を幾つか見繕って差し出してくる。
「私の自慢のお菓子にゃ~!かわいこちゃんが来るっていうから気合いれたにゃ!」
見た目からしてとても美味しそうなお菓子が目の前に並べられ、我慢できずに口へと運ぶ。
「おいしい・・・!」
空腹なのも相まって、おいしいお菓子とお茶に涙が出そうになる。
「素直で良い子にゃ~。」
ものすごくニコニコしてこちらを見ているリコリスさんを無視してお菓子を食べる。
ここのお菓子は甘くてとても美味しい・・・自分の故郷では滅多に食べれるモノではなかっただけに、少し興奮する。
一通りモグモグした後、またトウコが美味しいお茶を淹れてくれる。
和気あいあいとした時間が流れ、見知らぬ土地、見知らぬ場所で少しでも幸せを感じている自分が居る。
奴隷となった身でこんな思いをして良いのだろうか・・・?
あまりに環境が良すぎて疑ってしまう。
そこに会話に混ざれない、というよりかは混ざらない自分に気を使ってか、リンさんが話を振ってくる。
「トッコさんはどこから着たんですか?」
「ここからだと・・・東の、方?たぶん?」
実際ここがどこなのかも知らないし方角なんて分からない。
気を使ってもらえるのはありがたいのだけど、あまり会話は得意じゃない。
こうゆう目上に対する言葉遣いが得意ではないのも後押ししている。
なんというか、自分でも微妙な言葉遣いになってしまっているのが感じられて恥ずかしい。
「東ですか、トウコさんもたしかそうですよね?
そういえばお二人、名前も似てますし、実は同じ国の出身だったりして?」
「さてどうでしょうね?
私の国にはトッコなんて感じの名前をつける文化は無かった気がしますわ。」
少し名前をバカにされているようにも感じるが、顔は至って真面目で、悪意は感じられない。
そもそも偽名なので小馬鹿にされた所で思う所は無いのだけど、ここは少しムッとしといた方がそれっぽいだろうか?
誰が答えを教えてくれるわけでもないので曖昧な表情をしておく。
「トウコは皮肉屋だにゃあ?
こっちの大陸出身としては、東の方の名前は全部変に聞こえるけどにゃ~。」
「あっでもそれだと私も東の方の名前に近いですよ?」
「リンはまだこっちでも名付けられることもある名前にゃ。
珍しいといえば言えば珍しいけど、トウコとトッコ程じゃないにゃ~」
名前について盛り上がっている所にカセッタさんが音を立てない用に立ち上がりそそくさと廊下側に逃げていく。
他の人もそれに気づくが、誰も止めない。
「・・・あ~そうだったにゃ。
あいつ自分の名前あんまり好きじゃなかったにゃ。
名前の話はあんまり突っ込んでやるにゃよ、特に人間組は。
怒らせると死ぬにゃ。」
死ぬって、なんて物騒なんだろうか。
カセッタさんは無愛想だけどそこまで怖い人には思えないが・・・
「あの、カセッタさんはどこの種族の方なんですか?」
「ドラゴン種らしいですわよ。最初聞いたときは耳を疑いましたわ。
でもあの伝説の竜神とは違うらしいですわよ。」
ドラゴン種・・・?ドラゴンって、あのどの種族も単体ではまず太刀打ちできないっていう、あの。
「うん、私も聞いた時はびっくりした。人型のドラゴンも居たんだって。」
「まあ~あいつはだいぶ珍しい方の存在らしいにゃ。
そっちの話もあんまり突っ込んでやらん方がいいんじゃないかにゃ?」
「まあ、まあ。
基本的に過去の話はツッコミ無し、ということになってますから。
聞きたい人は本人から直接聞いてください。命の保障はしませんが。」
「そうだにゃ~あいつ本気で数人殺しかけてたからにゃあ。
でも別に悪いヤツじゃないにゃ?無愛想だけど。
仲良くしてやってほしいにゃ。」
とりあえず過去を聞く、という行為は命を賭けるほどの行為だと理解した。
こちらとしても詮索されない方がありがたい為、これ以上は聞かないほうが良さそうだ。
「さてさて、お話もこれくらいに。
そろそろお茶会も終わらないとご主人様が帰って着ますよ。
お仕事に戻りましょうか。」
「そうだにゃ~」
そう言うとリコリスさんが片付け始める。
「では、そうですね。
トッコさんにはまずお屋敷を知ってもらいましょう。
誰か気に入った人と一緒にお屋敷を巡ってもらいたいのですが、カセッタさんは行ってしまいましたし。
そうですね、リンさんとトウコさん、2人でトッコさんを案内してあげてください。」
「んにゃ?リンが居ないと掃除はどうするにゃ?」
「私がやっとくので大丈夫です。
それとトッコさんはだいぶ疲れた顔してるので、お屋敷を巡ったらもう本日は休んでください。」
「わかりましたわ。」「わかりました!」
そんな顔をしているのだろうか、と自分の顔をぐしぐしと手で揉む。
「ふふ、では行きましょうか。」
トウコさんがそう言って立ち上がった。
作中で出てきた全員分の特徴おいときますね
トッコ
赤い髪をしたこの話の主人公。
14歳の女の子。初めての奴隷。
相手が人間、人型であれば嘘をついているのかどうかが分かる、はず。
トウコ
ピンク色の髪の姫カットの女の子。
ですわですわ言う人。
リン
青い長髪の女の子。
胸が大きい元気な子。
リコリス
金髪に近い明るい茶髪で、長い髪を自由にした感じのケモミミの女性。
にゃんにゃん言ってるセクハラ大臣。
ちなみにイメージ的にはオレンジ色の髪です。
カセッタ
緑色の髪のツインテール、角と尻尾がある。
聞いた話ではドラゴン種。
トッコより身長が小さい。歳はトッコより上との本人談。
ティスア
白髪の長髪の美人さん。
メイド長で修道士帽子をかぶっている。
感情があまり表情に出ず、感情が読みづらい。
ミントス(ご主人)
貴族で商人、らしい。
長髪の男性で低い位置のポニーテール。
聞く限り間違いなく変人。若い。
今回は早めに投稿できましたが、次回は少し遅れそうです。
進捗報告などはツイッターで。




