序章【クルスハヤト】
『運命』という言葉がある。
運命とは一体なんなのか。
そんな事を考えた事があるであろうか。
この世に起こることは必定。それが『運命』であるから。
予め決められた運命に縛られている運命だなんてなんともつまらない事である。
神。運命。
神が決めたストーリーなんてのは面白みなんてものは何一つありはしない。
『運命に……抗ってみませんか…。』
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リリリリリリリリリ。
やかましい音と共に迎える朝。
時刻は7時半を回っていた。
『朝か……』
『ハヤトー、ご飯出来たわよ!』
『はーい』
俺の名前は来栖隼人。
ごく普通の高校生。特に凄い能力が使えるわけでも無いしそんな痛いことを考えたことも無いわけで。
『うーん、最近秋月の影響受け過ぎてるかな……オタク街道真っ盛り。』
ともあれ誰得なんだと言われる俺の自己紹介を終えたところでっと。
『……母さん、おはよう。』
『ハヤト、おはよう。ご飯出来てるわよ。』
『うん、ありがとう。』
……。
母さんによって出された朝食を取り、学校へ向かう。
毎日豪勢な飯を作ってくれるので正直食べ盛りな男子高校生には有難い事である。
『ハヤト、今日は帰り遅いのよね。母さんちょっと知り合いの所に行かなくちゃならないから、夕食は絵里香の分も作って頂戴。』
『あー確か今日だっけ?わかったよ。まかせな!』
『……。』
『?』
母さんは哀しそうな顔で口を開く。
『まだ……駄目そう?』
『……。』
僕は沈黙を貫いた……
いくら母さんでもこの件には介入して欲しくはない。
あれはもう決着が着いたのだから。
…でも。
『わかったわ、でもあれはもう終わった事なのだから。いつまでも罪悪感を抱く必要なんて無いのだから。』
『……。』
『ご馳走様でした…行ってきます。』
まるで会話から逃げるように飯を平らげ家を後にする。
『あれは…終わってなんていないんだ…』




