夜参り
恨みがある。
それは誰もが持っているだろう。
だが、その恨みを晴らすための沸点は、人それぞれだ。
「この恨み、晴らすべし……」
午前2時、近所の神社。
人型の藁人形、恨み先の人の髪の毛、そしてろうそく。
ろうそくを御神木を取り囲むように地面に三か所置き、藁人形をろうそくの頂点の本殿に一番近いところで構える。
ちょうど目の前に藁人形が来る。
そこに、五寸釘を人形の胸のところにあてがい、思いっきり金づちで打ちこむ。
そこで、恨み歌という古代の唄をうたう。
何を言っているのか分からないが、少なくても、相手を呪う歌なのだそうだ。
藁人形からは、不思議と謎の液体が流れ始める。
だが、気にせずに五寸釘を打ちつける。
三寸ほどまで打ち込むと、私は藁人形を御神木から取り外す。
「恨みは三寸、御恩は五寸。全ての恩が満ちること無し」
その日、私は恨み先の人が、急病で病院に担ぎ込まれたが、命は助かったという話を聞いた。