ミッション:プロローグ それは闇夜からやってきた
2004年5月16日―――アメリカ・ダルスーンシティ
『強盗事件発生、犯人は西通りを南方面に逃走中。付近をパトロール中の者は十分に警戒しろ。なお、犯人はHMAWを使用している』
「了解ーっと。聞いたかケヴィン? 強盗だってよ。しかもAWを持ってるだってな。俺たちに逮捕できるかっての」
夜の街の静けさをかき消すようにサイレンを鳴らすパトカーの助手席の男が、運転席の男に向かって言った。
「そんなこと言ってもよ、今西通りにいるのは俺たちだけだぜ? 応援のWWが来るまでこのパトカーで引きつけるしかないだろ。死なない程度に……」
「だよなー。 ハァ……、俺なんでこの仕事選んだんだろーな」
助手席の男が窓の外を眺めながら悲しそうな声で言った。
「ガッポり儲かるだからだろ? こっの汚職警官め!!」
笑いながら運転席の男が言った。
「ぎ、ギクッ。ナンノコトカナー」
「知ってるんだぜ? お前が押収したヤクとか流してんの」
「……上に報告は?」
「してねぇよ、したとこで一緒だ。お、あれじゃね?」
男たちの乗ったパトカーの前を5メートルはあろう大きな巨人が走っている。ちっとやそっとでは壊れない鎧みたいな装甲を身に付けたロボット、AWだ。
助手席の男がパトカーの拡声装置のスイッチを入れた。
「前のAW、止まりなさい!!」
AWは右腕に装備しているライフルをパトカーに向かって撃った。
「ケヴィン! ヤバい。あいついきなり撃ってきやがった。脱出するぞ」
男たちは間一髪で脱出したが、AWは追い詰めるように迫ってきた。
燃えさかるパトカーを背に男たちは走った。
しばらく走ったところに左右に分かれる道があった。
「おいケヴィン、ここは二手に別れよう。俺はこっちへ行く、お前はそっちへ行け。応援が来るまで持ちこたえようぜ」
「分かった」
運転席の、ケヴィンと呼ばれる男は右の道へ行った。だがこの男、かなり”ツイて”いなかった。AWは右の道へ来たのだ。
「うわ、こっち来やがった。いつも俺ばっかこんな目に……コンチクショウ」
ケヴィンは必死に走ったが、彼に悲劇が訪れた。行き止まりだ。
「くっそ、ここまでかよ」
AWはケヴィンに銃口を向けた。
「おいおい、そんなので俺を殺すのか? ひと思いにやっちまってくれよ、クソ野郎が!!」
銃口から鉛の弾が放たれた。それはまっすぐにケヴィンに向かった”はずだった”。
「!?」
甲高い金属音とともにケヴィンの前で弾が跳ね返った。まるで見えない壁があるように。
AWは2,3発と立て続けに弾を放ったがすべて見えない壁にはじかれた。
「おいおいどうなってやがる。とうとう俺も超能力を身に着けちまったのか!?」
困惑するケヴィンをよそに、見えない壁が正体を現した。それはボディーアーマーを身に着けた兵士を思わせるような姿をした銀色のAWだった。