表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

13/17

No.13


「さっきから人の家で何をしているんスか? そこのオッサンは」

「だからー、お前らなあ。ここは俺んちなの」

 後ろからはぼうっとしたリッカと、その肩を抱く深川の姿が近づいてきていた。



「やれやれ。人が集まってきてしまったな。折角人目を忍んで、こんな夜中に出てきたのに」

 ひどく楽しそうだった。

 まるで大勢の観客が入った劇場で、舞台に立っているかのように。

「人に慕われているようで、羨ましいよ」

 目の前にいるこの男は、果たしてそれを羨ましがるような人間なのだろうか。

 緑青はなおも続ける。

「本当ならもう少しデータを取って、それから引き取りに来るつもりだったけど、こうなったら都合が良い。今リッカを引き取らせてもらう」

「ちょっと待て」


 俺は、思わず声が高くなっていた。

 自分でも驚くほど大きな声だったので、今度は意識しながら声を潜める。

「緑青さん・・・・・・アンタは、あの子の、なんなんだ? リッカはアンタの子どもなのか?」

「そうだね。どういうカテゴリーに属するかと問われるならば、子どもというしかないだろうね」

「アイツはココに来た時、ほとんど感情表現の術を知らなかった。言語は堪能で、たまに俺でも驚くほどの知識を披露してくれたりはしたが、笑わなかった。おまけに、見るもの、聞くもの全てが始めてといった様子だ。アンタ、一体この子をどう扱ってきたんだ?」

 親なら、子どもに愛情をそそいで、一緒にいてやって、いろんなことを学ばせて、幸せになってほしいと願うものなんじゃないのか?

 何もない部屋で、ただただ軟禁するように無意味に育ててきたのか?


 眉を顰めたアンミツに、深川。そして肩を支えられているリッカ。

 彼らの顔を眺めてから、緑青は薄ら笑いを浮かべた。

「Avi - dobo 90716b。それが彼の名だ」

「あびどぼ、きゅう・・・・・・? アンタもしかして。子どもをナンバーで呼んでたのか?」

「そうだよ。彼は私が作った」

「ふざけるなよ、そんな非人道的な!」

 親だから子どもをどう扱ってもいい、なんて理由あるか!

 こんな無感情な奴に育つわけだよ! 今は違うけど!

 俺は自分で思っているよりも怒っているのだろう。

 血圧が上がっているのか、ずきずきと頭が痛い。

 そして俺が激昂する様子を、緑青は面白いものでも見たかのようにしげしげと見つめていた。


「彼が無感情だったといったね。そして今は感情が豊かになってきている」

 俺が頷くのを確認してから、続けた。

「それは当たり前だ。元々感情プログラムはあった。しかし、経験が足りなかったから表現の術もタイミングも知らない。フィードバック機能によって学習し、より人間らしくなっていった。今日はその学習度合いを確かめに来たんだ。そうして、どうせなら引き取ろうと、さっき信号を送ってここに呼び出した」

「ぷろぐらむ、ふぃーどばっく?」


 はてなマークが頭上に埋め尽くされているような感じだ。

 混乱してきた俺の隣にいるアンミツは、何もかも分かったような顔をして、なるほど、と呟く。

「リッカはロボットか?」

「ご明察。私のいたところではマホルと呼ばれている。人間としての感情を併せ持つ、希少なドール。私の作品だ」

 それで子どもというしかない、わけか。

「そ、でも、そんなこと、あるわけ、ないじゃん。なあ、アンミツ・・・・・・」

 口では否定しながら、声は震えていた。





評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ