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No.11


「ウチの庭って光ったのか?」

「俺が聞きたい。発光植物でも植えているのか」

「いやあ、今のところ園芸に興味ないんだよなあ。お前は? どっかの洞窟に探検しに行ってヒカリゴケとかくっつけてきたって可能性はねーの?」

 ――ない。

 素っ気無く返すアンミツの返答もそこそこに、俺の脳は乱回転していた。


 庭が不自然に光っている!

 宇宙人襲来?

 それ以前にいるのか。

 妖精のダンス?

 妖精自体存在を信じてないくせに。

 まさか流れ星が落っこちた?

 だとしたら隕石だ。光らないんじゃね?

 もしかしてレベルアップ?

 何のだよ。この世界は実は電脳世界でしたってか。

 それとも不発の爆弾でも埋まってた?

 いやいや、洒落にならないから。

 あ、なんちゃってかぐや姫でも生まれてるのかもー。

 そうだったらどうしよう。食費はかさむけど、リッカに兄弟ができていいかも。

 俺結婚してないのに子どもばかり増えていくなあ。


 でも、もしかすっとあれかも。

 異世界への扉でも開いたのかもしれない。

 やった、もう締め切りに泣かされる事はない!

 でもなあ。勇者として召喚されました。

 ドラゴン倒してください、なんて言われたら俺真っ先にやられそう。

 勇者だったらまだいいけど、魔王とかだったら一週間は落ち込むぜ。

 あ、でも部下が蛇とか蝙蝠とかじゃなくて、普通に人間タイプだったらまだ救いはあるか・・・・・・。



 現実逃避すると、人間いろいろ思いつくものだ。

 普段だったら真っ先に笑い出しそうな説が異様に出てくる。

 それを察したのか、アンミツは俺の頭に手を当てていたが、その手を額へと移動させた。

「平気か?」

「気を失っていないとこ見ると、そうなんだろうよ」

 そんな柔な神経なんぞ持ち合わせちゃいないと、自覚しているけども。

「さて、原因究明に行くか」

 ようやく重い腰を上げ、庭へと繋がっている引き戸を開けた。

 アンミツが割り込むように先に出る。

 一人で格好つけようたって、そうはいかねえ。

 横に並んで歩き出す。

 光っている方へ行くと、影絵のように立っている人影が見えてきた。

 どうやらこちらには気づいていないらしい。


「――――ッ!?」

 視界がぶれる。

 気づいた時には肩に手が回り、アンミツのほうへと引き寄せられていた。

 耳元でヒュンッと風を切る音が聞こえて、人影へと向かう。

「サンキュ」

 しかし、庇ってくれるのは嬉しいんだが何か言えよ。

 誰だって驚くよ。

 コイツらしいっちゃあ、コイツらしいんだけどな。

 口元に苦笑いを浮かべながら、肩に置かれたままの手を振りほどく。


「今のお前か?」

「違う」

 じゃあさっきの音は何なんだ。

 よく分からん。

 だから俺は、とりあえずこう言う事にした。

「そこの不法侵入者さーん、出て行ってくれませんかねえ」

「気づかれるだろ」

「気づかれるように話しかけてんだよ」

「先手必勝って言葉知ってるか」

 それくらい知ってるって。

 俺のことをどんだけ馬鹿にしてんだ。


 っつうか・・・・・・。

「なんで戦闘態勢なんだよ」

「真夜中に発光して人ん家にいるような奴が、真っ当だと思うか?」

「思わねーけど、とりあえず此処は俺んちだからな」

 一応訂正しておく。

「やあ、これは失礼」

 光の向こうから胡散臭いほど穏やかで、礼儀正しい声音。

 嫌だなあ。

 こういう時って、少しくらい人間の小ささが出てたほうがやりやすい感じがする。

 狭量だとか、ふてぶてしいとか。

 ニコニコ笑って腹の中で何考えてんのか分からない、そんな奴ほどやり難い。

「・・・・・・どちらさん?」

「預かってもらってたものを、受け取りに来たんだ」


 預かりもの。

 ここでいつもの俺ならば、ありもしない宅配便でも思い出していただろう。

 けれど、俺が真っ先に思い浮かんだのは。

 茶色がかった金髪に翠緑の瞳をもつ、ちょっと生意気な美少年の顔だった。


 ああ、ホントに。

 さよならは、いつも突然。





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