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10/17

No.10


「眠れないのか」

「・・・・・・いきなり話しかけるなよ。気配がなかったぞ、お前」

 それはすまないな、と。

 全く悪いと思っていない、いつもの無表情でアンミツは応じた。


「・・・・・・」

「・・・・・・」

「・・・・・・何か喋らないのか?」

「――え、ごめん。お前何様? いやいや、どーせ常套句だよな。『俺様だー』とかいうんだろ。もういいよ、言われる前の杖だよ。っていうかさぁ・・・・・・」

「なんだ」

 喋らないのときたから思いつくまま喋ってやったのに、一言で返しやがった。


「俺ってそんなに喋るイメージなのか、お前の中では」

「少なくとも、静かじゃない。だから、今は変だ」

 変!

 いやあ、アンタ。

 面と向かって「変」て。

 顔か、声か、DNAでしか解決できないようなレベルなのか。

 身長とかいったら容赦しねえ! お前が規格外に高いだけだ!

 思わずぽんぽんといつもなら言い返しそうな言葉は、今は出てこなかった。

 なんだか調子が狂っている。


「そうなんだろうな。酔ったらしい」

「一日中か」

「そうかもな」

 こういうヤツって苦手なんだよな。見てないようで見てるんだから。

 なんだかんだで、深川も結構鋭いし。

 何、俺って本当は分かりやすい奴なのか?

 思わず考え込んで、今度は口に出していなかっただろうかとアンミツを伺ったが、当の本人は何も言わないので、どうやら聞いてはいなかったらしい。


「おい」

「ん? アンミツ、俺はお前に何度も言っていると思うんだが、人を呼ぶときに『おい』だけじゃあ社会生活において支障をきたすんじゃ」

「そんな事はどうでもいい」

「んなこと・・・・・・分かった。やっぱりお前とは相容れねえ」

「見ろ」

 珍しく切羽詰ったように、アンミツの瞳が揺れていた。

 ぐい、と無理やり視線を変えさせられる。


 外だ。

 月夜の晩。

 それだけかと思っていた明るさは、どうやら違っていたらしい。

 庭が、不自然に明るかった。





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