4.紅の薔薇
お兄様たちは言葉通り、しばらく滞在してくれるようだ。今日も連携魔術の実践を空間をつくってしているのを、わたしは防護壁を築いてみていた。
(あれから、うわさはどうなったのかな?消えたのだといいんだけど・・・。これから王宮へいくことがあれば、また言われかねないし・・・)
雑念は、防護壁を鈍らせる。そのため、すぐに考えをうちけし、新たな防護壁をはる。これでよし、と。にしても、あれからシャルル殿下は何も動きがないみたいだ。もしかして、諦めてくださったのかしら―――?希望的観測はその日の午後にやぶられた。大輪のバラが我が家に届けられたのだ。
「このバラは、どなたからなのですか?お母様」
「あらぁ、フィオナちゃん。もちろん、シャルル殿下からよ。メッセージカードがついてるわね。あけてみなさいな」
「メッセージカード、ですか?あけてみます・・・。なになに、私の愛しき妖精へ、愛をこめてこのバラを贈ります――――このバラは、魔法ではありませんね?お母様。王宮に咲いているものではありませんか?」
「そうね。これは、サーディたちが詳しいのではなくて?ねえ、サーディ、シヴィル」
「そうですね。これは、王宮の中庭に咲くものです。王家からこのバラを贈る意味って知ってるかな、僕らのフィオナ」
バラを贈る意味?きょとん、と首をかしげると、くすっと笑みをもらしてからシヴィルお兄様が教えてくれた。
「このバラは、特別のもの。王家から贈られるものには、求婚の意味があるんだよ。フィオナ」
「!求婚、ですか?わたしに?シャルル殿下が?」
「僕たちもびっくりだよ。ねえ、サーディ?」
「うん、シヴィル。まさか、紅の薔薇を贈られるほど、フィオナが想われてるなんて、思ってもなかったよ」
そうだよねえ、うんうん、と頷きあうお兄様たち。かくして、わたしは今度はシャルル殿下に求婚されたものとして、王宮へむかうことになったのである。
久々の更新ですw