2.社交界デビュー
シャルル殿下の腕になんとか腕をからませ、パーティ会場に入場するとざわっ、と会場がどよめいた。
「どなた?あの御令嬢は・・・」
「知らないのか?『レンディアの癒し姫』だ。なぜ殿下とともに?まさか、将来の伴侶を決められたのか?」
「うそっ!信じませんわ、殿下にはわたくしこそがふさわしいのにっ・・・・・!」
いやー!とか、きゃー!とか、悲鳴が聞こえた。聞こえてるのよ、あなた達・・・と思いつつも淑女としての礼を完璧にこなし、会場の中央にすすむ。ワルツの音楽が流れだした。リズムにあわせ、ステップをふむ。自分がへたとは思わないが、うまいともいえないと思っていた。が、殿下のリズムを感じて踊ると、自分がとてもうまく踊れているように感じた。
「お上手ですね、フィオレンティーナ嬢。このようにうまく踊る方は初めてです」
「そのようなこと・・・殿下がうまく躍らせてくれてるのです。自分がうまいのではないことはわかっていますから」
「私がうまいというのですから、自信をお持ちください。あなたはお上手なのですよ」
「―――ありがとうございます、シャルル殿下」
少しうつむきながら、ほおが赤くなっていくのを感じた。そんな顔して微笑まれたら、誰だって赤くなると思う。また、まわりで悲鳴がきこえたが、私のしったこっちゃないぞ。パートナーと言っても、今回誘われただけなのだから。そう思ってくるっ、とターンをまわってみせると、ドレスがふわっ、と広がった。
「春の妖精みたいですわ・・・」
「本当だ、衣装とダンスがすごくあっている・・・」
「ステキですね・・・」
まわりがほう、と感嘆の息をはくのを遠くで踊りながらみる余裕すらあった。やはり殿下はうまいのだ。曲が終わり、最後の礼をお互いにとる。わっ!と拍手喝采となった。なんだか、パーティの主役になったような気分。シャルル殿下に腕をとられ次の曲がはじまる前にフロアの隅にくると、すぐに令嬢方に囲まれた。
「シャルル殿下!この方とはどういうご関係ですの?」
「私も知りたいです!この方をパートナーとしてお連れになった理由はなにか、教えてくださいませ!」
「お願いします、殿下!」
令嬢方はぎらぎらした目つきで私を見ていた。それはそうだろう、いくら公爵家のひとり娘とはいえ、まだ12歳。殿下のお相手としてみるのは、納得がいかないのだと思う。少しずつ距離をとろう、と離れようとしたら、手をとられ、手の甲に口づけられた。
「―――この方は、私が心を奪われた唯一の女性。私の春の女神なんです」
ちょっとまった――!なんてことを言うんだ、殿下。手を放したくとも、つかまれている力が強く、ふりほどけない。令嬢方はまたもや、悲鳴を上げ、中にはふらふらと倒れたりも。お母様、いいこととはこのことだったのですか―――?この発言により、私はいち貴族の令嬢から、世継ぎの王子の想い人として、一躍時の人となったのである。