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賑やかな女の子達

作者: WAIai
掲載日:2026/08/20

土曜日の午前中、車掌は忙しい時間が終わり、ゆったりと電算に揺られていた。

ここからは穏やかな日光とともに、リラックスできる時間帯で、乗ってくる客も少なかった。

もう外を見れば、稲穂が黄金色をしており、1早く新米が食べたいなと考えていると、キャキャと明るい声が聞こえてくる。

ーん? 何だろう?

車掌ひ不思議に思い、近づくと、ボールが転がってくる。それは野球のボールよりも大きく、車掌は優しく受け取ると、人の気配がする。

「ーすみません!!」

若い娘だった。

年は10代後半くらいだろうか。

制服姿で、スカートが短く、いい脚をしているなど感心する。

若さが眩しく、目を細めると、ボールを差し出す。

「これ、君の?」

「そうです!! 手で持って遊んでいたら、転がっちゃって…。ごめんなさい」

「いや、いいけれど…。これ、何のポール?」

「ソフトポールです。これから学校に行って、練習しようと思って」

「練習…。なるほど」

キャキャとまた声がしたので、そちらを見れば、3人組が遊んでいるようだった。

皆、ジャージでも入っているのか、大きなバッグを持っており、仲が良さそうだなと感想をもつ。

ー10代の頃は学校が遊び場みたいなものだからな。

懐かしさを覚え、車掌はボールを取りに来た女の子に渡す。

「大事にしなよ。あと練習、頑張って」

「はい!! ありがとうございます!!」

女の子はぺこりと頭を下げると、仲間のところに戻ろうとして、振り返ってくる。

「車掌さん」

「何かな?」

「良かったら、あたし達と会話をしませんか?」

「は? 俺が君達と…? 何で?」

そう言いつつ、実は女子高生と話がしたいと思っていた。

下心があるのは嫌悪する人もいるかもしれないが、滅多に会えないので、加わりたかった。

「駄目ですか?」

「いや、少しだけなら話をしてみたい」

「本当ですか!! やったあ!!」

女の子は跳ねて喜ぶと、仲間のところに小走りに行く。

「あのね、あのね」

皆が車掌に目を向けてくる。

車掌は照れくさそうに「う」と思う。

しかし次の瞬間には、「車掌さん、車掌さん!!」と呼ばれ、手招きされる。

ー10代は怖いものがないからな。

自分は今、20代だが、社会に出て色々と揉まれ、純粋な明るさをもっていなかった。

たがら猫に懐く猫みたいに、ふらりと女の子達の前に行く。

「どうも。それで何を話せばいいのかな?」

「はーい!! 彼女はいるんですか?」

「ちよ、ちょっと、性急過ぎるわよ。失礼でしょ」

「そう? 1番、気になるじゃん。聞きたいでーす!!」

「彼女は…その、今はいないけど」

数ヶ月前に、辛い別れをしており、思い出したくなかったのだが、嘘をつくつもりはなかった。

1人になって淋しかったが、彼女達の明るさに救われ、逆に聞いてみる。

「君達は彼氏いるの?」

「はーい。います!!」

「馬鹿!! こういう時はいないって言うの!!」

「えー。あ、そうか。車掌さんに失礼だもんね」

「そうそう。あたしはフリーです」

「私も」

4人の目が一気に車掌に襲いかかってきて、心をえぐられるような傷みを感じる。

しかし、不快ではなく、この頃の恋愛って言ったら…と思い出そうとする。

ー初恋の人とか、その、初めて身体を求めるとか、そんな時期だもんな。

異性を強く意識する時期で、車掌も淡い記憶に浸る。

「彼氏は大事にしなよ」

「はーい!! 1番、大事です!!」

あははと明るい笑いは、その場の皆を引きずり、笑顔が浮かぶ。

「練習試合とかあるの?」

話を変えてみると、女の子達が一斉にうなずく。

「近々、他校の人達が来る予定です」

「そう。それは楽しみだね。一般人も見に行けるの?」

「え…。どうだろう? どう、皆」

1人が聞くと、皆、首を傾げたりするが、車掌はチャンスとばかりにスマホを取り出す。

「君達、面白い娘だから、連絡先を交換しないか?」

「え、連絡先…。どうする?」

4人は顔を見合わせたが、すぐにポールを拾った子がスマホを取り出す。

「はい、これがアドレスです。あたしのだけでいいですか?」

「もちろん。えっと…」

車掌がスマホを操作し、互いに連絡先を交換する。

「たまには連絡してもいいかな?」

「いいですよ!! もちろん!! ね、皆?」

「うん。車掌さん、真面目そうな人だし…。私達も交換する」

「ありがとう。じゃあ、えっと…」

「あたしも!!」

結局、4人全員とアドレスを交換することになり、車掌はほくほくと満足だった。

「何か聞きたいことがあったら、すぐに連絡してくれ」

「分かりました!! やった、すごい人とアドレスを交換しちゃったよ」

「すごいね、やった!!」

「進路のこととか相談してもいいですか?」

「いいよ。何でも。これでも君達の先輩だから」

胸を張って応えると、車掌はスマホをしまい、4人組に言う。

「じゃあ、俺は仕事に戻るから。練習、頑張って」

「はーい!!」

4人は声を合わせると、手を振ってくる。

それに応えると、車掌はその場を離れる。

しかし早くではなく、なるべく彼女達の声が聞こえるように、ゆっくりと歩いて行く。

ーやった!! 女子高生と知り合いになれた!! まだひねくれたりしていないから、お付き合いになりたいな。

ふふと1人で笑うと、車掌は真顔になり、歩き出したのだった。


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