表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
10/22

第9項 偶然の消失

翌朝ー



「今日は遂に、公国内部に踏み込むんだな!」


「市街戦と聞いてるが、公国の民たちは避難しているのか?皇帝陛下は市民には手を出すなと仰ってるが、流石に戦場で咄嗟に判断するのは無理だぞ」


「そうだよな〜。ったく、陛下も無茶言ってくれるぜ」


食堂では、数多くの兵たちが雑談と共に食事を取っていた。


「おいおい、流石にそいつは不敬だろ。まあ、お前らの気持ちは分かるけどな。そこ、ちょっと通らせて貰えるか?」


金髪の無頼漢が、話をする二人組に声を掛ける。


「タ、タデリア中将!」


「申し訳ありません。失言でした。」


おずおずと席を引き寄せ、道を開ける二人 。


「ああ、いいよいいよ。〝皇帝陛下〟には、俺もさんざん不敬なこと言ってるしな。

あ、お前この首飾り落としてたぜ。キレイな緋色してんじゃねえか。」


「あ、ありがとうございます。恋人との思い出の品で、なくしたらどやされちまうとこでした。」


タディが差し出した菱形の首飾りを、口が悪い方の兵士がはにかんで受け取る。


「あともう一つ、俺のことはタディと呼んでくれ」


タディは頷きニカッと笑うと、食堂の奥に進んでいった。


「やっぱ、噂通り平民っぽいよな。タデリ...タディ中将。」


「その割には、皇帝陛下と随分親密な間柄のようだ。しかし、俺は少しタディ中将の認識を間違っていたらしい。」


「だよな、俺も思ったよ。戦場では鬼神のようだと聞いていたから、どんな恐ろしい人なのかと思ってた。」


「〝災害の化身〟だからな、あの人は。一度手合わせ願いたいものだ」


「止めとけって、死ぬ気か。お前!」




リズが最後の食器を空にし、9枚目の皿を机に積み上げた時だった。


「よっリズ!隣、いいか?」


タディはリズが口を開く前に既に腰を下ろしていた。


「今丁度、食べ終わったところだ。席を譲るから、君一人で広々と使えばいい。」


「ちょ、待てって!」


言い終わるなり席を立とうとしたリズを、タディは引き止めた。


「お前に話があるんだよ。ほら、もう一皿貰ってきてやったから!」


リズはタディが指さした皿に視線を移す。野菜、パン、そして干し肉。質素だが魅力的な品々に、ゴクンと喉が鳴った。


「5分だ。」


再び席に腰掛けると、リズは開いた掌をタディに突きつけた。


「ぷっ。...へいへい。」


吹き出しかけたタディは、リズからの視線を感じて口を噤む。


「昨日の夜の事で、お前と話したくてな。」


一つ呼吸を挟むと、タディは言った。


「話はもう済んだはずだが。」


口に干し肉を詰め込みながら、リズが応える。


「ーー俺はさ、昔からお前が羨ましかった。賢くて、冷静で。でも迷わずに進んでいく。」


タディはそう言ってリズの頭を撫でようとする。リズはタディの方へ向き直ることなくそれを躱し、皿から溢れかけた野菜をフォークでキャッチして口へ運ぶ。

タディはそれをみて苦笑するが、次の瞬間に笑顔が消えた。


「だが、今になってお前が怖いよ。

お前は、理想実現に自分が摩耗することを織り込んで戦ってる。何の恐怖も感じねえみたいに。

お前は以前俺に忠告してくれたけどさ、俺はお前がこのままだと一番死にそうで怖いよ。」


リズは最後に残していたパンを飲み込むと、席を立ち上がった。


「私がこの戦争に参加したのは、この世を生き延びるためだ」


タディはそんなリズの台詞に深くため息をついた。


「言っとくが、俺は反対だからな。お前、さっき俺が近づいた時振り返らなかったろ。いつもは近づくどころか、部屋に入る前に誰が来るか察知してんのに。」


リズはそのタディの問いには答えず、短く呟く。


「あくまでも〝勘〟だ。リートニッヒも言っていただろう。事実じゃない。」


タディは諦めたように頭を振ると、リズの肩に手を置いた。


「じゃあ、戦いが終わるまで俺の側で戦え。目の届かない場所で一人死ぬな。」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ