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8.悔しさをバネに

 私は300万円も懸けてレーザーディスクを作った。しかし、8トラの時と同じように殆ど使われずに御蔵入りとなってしまった。自費制作のレーザーディスクを掛けられる店が無くなってしまった。

 私と、Sさんと周りの10人ばかりが楽しんでいた期間は半年もなかった。Sさんは酒を飲みながら、悔しさをにじませて映画製作を提案した。私も酒の勢いで同意した。

 私達は200人を集めてクリスマスパーティを開いた。もはや200人と言う人数は通常のイベントになっていた。いろいろ悔しい思いもしたが、レコード作りは集客力には効果があった。

「来年は映画を作ります。中国ロケをします」

舞台の上からマイクを持って、私は映画製作を宣言した。

この時は未だ、映画がいくらで出来るのか、そもそも中国ロケができるのか全く知らなかった。只、中国には何度か旅行に行った経験があった。1989年12月の事であった。この年の6月、天安門事件があった事は頭からすっかり抜けていた。私の後日書くシナリオには、あらゆる人種の集まるダンシングフロアーのシーンがあるのだが、事件の後、海外旅行者が消えていたことを知らなかった。

私は作詞、作曲など数年前までしたこともなかった。音楽界にも無縁、芸能界にも無縁、勿論、映画界にも無縁であった。一介の不動産屋が「中国ロケをする。映画を作る」と宣言したのだが、パーティ参加者の誰も驚かなかった。


 映画会社とコンタクトが取れた。  

「あらすじを送って下さい」

 私は1日であらすじを書いてファックスした。歌詞を書いた経験が役に立った。

 翌年の初出の事務所に、返事の封書が年賀はがきの束に混ざって届いていた。

<検討しましたが、これはプライベート・フィルムとなります。子会社の製作になります。製作費は3億円です。詳細シナリオは600万円です>

 私は高いとも安いとも思わなかった。全く比べる為の知識が無かった。しかし、<もし2億円で製作すれば1億円の儲けだな。自分でシナリオを書けば600万円の儲けだな>と思った。

 私にはレーザーディスクのシナリオを書いて撮影に立ち会った経験がある。歌は4分で出来ている。25倍すれば映画になると思った。

その頃、不動産業は法人になっていた。それほど儲かっていた会社ではなかった。しかしこの映画作りの勢いで2人、人数が増えていた。映画作りをする風変わりな不動産屋として社員は楽しく仕事をした。

「映画製作費の足しにして」と言って、優良情報がたくさん届けられた。こうして映画製作費は難なく作られた。本業は全て社員に任せ、私は映画に没頭した。

 私は映画監督となり、中国側と折衝し、主題歌の作詞、作曲も手掛けた。

 3か月、シナリオ書きに専念し、5か月撮影に専念し、3か月編集に専念した。1か月上映会を開くために専念し、年末に上映会を700人集めて成功させた。宣伝効果は抜群であった。素人監督、自主映画、中国ロケ等の単語が新聞を飾った。

 全てが上手く行っていた。

ところが、又しても妨害される出来事が起こった。私は映画製作に没頭していた為、全く実感がなかったのであるが、バブルが弾け、4月から不動産は全く止まっていたのだ。テレビで総量規制の報道を見て予想はしていたのだが、幸か不幸か私は中国か編集室内にいて、その後の経過を知らなかった。

映画製作のドンチャン騒ぎが終わってみると、事務所には金もなく、することもなかった。社員に払える給料もなかった。融資は完全に止まっていた。社員は全員辞めてもらった。全く天国から地獄状態だった。


中国からの映画上映の許可が届いたが、それに報いる力が残っていなかった。

中国テレビから放映の誘いが来た。

「吹き替えは中国側がするので、先生は許可を与えるだけで良いのです」

私は200万円を要求した。ところが日本円の200万円は中国では2億円に相当する。私はうろが来ていた為、そのことに気が回らなかった。

中国テレビ放映の話は流れた。


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