2.作詞、作曲の世界に踏み込む
私は素人の為のレコードを作ると宣言した。何から始めれば良いのか考えた。それはプロの世界に頼むことではなさそうだ。それでは素人の作詞家と素人の作曲家に頼むのが良いと考えた。
そんな人はいるのだろうか?
私はアンテナを張った。するとある会社の経理課長をしている作詞家を紹介された。私は経理課長とスナックで会った。「本気にしないでよ」と言ったママのスナックだ。
「このママに歌って貰うので詞を書いてほしい」
「何か歌って貰えますか?」
ママは持ち歌を歌った。ハスキーな魅惑的な声だ。素人とは思えない巧さである。
「お上手ですね。ママに合った詞を2曲書きます」
それは全く作詞家の先生の威厳のある言葉であった。
1週間後、2曲の詞が郵便で届いた。
「上手いな、さすが2年連続で作詞コンクールに優勝しただけある」
私は心の中で呟いた。素人と言ったら失礼なのかも知れないと思った。
「次にどうする?」
全く思いつかないので作詞家に頼むことにした。
「先生の知り合いで作曲家いませんか?素人の為のレコードなので、素人の作曲家と言う縛りでお願いしたい」
「分かりました。知り合いに2曲分のメロディを依頼します」
1週間後にデモテープが郵送された。私は社員にカセットデッキを買いに行かせ、3人で聴いた。良いのか悪いのか、全く分からなかった。それはカラオケではない。エレクトーンか何かで主旋律だけを奏でたものであった。私達はそのことも知らなかったのである。音楽の事は全く無知であった。
プロのレコード会社を見つけ、デモテープを持ち込み、意見を聞いた。
「十分、レベルのある作品です。でもプロの世界でも何が流行るのか作ってみないと分からないです」
「いくら位かかりますか?」
「2曲分の作曲、編曲、カラオケ・デモテープ作成までで100万円、歌手のレッスン、レコーディング、歌入りデモテープ作成まで100万円、レコード1000枚、カセットテープ100個、8トラ30個セットで100万円です。レコード1000枚のうち300枚はこちらで有線放送に配ります」
大変な誤算だ。
「スポーツ新聞の広告でレコード20万円よりとなっていましたが?」
「それはオモチャです。歌好きな人が歌ったものを記念品としてレコードにするだけです。社長の場合、本格的なプロの世界に通用するものでないといけません。又、そのレベルにしないと当社の信用にかかわります」
私は「300万円、300万円」と言い聞かせながら1か月間、デモテープを聞き続けた。ふと考えた。私は何のために300万円つぎ込もうとしているのだ。酒の席上で約束したことを果たすために、300万円は高すぎる代償だ。
「せめて、1曲は自分の作詞にしよう。そうすれば自分の曲として納得できる」
私は古本屋で<カラオケ1000曲>の歌集を買い、1通り目を通した。そして、生まれて初めて作詞に挑戦した。詞は1日で出来上がった。
「この後どうする?」
私は小学生の時、音楽は2であった。譜面は読めないし、書けない。せめて口ずさんで作曲者に依頼しようと考えた。




