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【魔力ゼロ】と嘲笑されて男爵家を追放された私。――実は、この偽りの世界を修復する『古代の究極魔法』を使える唯一の器でした。  作者: ノンカロリー


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一〇秒の限界と球体の岩

 ハスクはアルカに教えてもらった通り、周囲の闇に満ちるマナを意識で感じ取り、体内に吸収した。そして、アルカの指導に従い、マナを手のひらに集束させる。初めての試みにもかかわらず、ハスクの掌はかすかに発光し、米粒ほどの小さな光の球体ができあがった。


「できたわ!アルカ、見て、私、才能があるみたいね」


 ハスクは成功に喜びの声を上げた。マナを扱えたという事実が、長年【欠陥品】として虐げられてきた彼女の心に、生まれて初めての達成感を与えた。しかし、アルカはそれをデータとして処理し、感情的な反応は示さない。


「その工程は、マナ運用における貯蔵領域の確認だ。最低限の合格だ」


 ハスクの喜びを切り捨てるように淡々と告げると、アルカはすぐに自らの右手を開いた。彼の掌には瞬時にマナが集束する。それは一瞬で成長し、サッカーボールほどの大きさに達した。濃密な光を放つその球体は、洞窟の暗闇を圧倒的に照らし出した。


「これだ。この容量と密度で、ようやく二〇パーセントの出力だ」


 アルカはその完璧な球体を維持しながら、ハスクに青い瞳を向けた。


「貴様のものは、一パーセントにも満たない」


 ハスクは、自分が先ほど大喜びしたことを激しく後悔した。自分の米粒ほどの光と、アルカの巨大なマナの塊との間にある、埋めがたい性能の差を突きつけられたのだ。


「次の課題に進む」


 アルカはハスクの動揺を無視し、すぐに本題に戻った。彼が今必要としているのは、ハスクの体力回復と長時間歩いても疲れない身体強化を可能にする、マナの高度な運用だ。手のひらにマナを集中させるのは、言わばウォーミングアップにすぎない。


「体力回復と身体強化は、手のひらという一点でなく、全身という前面にマナを均等に集めなければならない。容量ではなく、均一な面を意識しろ。成功すると、全身がほのかに発光する」


 アルカはすぐに手本を見せた。彼は瞬時に、全身にマナを展開する。細身の体が、まるで光の膜に覆われたようにムラなく発光した。


「この状態こそが、マナによる最適化(オプティマイズ)プロトコルの発動状態だ」


 ハスクはすぐに挑戦した。全身の細胞にマナを広げるイメージだ。しかし、一時間ほど集中しても、結果は伴わなかった。ハスクの体は部分部分が不均一に発光するだけで、全身を均等に覆うことはできない。これは面でなく点が複数になっただけの失敗である。


「駄目だ。貴様の生体プロセッサは、一点集中は最低点の成功を示したが、広範囲への均一な展開という複雑な命令を処理できていない」


 アルカは冷徹に分析し、ハスクの疲労と集中力の低下をデータから読み取った。


「この課題は簡単にできることではない。今回は体力の回復は断念し、一時休憩を推奨する」


 ハスクもこれ以上の集中は無駄だと悟り、アルカの提案を了承した。



 休憩後、アルカは足だけの身体強化という次の課題を提案した。


「全身を強化しないと、内臓などに負担がかかり体力は低下するため、本来の意味はない。だが、足の筋力だけを強化しても、歩行の負荷は軽減できる」


 ハスクは両足だけにマナを集めるイメージに集中する。先ほどより面積は少なくなったが、それでも均等な面を意識するのは難しく、すぐには成功しない。


 そして三〇分後、ハスクの両足だけが、均一な光の膜に覆われたように発光した。


「できたわ!やった!」


 ハスクは喜びで飛び跳ねたが、アルカは冷静な視線を崩さない。


最適化(オプティマイズ)プロトコル、足部のみ発動を確認」


 アルカは無感情に評価を述べ、すぐに本題に戻った。


「これは下準備だ」


 アルカの要求は、マナ集束の速度だった。ハスクは足にマナを集束させるのに一分ほどの時間を要している。


「この速度では、戦闘はもちろん、敵からの緊急回避にも間に合わない。遅くとも一秒で集束を完了しなければ、運用する意味がない」


 ハスクは必死にマナの集束速度を短縮しようと試みたが、一〇秒への短縮が限界だった。これ以上短くしようとすると、マナの制御が破綻してしまう。


「マナの運用習得にはまだ時間が必要だ」


 アルカはそう結論づけた。結局、ハスクはマナによる身体強化なしで、再び洞窟を進むことになった。一時間ほど歩くと、洞窟の通路は突然途切れ、彼らは大きな岩のある空間に辿り着いた。その岩は、自然の岩盤を削ったものとは明らかに異なっていた。凹凸の無い、完璧に磨かれた巨大な球体であった。マナの松明の光が、その滑らかな表面に反射する。


 球体の岩は、通路を完全に塞いでいる。これ以上進む道もない、行き止まりだった。


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