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【魔力ゼロ】と嘲笑されて男爵家を追放された私。――実は、この偽りの世界を修復する『古代の究極魔法』を使える唯一の器でした。  作者: ノンカロリー


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最低の治癒と新たな生命反応

 リーネが、創定(そうてい)の力でウサギのステーキを生成すると、その代償はすぐに訪れた。彼女は力尽きたようにその場に倒れ込み、ハスクはすぐにその元へ駆け寄る。


「リーネちゃん、大丈夫!」


 一方、アルカは冷静にリーネを分析した。


「分析完了。魔力ぎれだ。魔力の回復は時間の経過とともに回復する自然回復しかない。しかし、魔力を消費する際に体力も消費する。体力の消費は回復魔法で回復が可能だ」


 アルカはハスクに命じる。


「貴様の回復魔法でリーネの体力を回復してあげろ」


 ハスクは緊張した。彼女はまだ一度も回復魔法を成功させていない。しかし、矢の構築魔法を成功させたことで、マナの制御には自信が生まれていた。ハスクはすぐさま、全身のマナを集束させ、プロトコル(論理命令)を構築する。彼女は強く心の中で、アルカに教えられた回復プロトコルをマナに命令した。


「【|VITA-ADJUVO《生命の補助》】」



 アルカはハスクの魔法を解析する。


 「回復魔法の構築は成功。しかし、マナ凝縮度は一〇パーセント。回復魔法と呼ぶには最低基準だ」


 リーネはハスクの回復魔法で意識を取り戻し、すぐに謝罪した。


「ごめんなさいなの」

「気にしなくてもいいのよ。馬車へ戻ってゆっくりと休みましょ」


 ハスクは優しく慰める。


「体力一〇パーセントの回復、魔力は〇パーセントから変化なし。体力と魔力の回復のために起動を停止することを推奨する」


 アルカは淡々と判断を下す。


「わかったの。馬車で休憩するの」


 リーネは素直に二人の意見を聞き入れた。



 馬車は三人を乗せ、道とは呼べない獣道をゴトゴトとゆっくりと進みだす。どこで追手に遭遇するのかわからない。アルカは馬の負担を最低限に抑えるよう、無駄なリスクを排除した道なき道を選んで馬車を走らせた。


 日が沈みかける頃、彼らは巨大な山の麓付近に辿り着いた。


「山を越えるのは明日だ。だが、道は確認する必要がある」


 アルカは馬車を止める。


「そうね、山を越える道を見つけてから馬車で一泊しましょ」


 山を越えるにはきちんと舗装された正規ルートを通る必要がある。アルカは道を逸れて麓近辺まできたため、正規ルートを確認する必要があったのだ。二人の会話を聞いていたリーネが、ふと声を上げた。


「人の声が聞こえるの」

「え!何も聞こえないわ」


 ハスクには、風の音と、風で揺らる木々の音だけしか聞こえない。


「リーネの言っていることは事実かもしれない」


 アルカはハスクの言葉を否定する。


「かなり遠いが、小型跳躍体などではない、もっと大きな生命体の反応を感知した。この距離ではこれ以上のことは感知できない。馬車を降りて確認する必要がある」


「危険よ!」


 ハスクはアルカの提案を止めた。


「人間族が居るということは、そこに道がある証拠だ。それに、追手の思考プロトコルを分析すれば、山へ入る道で待ち伏せするのは常套手段だ。現状をきちんと把握して対策を立てる必要がある」


 アルカの正論にハスクは納得した。


「アルカの言う通りね。でも私も付いていくわ」


 ハスクは、アルカ一人の責任を委ねることを良しとしなかった。


「私も行くの!」


 リーネも強い意志を示す。アルカは二人の意思表示に感情的な反応は示さず、冷徹に分析した。


「分析完了。人間という生物は『ついて来るな』と言っても付いて来る。ならば自己責任で行動しろ」

「アルカ、融通が利くようになったのね。うれしいわ」


 ハスクは笑みを浮かべて喜ぶ。


「うれしいの」


 リーネも素直に喜んだ。


 ハスクは、アルカ一人に全て任せてはいけないという責任感で、リーネは一人になる孤独が嫌で、アルカに付いて行くと決めたのだ。

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