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【魔力ゼロ】と嘲笑されて男爵家を追放された私。――実は、この偽りの世界を修復する『古代の究極魔法』を使える唯一の器でした。  作者: ノンカロリー


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四属性の開花と万能の器

 ハスクが驚愕の念に囚われる中、リーネは自分が成功した事実に無邪気に大喜びし、すぐにアルカへとおねだりするように懇願した。


「違う属性を試してみたいの!」


 リーネは最初の試みで、すでに絶禍(ぜっか)の攻撃形態を容易く使いこなしていた。その後の狩りでも、彼女は数分の間に氷の矢で五匹のウサギを仕留めて一度のミスも犯さなかった。アルカはリーネの異常なまでの習熟速度を解析していた。


「貴様の言うことは正しい」


 アルカはリーネの提案を重く受け止め、冷静に告げた。


 「私は憶測で貴様の属性は絶禍(ぜっか)だと判断してしまった。しかし、全属性を試すのが合理的だ。それでは次は威圧(いあつ)を試すぞ。威圧(いあつ)とは、自身の肉体や物質の硬度を極限まで高める魔法、すなわち巨人族が得意とする剛体錬成魔法ごうたいれんせいまほうの根源だ。威圧(いあつ)の基礎は、自己強化だ。まずは小型跳躍体を狩るための身体強化を試す。自分の筋力を強化し、素早く動いて小型跳躍体を捕獲しろ」


 アルカは、マナを使った威圧(いあつ)のお手本を見せた。


「私は全身にマナをまんべんなく広げてマナの膜を纏った感じをイメージする。そして、その膜が体の細胞に溶け込み、肉体の機能が向上するようにマナに命令するのだ。貴様の場合は、魔力を全身に張り巡らさせて、魔力によって体が強くなったことをイメージするのだ」


 アルカはリーネの幼い感性を考慮した。


「たとえば、自分が足が早く、怪力で、堅い皮膚をもつ化け物になったと想像すれば良い。魔力はイメージだ。そのイメージを貴様の体で具現化するのだ」


 アルカはマナを使って全身の強化をした。見た目の変化はほぼないが、リーネには化け物になったと説明した。


「やってみるの」


 リーネは目を輝かせ、アルカの説明を信じて自分が足が早く、怪力で、堅い皮膚を持つ化け物をイメージした。リーネの見た目に全く変化はないが、体内で魔力が激しく流動していた。


「すごく体がかるくなったの。力もみなぎるの!」


 リーネはウサギを見つけると、瞬時に加速し、ウサギを追いかけた。ウサギはリーネの駆ける音に反応して逃げ出した。しかし、リーネの素早さはウサギの俊敏さを圧倒した。


「捕まえたの!」


 リーネはウサギを簡単に捉えることに成功した。


 アルカは解析結果を口にした。


「貴様は二属性、いや、推測で判断はだめだ。残りの属性を試すぞ」


 アルカは立て続けに次の属性を指示した。


「次は脈動(みゃくどう)を試すぞ。脈動(みゃくどう)とは、生命エネルギーの流れと再生を司る魔法、すなわち獣人族が得意とする生命回帰魔法(せいめいかいきまほう)の根源である回復魔法だ。しかし残念ながら、狩りに回復魔法は役にはたたない。しかし、貴様の得意属性を見極めるために試す必要がある。幸いにもマナの運用で体力を低下させたハスクが良い実験材料になる」


 アルカはハスクを見つめる。


 「リーネよ、効率の悪いマナの運用で体力を低下させたコイツの体力を回復させてみろ。貴様は二属性の魔法を一度の失敗もなく完全に発動させた。もう私の手本は必要ないだろう。コイツが元気になっている姿をイメージしろ。そうすれば、コイツの体力は回復する」


「はいなの」


 リーネは元気よく返事をした。リーネがハスクが元気になる姿をイメージすると、ハスクの体がキラキラと輝きだした。


「リーネちゃん、すごいわ。私、すこぶる元気になったわ!」


 リーネはいとも簡単に回復魔法も成功させた。


「解析完了。脈動(みゃくどう)も成功。残るは一つ」


 アルカは淡々と告げる。


「最後は創定(そうてい)だ。創定(そうてい)とは、物質に新しい法則や性能を創り定める魔法、すなわちドワーフ族の極限付与魔法(きょくげんふよまほう)の根源である付与魔法だ。付与魔法は防具や道具の作成に最適な魔法だが、料理という一風変わった使い方もできる便利な魔法だ。今、貴様の目の前には捕獲した小型跳躍体がいるだろう。この小型跳躍体をこんがりと焼いたイメージをするのだ。たとえば、手のひらサイズの力強い焼き目、ハーブが香る、しっとり淡い赤身のステーキをイメージするのだ」


「はい」


 リーネは頭の中で淡い赤身のウサギのステーキをイメージした。すると、目の前のウサギが光につつまれると、手のひらサイズの力強い焼き目の、ハーブが香るしっとり淡い赤身のステーキに変化した。


「解析完了。貴様は全属性を使える万能型だ」


 アルカは冷徹に結論づけた。ハスクは、その驚異的な才能を目の当たりにして歓喜と嫉妬と羨望の気持ちがごちゃまぜになった。

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