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【魔力ゼロ】と嘲笑されて男爵家を追放された私。――実は、この偽りの世界を修復する『古代の究極魔法』を使える唯一の器でした。  作者: ノンカロリー


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最低値の魔力と万能の才能

 アルカは冷たい視線でリーネを見たまま、解析を始めた。


「分析完了。貴様の魔力量は、全ての種族で最低値を確認。しかし、魔力を運用するのに機能的な問題はない」


 アルカのデータには、何者かに改造された人間族の魔力量に関するデータは存在しない。彼の評価基準は、あくまで人間以外の種族と比較した上でのものだった。ハスクはアルカの分析を聞き、リーネが落胆しないようにと、すぐに優しく声をかけた。


「リーネちゃん、魔力量イコール魔法の才能ではないわ」


 ハスクが知るこの世界の魔法の常識では、「魔力量=魔法の才能」である。それは、ハスクがリーネにかけた優しい嘘だった。


「うん、私、がんばるの」


 リーネはハスクの言葉を信じ、真剣に頷いた。


 アルカは、いよいよ古代の魔法の知識を開示した。


「貴様たちが現在扱う魔力は偽りの力だが、古代の魔法では創定、脈動、威圧、絶禍という四つの根源的な属性が存在する」


 アルカは、一つ一つその概念を告げていく。


創定(そうてい)とは、物質に新しい法則や性能を創り定める魔法。脈動(みゃくどう)とは、生命エネルギーの流れと再生を司る魔法。威圧(いあつ)とは、自身の肉体や物質の硬度を極限まで高める魔法。そして絶禍(ぜっか)とは、圧縮されたエネルギーを一気に放出する、破滅的な攻撃魔法だ」


 アルカはリーネに問う。


「リーネ、貴様は何から試したい」


 リーネはアルカの説明が難解すぎて理解できず、困った顔で黙り込む。リーネの気持ちを察知したハスクは口を挟んだ。


「アルカ、魔法と言えば攻撃魔法よ。最初は絶禍を試してみようよ」


 アルカはハスクの提案に同意した。


「わかった。最初は絶禍(ぜっか)の基礎である攻撃形態を試してみよう。絶禍(ぜっか)には、灼熱、極凍、真空、圧壊の四つの基本形態が存在する。貴様の魔力をイメージして、この形態に変化させるのだ」


 アルカは、リーネの理解を促すため、続けて説明した。


「灼熱は、あらゆる物質を焼き尽くす終焉の炎。極凍は、生命の動きを止める絶対零度の冷気。真空は、空気そのものを消滅させる空間の強制的な操作。そして圧壊は、物体を内側から押し潰す力の凝縮だ」


 アルカは、狩りに最も適している形態を論理的に選定する。


「狩りに適しているのは、静かに獲物の動きを封じられる極凍だ。リーネ、極凍すなわち氷の矢をイメージし、その矢がウサギに突き刺さる場面を心の中で描くのだ。そうすれば、氷の矢が貴様の体から放たれるだろう。そして、マナによる魔法は、マナへの忠実な指示(プロトコル)だ。それに比べて、魔力魔法は明確なイメージだ。そのうち慣れれば、イメージせずとも反射的に発動できるようになる」


「さぁ、リーネ、氷の矢をイメージしてウサギに当ててみろ」


 しかし、リーネは氷の矢をイメージしろと言われても、どのようなイメージをすればよいのかわからずに険しい顔をする。



 その様子を見たハスクはアルカに声をかける。


「アルカ、リーネには難しいと思うの。まずはアルカがお手本を見せてよ。そうすればリーネもイメージしやすいと思うのよ」


「了解」


 アルカはハスクの提案を受け入れる。


 「私はマナを使って氷の矢を放つが、魔力の仕組みを理解する上での参考にはなるだろう。リーネ、私の魔法を目に焼きつけ、心に刻め」


「はい!」


 リーネは元気よく返事をした。


 アルカはプロトコルを必要としない。アルカはウサギを見つけると、優雅な動作で手を伸ばし、親指を立て、人差し指を伸ばして手を銃の形に見立てる。アルカは人差し指でウサギに標準を合わせると、人差し指にマナを集め、氷の矢を作成し、瞬時に氷の矢を放つ。氷の矢は無音で一直線にウサギを捕えた。


「すごいのです!」


 リーネはアルカの見事な魔法を見て大声で叫ぶ。


「アルカ、どうして人差し指を伸ばしたの?」


 ハスクはアルカの手の形が気になっていた。


「標準を絞ると命中率が格段に上がるのだ」


 アルカは冷静に答える。


「え!私そんなの聞いていないわよ!」


 ハスクは自身のマナ訓練でアルカがこのような実戦的な技術を教えていなかったことに驚く。


「貴様にはまだ早い。まずは魔法が正確に発動できることを考えろ。それに、今はリーネの練習だ」

「そうね。リーネちゃん、今のでイメージできるかしら」


「うん、やってみるの」


 リーネはアルカの動作を完全にコピーした。


 リーネはウサギを見つけると、アルカのマネをする。リーネは手を伸ばして親指を立て、人差し指を伸ばして手を銃の形に見立てる。そして、狙いが定まると、アルカが放った氷の矢がウサギに当たることを強烈にイメージする。


 次の瞬間、リーネの人差し指から氷の矢が生成されて、アルカが放った氷の矢よりも速いスピードで一直線にウサギに当たった。


「当たったの!」

 

 リーネはジャンプして初めての魔法の成功に大喜びする。


 アルカは冷静に分析する。


 「解析完了。威力、精度、速度、命中率、全ての項目が理論値を越える。初めての出力でこのデータは、常識から逸脱している」


 アルカは、リーネの才能が規格外の異常値であることを、冷静に示唆した。一方、ハスクは驚きを隠せなかった。自分は一週間の訓練を要したのに、リーネは魔力量が最低値でありながら、一回で魔法を成功させたのだ。


(これが、私とリーネちゃんの、才能の差……?)


 ハスクの心に広がったのは、純粋な驚愕と、底知れない羨望だった。

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