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【魔力ゼロ】と嘲笑されて男爵家を追放された私。――実は、この偽りの世界を修復する『古代の究極魔法』を使える唯一の器でした。  作者: ノンカロリー


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崩れた封印と、赤く導くもの

 昨夜、重い水桶を何度も運び、冷たい石畳を歩いた疲労が、体中に鉛のように溜まっていた。ハスクは小屋の汚れた毛布の上で、夜明け前の薄暗闇に身を沈めていた。


「ハスク!起きているな。すぐにここに来い!」


 小屋の扉を叩く音とともに、従者のリクトの甲高い怒声が響いた。今日は妹リリアの八歳の誕生日。盛大な夜会から、病死したハスクの存在を隠すためだろう。


「今日は地下室で働いてもらう」


 リクトはハスクを乱暴に地下へと続く階段へ突き飛ばすと、重い扉を『ゴトン』と閉ざした。


 地下室は、地上の喧騒から完全に切り離された、冷たい石造りの空間だった。カビと土の匂いが鼻をつく。ネズミやゴキブリが這い回り、大量に積み上げられた古文書や、錆びついた魔道具の残骸が、闇の中にぼんやりとシルエットを晒している。ここは、シュヴァルツ家の【恥】と【不要物】が廃棄される場所。そして、白い髪と赤い瞳を持ち、魔力を持たぬハスクには、最も相応しい場所だった。


 ハスクは幼い頃から、妖精と思われる小さな光が見える。しかし、そのことを両親に話すと「魔力がない上に妄想癖があるのか」と罵られた。ハスクはそれ以来、妖精が見えても見えてないふりをして、妄想だと自分に言い聞かせてきた。


 床にへたり込み、無気力に古文書の埃を払っていたそのとき、バランスを崩して、大量に古文書が積み上げられた背の高い木製の棚に身体をぶつけた。


『ガラガラッ!ドォン!』


 長年の湿気で腐食していた棚は、私の細い体当たりにも耐えられず、轟音とともに崩れ落ちた。古文書やガラクタが床に散乱する中、ハスクは動揺しながらも、掃除を再開しようと崩れた棚の破片を掻き分けた。その際、ハスクは気づかなかったが、古文書に隠されていた小さな木箱が、棚から落ちた衝撃で完全に粉砕されていた。木箱は、長年の放置により内部からすでに腐敗が進んでいたのだ。


 木箱が砕けた空間に、ほんのり赤く輝く微細な光の粒が、霧のように立ち昇った。その赤い光の粒は、床のガラクタに埋もれた隅へと吸い寄せられていく。ハスクは、光が消えた床の隅に違和感を覚え、箒の柄で叩いてみた。他の場所と違い、その一点だけが空洞のような鈍い音を立てる。ハスクは積み上げられた古文書を必死で退かし、その下から、木製の古い扉を発見した。


 赤い光は、まるで「こちらへ」と誘うように、扉の隙間へと滑り込んでいく。


『ゴトッ』


 力を込めて扉を開くと、下へと続く真っ暗な穴が現れた。湿った、さらに深い土の匂いが立ち上る。ハスクは抗い難い衝動に突き動かされ、赤い光に導かれるまま、真っ暗な穴へと足を踏み入れた。その心許ない光に頼り、冷たい石の階段をしばらく降りた先。そこには一枚の錆びた鉄の扉があった。


 扉は長年の老朽化と湿気により、カギは錆びて壊れていた。開いたわずかな隙間から、赤い光の粒は吸い込まれるように、扉の奥へと消えていった。ハスクは好奇心と不安に駆られて錆びた鉄の扉に手をかけた。


『ギギギ……』


 という耐え難い金属音を立てて扉を開けると、そこは埃まみれの、荒れ果てた研究室だった。


 ハスクの視線は、部屋の中央に置かれた、ひときわ異様な装置に釘付けになった。それは、透明な筒状の培養ポッドだった。


 ポッドの中には、一糸まとわぬ美しい少年が、まるで眠るように浮かんでいた。金色の髪に青い瞳、人間離れした精巧な容姿は、まるで神話に出てくる彫像のようだった。しかし、ポッドは上部に大きなヒビが走り、少年の右腕は、皮膚が溶け、金属の骨格が剥き出しになっていた。


 ハスクを導いた赤い光は、ポッドのひび割れた部分から中へ侵入し、少年の体へ核のように流れ込んでいった。すると、少年の体全体がかすかな光を放ち始めた。そして、閉ざされていた彼の青い瞳に、電源の入ったロボットのように人工的な光が宿った。


「起動を再開します」


 その声は、驚くほど冷静沈着で、まるで精密機械が発する電子音声のように、冷たく一切の感情を欠いて響いた。

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