表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【魔力ゼロ】と嘲笑されて男爵家を追放された私。――実は、この偽りの世界を修復する『古代の究極魔法』を使える唯一の器でした。  作者: ノンカロリー


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

16/35

執事クロノスの激怒

 昼食の時間になっても、使用人・従者用の食堂にリクトの姿は現れなかった。あの食いしん坊のリクトが食事を抜くのは異常だったが、従者の仲間たちは、怠け者のリクトがまたどこかでサボっているのだろうと、忙しさにかまけて誰も気にしなかった。しかし、夕方になっても一向に姿を見せないリクトに、さすがに怪しいと感じた仲間の従者が、執務室にいる執事、クロノス・ヴェリタスに連絡を入れた。


 時を同じくして、別の使用人から「ハスクの姿も朝から見えない」という報告がクロノスの元に届いた。

 クロノスは、三十代前半に見える、驚くほど端整な顔立ちの男性だ。その高身長で寸分の乱れもない燕尾服を隙間なく着こなす立ち姿は、完璧な紳士像を具現化している。瞳はほとんど黒に近い深い青色をしており、常に感情のない冷徹な静謐さを漂わせていた。


 クロノスはすぐに男爵の書斎へ向かった。


 ギルバート・シュヴァルツ男爵は、四十代後半だが、実年齢よりも老けて見える。過剰な飲酒と美食により腹周りには肉がつき、高価なはずの貴族服もだらしない樽のような体型を隠しきれていない。顔立ちは肉に埋もれ、丸く間の抜けた印象を与え、瞳には常に何かを怯えているような卑屈な光が宿っていた。


「ギルバート様。リクトとハスクが行方不明です」


 クロノスは丁寧な口調で告げた。


 ギルバート・シュヴァルツ男爵は、その言葉に顔を青ざめさせながら、リクトがハスクを金で買い取った経緯を説明した。


「リクトは昨夜、ハスクを連れ去るつもりだったのでしょう。彼らが共謀して夜逃げした可能性が高いかもしれません」


 クロノスは無言で男爵の書斎を後にした。彼の青い瞳は、既に不快な光を帯びていた。




 クロノスはまず、ハスクの汚い小屋を探索した。しかし、通常は油と埃にまみれているはずの部屋は、まるで不思議な力で清められたかのようにピカピカになっていた。


「おかしい」


 クロノスはすぐに部屋を調べ、床の隅にわずかなズレを発見し、地下へ続く扉を見つけた。彼は魔力で光の松明を作り出し、階段を降りた。しかし、そこは、壊れた武具や古い工具が乱雑に置かれている、ただの古い倉庫だった。クロノスは倉庫内を隈なく調べたが、ハスクやリクトの痕跡は見つけることはできなかった。


「奴らが夜逃げしたという男爵の推測は当たっているのかもしれない。しかし、何かがおかしい」


 クロノスは疑問を払拭する手掛かりを得るため屋敷に戻り、使用人と従者全員に聞き取りを行った。その結果、前日にハスクが屋敷の地下室の掃除を命じられていたことを知る。クロノスはすぐに地下室へ向かい、ハスクが古文書をどかした場所にわずかに残る微細な痕跡をたどった。そして、以前ハスクが発見した地下へ通じる扉を発見した。クロノスは再び魔法で光の松明を作り、階段を降りた。一〇メートルほど降りた場所で、松明の光が突然消えた。クロノスは即座に魔法を再発動しようとするが、魔法が使えない。彼の体内の魔力が、外部の圧力によって完全に遮断されている。


「結界……!」


 クロノスは悟った。この現象は、古い記録に記された、魔力とマナを通さない古代の遮断膜の存在を示していた。彼は慌てて地上に戻り、本物の火を灯した松明を用意して戻ってきた。その光の先には、崩壊し、破片が散乱した研究室があった。

 クロノスは研究室に置いてあるボロボロになった資料を全て調べ始めた。資料は、単なる意味のない文字や図形が羅列してあるだけだ。彼は魔法を使い、資料を修復し、日が昇る頃まで調べ尽くした。


「すべて無意味な内容だ。この研究室は、ただのガラクタの保管場所にすぎない」


 そう結論づけたはずだったが、クロノスの胸には強い違和感が残った。資料は無意味でも、結界が施された研究室が、この屋敷の地下に存在していたという事実、そして彼の先祖が「この屋敷には何もなかった」と報告していたという事実が、彼に何かが起こったことを確信させた。


 クロノスは、日の光が差し込む頃、ギルバート男爵の書斎へ戻った。


「地下の研究室についてご説明ください」


 しかし、ギルバート男爵は驚くほど無頓着だった。


「知らん!あの場所はただの倉庫だ。二人は夜逃げでもしたのだろう。もうどうでもいいだろう」


 男爵の無知と無頓着な言葉に、クロノスの怒りが爆発した。彼の丁寧な口調は崩れ、青い瞳が激しい光を放ち、周囲の空気が凍り付いた。


「いいか、ギルバート。貴様は、俺がゼノス・ノワール・レクティス伯爵の使いだと知っての態度か!」


 ギルバート男爵は、その圧倒的な迫力に頭を下げて謝るが、なぜ執事がそこまで怒っているのか、真の理由を理解できない。


「俺の判断で、男爵家を潰すことができるのだ」


 クロノスは冷酷に告げた。


「すぐにハスクとリクトを探し出せ。もし一週間以内に見つけることができなければ、お前の爵位は剥奪して奴隷として売りに出す。それはお前だけではない。お前たち一族全員だ」


 男爵は執事のあまりの迫力に失禁した。


「俺はゼノス伯爵に連絡をしてくる。必ず一週間以内に見つけ出せ」


 クロノスはそう言うと、怒りを抑えきれない様子で書斎から出て行った。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ