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【魔力ゼロ】と嘲笑されて男爵家を追放された私。――実は、この偽りの世界を修復する『古代の究極魔法』を使える唯一の器でした。  作者: ノンカロリー


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マナの修行

 祠に祀られていた水晶が割れ、紅い光がハスクの体へと殺到する。それは抗う間もなくハスクの体内へと吸収された。見えない鉄槌で殴られたかのような衝撃に、ハスクの体は硬直した。体内に残る灼熱の余韻を感じながら、ハスクは今まで止めていた息を、大きく、そして深く吐き出した。そして、声は鼓膜ではなく、ハスクの魂に直接、厳かで悠久の響きを帯びて語りかけてきた。


『お待ちしておりました、エレメンタルマスター』


 その声は、古の石碑に刻まれた文字が意思を持ったかのように、荘厳に響いた。


『すべての叡智は、守護者アルカに託されています。私が今あなたに示すのは、私たち導き手の正体です』


 これまでハスクを導いてきた赤い光の意志が、ハスクの意識へと流れ込む。


『私たちは、ドワーフの技術力によって改造されたエレメンタル。空の器である元素を束ねる者の器を満たす存在です。我らはエルフ族の遺言をあなた様へ届け、その役割を終えるとあなた様の力の源となるのです』


 紅い光は、これまでハスクがマナと呼んでいたものとは次元が違う、根源的な存在だった。


『この偽りの世界では、マナの扱い方、エレメンタルの扱い方は誰も知らないでしょう。すべての叡智は守護者たるアルカに託されています。次は冥府の洞窟へ向かいなさい。その場所にアルカの一つ目の封印を解くカギがあるでしょう』


 そう告げると、紅蓮の炎のようなエレメンタルは、完全にハスクの体の中へ吸収され、沈黙した。ハスクの体内に残る灼熱の余韻は、彼女の体を満たす確かな力へと変わっていた。



 ハスクは一連の出来事を、一言一句たどるようにアルカへ伝えた。


「エレメンタル?それが何を意味するかは不明。記憶装置に該当するデータが存在しない」


 アルカはエレメンタルという新しい存在を理解できない。それは、エレメンタルの存在と目的が、五つの封印によってアルカの記憶からロックされているからである。


「冥府の洞窟へ向かえ、と指示が出たの。でも、冥府の洞窟がどこにあるのか、わからないわ」


 ハスクは困惑を隠せない。


「データにはない。したがって、この場所の住人に依存する必要がある」


 二人の会話を聞いていた老人が静かに答えた。


「冥府の洞窟がどこにあるのかは存じませんが、ここからさらに北へ向かえば町があります。そこで情報を募れば良いでしょう」


 ハスクは、一筋の光明を見たように、希望に満ちた目でアルカに言った。


「アルカ、町へ向かいましょう!」


 アルカは老人に問うた。


「町はここからどれくらいかかるのだ」


 老人は答える。


「歩きだと一週間はかかります。しかし、馬車を使えば二日程度で着きます」


 アルカは間髪入れずに尋ねる。


 「馬車は用意できるのか」


 老人は穏やかに頷いた。


 「もちろんです。少ないですが旅の資金と二日分の食料も用意します」


 それを聞いていたハスクは、堪えきれず老人を強く抱きしめ、心の底からのお礼を言った。アルカは、ハスクの行動を見て、冷静に分析を述べた。


「これはすべて、エルフ族から託された事柄だ。貴様の感謝は、論理的な報酬を必要としない無意味な行動と解析される」


 ハスクはアルカに笑いかけた。


 「そうかもしれないけど、ちゃんとお礼を言わないといけないわ」


 アルカにはハスクの意図が理解できない。彼は頭の中で感情プロトコルを検索しているようだ。


「理解不能。感謝という行動は、報酬の有無によって左右されないのか?」


 ハスクは呆れたように言った。


 「そこは、ありがとうと述べるのよ」


 アルカは数秒の沈黙の後、ぎこちなく言った。


 「……ありがとう」


 老人は、アルカの不器用な感謝に微笑んだ。


「こちらこそ、役目を果たさせていただきありがとうございます」


 老人はさらに続けた。


 「旅の疲れを癒してから出発してください」


 二人は、この村で一泊することにした。その日の夜、ハスクはアルカに相談した。


「私、マナの使い方の練習をしたいの」


 アルカは即座に答えた。


「当然だ。マナの運用習熟は、貴様の生存率を上げるための最優先事項となる」


 二人は予定を変更し、村を出発するのは十日後にすることを決定した。老人は快く承諾する。こうして、ハスクの十日間にわたる修行が始まった。



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