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【魔力ゼロ】と嘲笑されて男爵家を追放された私。――実は、この偽りの世界を修復する『古代の究極魔法』を使える唯一の器でした。  作者: ノンカロリー


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偽りの抜け殻

彼女の名はハスク。この世界、そして仕えるシュヴァルツ男爵家において、最も忌み嫌われる病名を背負わされた人間だ。


 正式な病名は魔力不適合症。蔑称は不導の殻インシュレイターズ・ハスクという。誰もが生まれつき持っているはずの魔力を、ハスクの身体だけが完全に拒絶する。意識一つで魔法を操れるこの世界で、ハスクは生まれたときから欠陥品だった。


 さらに、ハスクを孤立させたのはその異様な容姿だ。髪は幼子らしからぬ老婆のような白い色。そして瞳は、まるで煮詰めた血液を溶かしたような禍々しい赤。魔力を持たぬ上に、呪いめいた容貌を持つ私は、家族にとって文字通り【恥】以外の何物でもなかった。


「ハスク!いつまで井戸に突っ立っている!早く水を汲め、この抜け殻め!」


 背後から、男爵家の従者であるリクトの甲高い怒声が飛んできた。


 リクトは四十代の男で、ひどく痩せぎすだった。細身を通り越したその体型は、神経質で常にどこか苛立っているような動きを強調する。その容貌は陰鬱で、ハスクを責め立てる声だけが、彼の頼りない体躯に似合わず、耳障りなほど甲高く響いた。

 屋敷の北東、人目から隠すように建つ古びた小屋。そこが、かつて男爵家の長女であったハスクの【部屋】だ。


 ハスクが五歳になり、妹リリアが生まれたあの日から、すべては変わった。


 リリアは生まれながらに豊かな魔力を持ち、その力は太陽のように輝いていた。三歳で魔法を自在に操る妹は、両親の愛情と、この家の希望をすべて一身に集めた。一方、魔力を持たぬハスクは、容姿も含めて家族の恥と断じられた。リリアが生まれてからわずか三か月後、ハスクは病死したことにされ、男爵家の籍を完全に抹消された。代わりに、ハスクという蔑称の名を与えられ、奴隷商から買い取られた使用人として、最下層の小屋で生きることになったのだ。


 水桶を手に、冷たい石畳の上を歩く。夜明け前の庭園はひんやりと湿り、魔力を満たした他の使用人たちの身体からは、微かな光の粒が漏れていた。彼らは呼吸するように魔法を使用し、その輝きが、ハスクと彼らを隔てる決定的な壁を示していた。


 ハスクは指先に意識を集中させる。もし、人並みの魔力があるのなら、この重い水桶を【浮遊】の魔法で少しでも軽くできるだろうに。しかし、ハスクの指先はただ冷たいだけで、何も起きない。


 井戸の近くの大きな庭から、光と笑い声が漏れていた。


「見て、お父様!新しい魔法よ!この光の玉を、あの小屋まで飛ばせるわ!」

「素晴らしい、リリア!やはりお前は我が男爵家の誇りだ!」


 その言葉を聞くたび、ハスクの心はいつもの感情に沈み込む。【無気力】。世界から力を与えられない人間が、生きることに執着しても無駄だという、冷たい諦念。


 魔力を持たぬ貴族は、ただのゴミだ。


 異世界へ転生した記憶を持つハスクは、この世界の残酷な真実を理解していた。だから、リクトの罵倒も、使用人としての屈辱的な日々も、すべて受け入れた。ハスクという名前さえも。

 水桶を井戸の底へ降ろす冷たい縄が手に食い込む。その手は、まるで感情のない抜け殻のようだった。水面に映るのは、白い髪と赤い瞳を持つ、顔色の悪い、痩せこけた少女。


 これこそが、異世界へと転生して、ハスクとなった彼女の今の姿だった。


挿絵(By みてみん) ハスクのイメージ画像

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