寝落ち通話しました!?
とある日、突然みぞれがこんなことを言い出したのだ。
「先輩!!寝落ち通話というのをしてみたいです」
「は?寝落ち通話?」
巷では、若者の間で流行っているもののようだ。通話をして、寝るときに通話を切らずに朝を迎える遊びのようなもののこと。
「はい。そういうの、好きな相手とやるとめちゃくちゃ楽しいと聞きました!!」
「それを簡単に言えるのが怖いよ」
普通、好きって言うのは、特に好きな人だと簡単に言えるような言葉じゃないんだぞ。慣れって、本当に怖いなぁ。
「とりあえず、いいですか?」
「んー。まぁ、いいよ」
「ほんとですか!?やったー!!楽しみ」
まぁ、寝る瞬間は僕も暇だし。別にいいか。
そんなこんなで夜。約束通り、僕はみぞれと通話をしていた。
「えへ、えへへ。先輩と夜でも話せるなんて。幸せ」
ぐ、うぐぅ・・・。可愛いかよ。なんだよその笑い方。ズルじゃないか?
「そんなん、誰とやったって変わらないだろ」
「いいえ。変わるんですよ?友達同士だったら、誰とやっても変わらないかもですけど、好きな人とやるからそれがいいんです」
「へぇ~。そんなものなのか」
「はい。ねぇねぇ先輩。もっと話しましょう?」
「今も話してるじゃないか」
なんか、今日のみぞれは子供っぽいな。少しだけ、可愛いと思ってしまう自分もいるのであった。
それから2時間、僕らは通話し続けた。気づけば、時刻は0時。日付が変わってしまった。
「こんな時間まで起きてても大丈夫なのか?」
「ん~。そろそろ眠いれすねぇ」
「呂律廻ってないじゃないか」
「ねぇせんぱい」
「どうした?」
「好きですよ」
「っ・・・」
「えへへ。先輩、反応可愛い」
「なんだお前」
「ん~?なんだろう。なんかね、今ならなんでも素直になれる気がするっ!!」
「はぁ。そうっすか」
これが、深夜テンションというやつか。だからみぞれも、口が軽くなって好きだのなんだのが出てくるんだ。
「てか、眠いなら寝なくていいのか?」
「んーん。やだ」
「なんでだよ。眠いのに起きてる方が辛いじゃないか」
「そうだね。でも、先輩ともっと最後まで話してたいから」
「ふーん。そっか」
「反応冷たくないですかぁ!?」
「うるさいな。僕寝るぞ」
「ねぇお願いです!!ねないで」
「そんな声で言っても聞きません」
なんで僕は眠いのに、わがままで起きないといけないんだ。
「先輩のいじわる・・・。じゃあ、最後に」
「なんだ?」
「大好きです♡せんぱい」
「・・・おやすみ」
はぁ。疲れる。あ、そうだった。寝落ち通話をするんだった。
「まったく、こいつったら」
深夜テンションで、頭がおかしくなってるじゃないか。にしても、
「言い方かわいかったな」
なんでか。みぞれは普段そんなことを言わないから、普通に可愛く思えてしまうのであった。
そんなこんなで次の日、
「先輩。おはようございます」
少しだけよそよそしいみぞれが挨拶に来た。そりゃそうだ。
「お前、昨日深夜テンションになりすぎな」
「はい。ごめんなさい」
「別に謝らなくていいけど・・・」
みぞれという少女の深夜テンションは、中々にヤバかった。隙あらば大好きと言ってくるし、なんか。ヤンデレの易しいバージョンだった。
「でもでも!!それほど先輩のことが好きなんです」
「うん。それは伝わってきた」
でも、恋愛的に好きになったかと聞かれると、そうでもない。ただ、
「少しだけな。昨日のみぞれはかわいかったぞ」
「え?」
それだけ言って、僕は走り出した。無理だ無理だ。僕はあの場にいることはできない。
昼休み、僕が屋上で飯を食っていると、
「ねぇ先輩。最近、私に構ってくれない」
「別に、そんなことないんじゃないか?」
「大アリですよ!!昨日だって、みぞれと寝落ち通話なんかしちゃって!!最近、先輩は私に構ってくれない!!」
こいつ曰く、最近僕が構ってあげていないことにキレているようだった。いやいや、普通に構ってあげているからな?たしかに夜は通話をしていたが、その前なんか、相手はしてやったじゃないか。
「むっ。先輩は、みぞれの方が好きなんですか?まぁ、そうですよね。みぞれ、かわいいし」
「あーえっと。そうじゃないって言ったらそれも違うけど・・・!!とにかく、恋愛的に好きではない」
「じゃあ甘やかしてください!!」
「え、えぇ・・・」
「出来ないんですか?やっぱり、先輩はみぞれのことが・・・」
「あーもう!!だから違うっての!!」
なんで分からないんだよ。
そんなこんなで。
「はぁ。結局は甘やかさないといけないんだな」
今現在、優希が後ろから抱きついてきている。
「なんか。照れるとかないんですか!?」
「注文が多いなぁ」
「でも、こんな美少女から抱きつかれたら、普通照れるでしょうが!!」
「あんま自分で言うな」
たしかに美少女ではあるけどさ。
「じゃあ先輩。いいです。絶対先輩ですら惚れちゃうようなこと言っちゃいますからね?」
「ははっ。僕を惚れさせるなんて不可能に近いぞ。やってみな」
すると、優希は僕の耳の近くに口を近づけて、その言葉を言った。
「だーいすきだよ♡」
「うわ、きっつ」
「なんですかその反応はー!!」
でも、少しだけ。ドキッと来てしまったのも事実。ま、まさか・・・。
(僕にこんな性癖があったなんてな・・・)
人生17年生きてきたが、はじめて自分の性癖に気づくのであった。




