僕の妹は僕のファンです!?
日付はまた颯爽と過ぎ、気づけば土曜日となっていた。僕は、とある学園一の美少女に、土日のどちらかで遊ばないか。と誘われていたが、予定があるので断った。そして、その予定というのは、
「わざわざ来てもらって悪いね」
僕の妹、新神真愛と遊ぶことだった。軽く、説明はしよう。僕と妹で苗字が違うのは、親が離婚しているからだ。まぁ、そんなことはどうでもよくて、実を言うと僕たち兄妹はそこそこ仲がいい方だと思う。そりゃあ喧嘩はしたことあるが、それでも仲がいい方だと思う。まぁ、離婚してから会わなくなったのも関係しているんだろうけど。
「それで、どこに行きたいんだ?」
「どこって言っても、ただショッピングするだけだよ」
「なるほど。また僕のグッズか?」
僕は、配信活動をしている。登録者は、100万人を越えていて、そして真愛はそんな僕の配信活動を応援してくれていた。
「そうそう。せっかくグッズを出したんだから。妹として買わないとでしょ?」
「別に。無理して買わなくたっていいっての。実妹なんだから、別に無料で渡すことだってできるぞ?」
「それじゃあ、意味ないでしょ。こういうのは買ってなんぼなんだから」
「僕には、その気持ちがわかんねぇや」
わざわざ自分の兄のためにお金を払ってまで買う意味が、僕には分からなかった。貰った方がはやいと思うのだが。まぁ、こいつにはこいつなりの考えがあったりするんだろう。
「まぁまぁ、そんな細かいことは気にしないで!!さっさと行くわよ!!」
「はいはーい」
そう急かす真愛に付いていきながら、僕はそんなことを思うのだった。
デパートに着くと、僕はその状況を見て、嬉しくなりながらも、同時に気分の悪さを感じた。
「うげ、なんだこれ」
そのショップは、僕のグッズが販売されている場所だった。しかしそこには、見るに絶えないほどの大勢の客が押し寄せていた。
「めっちゃ人気じゃん!!はやく買わないと!!」
「あ、ちょおい!!」
僕は真愛を呼び止めたが、僕の声は真愛の耳に届かず、真愛は人混みの中へと消えていった。
「僕って、こんなにファンがいたのか」
初めて、自分の凄さに気づいた瞬間だった。そこまで僕の良さがわからないが、でも少し嬉しいような感じがした。
30分ほど待ち続けて、やがて
「ただいまー」
僕のグッズを抱えた真愛が帰ってきた。
「よく買えたな。あんな人混みの中で」
「ふっふーん。分かってる?これは、ただの買い物じゃないのよ。これは、大和のファン全員が参加する、
『戦争』なんだよ。どれだけ多くグッズを帰るかによって変わってくる。そんなものなんだよ」
「は、はぁ。そうなんか・・・」
よくわからないのである。
「とにかく、私は大和のグッズが買えたから満足!!」
「そ、そうか・・・」
流石に、思ってしまう。実はこいつは、ブラコンではないか?と。普通の妹だったら、いくら兄が有名な配信者でも、グッズを買おうという考えには思いつかないだろう。
「お前、ブラコン過ぎないか?」
「はぁ?なに言ってんの?そりゃあ大和のことは家族として好きではいるけど、ブラコンってほどじゃないから。自意識過剰すぎるよ?」
「お、おう。そうか?」
なにも、そんな言わなくたっていいのに。
「ま、まぁ、僕のグッズを買ってくれたお礼だ。昼飯は好きなやつを奢ってやろう」
「ほんと!?ありがとーー!!」
でも、これだけ家族としても、配信者としても愛してくれる妹がいるということは、少し悪くないような気もする。
「少し、あの時の世界に似ているような気がするな」
懐かしい。あのときは、超絶ブラコンな義妹だったか。少し、真愛と優夢はにているところがあるんだな。
そんなこんなで、その後は少し買い物をして、昼御飯を食べる頃合いになっていた。
「それで、何が食べたいって言うんだ?」
「うーん。とは言ってもねぇ。正直食べたいものはないんだよ」
「食欲ないのか?」
「うん。ちょっとね」
「飯はちゃんと食わさせて貰ってるんだろうな」
「お金は置いていってるけど、いつもお父さんいないからねぇ」
「は?それどういうことだよ」
「新しく結婚した女の人と、夜遅くまで遊び呆けているの。だから朝も昼も晩も私が料理を作ってるの」
「はぁ。あのクソ親父が。いつでも、僕の家に来てくれてもいいからな?」
「大丈夫だよ。それ以外は特に何もしてこないから」
「だったらいいが。まあ出来るときにたらふく食え。どれだけでも奢ってやるから」
そう言っても、
「じゃあ、サラダにしようかな」
と、真愛は控えめな食べ物を頼もうとする。少し、表情が暗いような、焦っているような顔を見て、僕は素直に思ったことを口にした。
「お前、ダイエット中か?」
「・・・へ?な、なんで!?」
「わかりやすいんだよ。何度も何度もお腹は鳴っているのに、自分の腹を見ては控えめな食べ物を食べようとして」
「な、ななななな・・・!!」
その様子から、どうやら的中したようだった。
「だ、だって。最近体重増えちゃったんだもん。だから、少し減量しないと太っちゃうと思って」
「それでどこが太るって言うんだよ。どう見ても痩せているだろ」
すると、突然真愛が自分の服を少し捲り上げて・・・
「これを見て、太ってないと言える!?」
そして自分のお腹をつまみ上げた。
「別に、太ってないだろ。肉もそんなに付いているわけではないし」
「それでも、なの!!だったら、一回確かめてみなよ!!」
自分で制御が出来ていないのか、そう言ってこちらに寄ってくる。
「いいわ!!わかったから!!」
「ふ、ふん。ほんと大和ってデリカシーがない」
「悪かったって。で、結局昼飯はどうするんだ?」
「仕方ないわよ。大和がそう言うんだったら、ちゃんと食べる」
「そ、そうか」
僕は、何度も言うが世界を渡り歩いた転生者だ。その度には、数々の女の人と出会ってきたが、それでも僕はわからないことがひとつある。結局は、
「年頃の女子は、いつまで経っても分からないな」
そんな、感想に尽きるのだった。