大和が真愛に・・・
それから数日、学校に行っては、家に帰り、優希や息子達に甘えられる日が続いた。季節は、もう既に秋になっていた。10月上旬、夏色だった緑色の葉も徐々に枯れて地面に落とし、田舎ならではの秋の匂いも充満するようになった。そんな中、真愛の受験勉強は順調だった。どうやら、部活も引退して、勉強に集中することが出来るそうだ。
「大分成長したな。そろそろ射程圏内には入れるんじゃないか?」
「ほんと?やったー!!」
どの教科も、8割は取れるようになってきた。基礎もしっかり身に付いてきてるし、真愛がうちの学校に合格する未来が見えてきた。
「・・・」
「がんばれ。真愛」
一、兄貴として、真愛の受験勉強を応援してやる。わりと、真剣に取り組む姿は、昔と変わってないのである。
そんな日常が増えていった。真愛は、学校から帰れば、勉強漬けの日々を送っていった。故に、学力も上昇するだろうという見込みも見られた。・・・はずなのだが、
「そこ、ケアレスミスだ」
「あ、ほんとだ」
最近、凡ミスが増えた。前までこんなミスは少なかったのに、最近になってまた増えてきた。
「勉強のやりすぎか?少し休憩するぞ」
「いや、いい。やる」
「でも、やりすぎはよくない。息抜きも大事だぞ。そうだ。息抜きがてら、散歩でもするか?」
「・・・わかった」
そうして僕らは、散歩に出掛けた。
外に出れば、少し肌寒くなっていた。まぁ、涼しい時期に差し掛かってるからな。それも当たり前か。
「・・・」
「・・・」
沈黙が、この空間に流れていた。やっぱり、なにかがおかしい。実は、2日ほど前から気づいていた。最近、真愛の調子がおかしい。ミスも増えたし、表情も少し険しい。うまく隠しているせいか、僕以外はまったく気付いていないようだが、
「・・・」
散歩中の真愛も、ただ黙り込んで呆然と歩くだけだった。まったく、息抜きしてるようには見えなかった。
「はぁ」
仕方ない。何かあったのは確実だ。近くの公園に寄ろう。
「真愛の好きなやつは、これか」
真愛を、公園のベンチに座らせて、僕は飲み物を買った。
「ほれ」
「え?あっ、ちょっと!!」
「ナイスキャッチ」
「いきなり投げないでよ。で、なんで私の好きなものを?」
「息抜きだって言ってんだろ。ちょうど欲しかっただろ?飲めよ」
「うん。ありがとう」
僕も、ホットコーヒーを開けて、飲んだ。
「苦っ」
無理するんじゃなかった。
「落ち着けたか?」
「・・・うん」
「それで、何があったんだ?」
「え?」
「学校で、何かあったんだろ?」
「なんで、知ってるの?」
「お前なぁ、何年お前の兄貴やってると思ってんだよ。お前の変化くらい、そんなんすぐ気付くわ」
「・・・やっぱ、お兄ちゃんは流石だね。あのね、お兄ちゃん、学校でもそこそこ知られてるからさ、私がお兄ちゃんの妹だってことも知られてるわけ。それでね、私はそんなつもりないんだけど、学校の男の子からね」
「お前、お兄ちゃん大好きなんだろ?ブラコンじゃねぇか!!きっしょw」
「って笑われて。それで、何も言い返せなかった自分が憎くて」
「はぁ・・・」
「だから、ねぇ。助けて”大和”」
「っ!!」
これは、かなりの緊急事態だということを示唆していた。こいつが僕のことを大和と呼ぶことは、滅多にない。だから、僕のことをそう呼んだということはつまり、そういうことだ。
「ねぇ、助けて・・・。大和」
「わかった。どうしたんだ?いじめでも受けてるのか?」
「うん。最近は、そうなの。よく机に落書きとかされるの」
「わかった。お兄ちゃんに任せとけ」
おれの妹を傷つけるとか、いい度胸してるじゃねぇか。
「その男子とやらは?」
「あ、えっと・・・」
結局、何も聞けなかったが、わかった。とりあえず学校に乗り込めばなんとかなるだろ。
そうして翌日、僕は秒でそのいじめを終わらせた。まず、いじめを行った男子に苦痛を味あわせて、それを放置していた教師に愛情を注いでやった。
「ったく、そういうことがあったらすぐ言えよ」
「ごめんね。お兄ちゃん。心配かけて」
「いいんだよ。お前が謝ることじゃない」
「本当にありがとう」
「気にしなくていいからな」
「何が?」
「お前も、お年頃の女の子だから、あんまお前の中での事情は知らんが、兄に甘えることは悪いことじゃないからな」
「え?」
「第一、僕たちには本当の両親はいないんだ。それに責任を感じてるのか、なんなのかは分からんが。甘えたいときは僕に甘えていいんだからな」
「いいの?」
「あぁ、いいよ」
「嫌ったり、迷惑だって思わない?」
「思わん。家族なんだから、それくらい当たり前だろ」
「お兄ちゃん・・・!!うん!!わかった!!」
僕は、真愛の兄だ。親がいない分、救ってやる義務がある。別に、ブラコンだったっていい。妹に、嫌われていたっていい。それが兄としての人生なら、別に文句は言えない。
「先輩、やっぱり優しいなぁ」
先輩がどこか行くから、内緒で後ろをついていったけど、そういうことだったんだ。先輩は、自分の妹に対しても優しい。親戚の子とか、私たちがいながら・・・先輩は全員の面倒を見ている。
「やっぱり私は、先輩が好き」
いつか、私の彼氏にならないかなぁ。なんて、いつも思う。
「いつになったら、好きになってくれるんだろうか」
これだけアタックしても、先輩は私に靡いてくれない。
先輩のことを好きになって約半年。私は、また先輩のことが好きになったのであった。




