奇跡
これは、起こり得るはずのない出来事が、起こってしまった物語だ。とてつもない確率で生まれてしまって、そして僕の人生を明るくしてくれた、そんな。
『奇跡の出会いの、物語だ』
僕は、今日一日中暇だったので、適当に旅をしてみることにしたのだ。場所は、ここら辺ではそこそこ有名な、『紅葉の里』。季節はまだ夏なので、普通は紅葉は時期的にもまだ早いのだが、紅葉の里の紅葉の木は、9月に差し掛かると、季節外れの紅葉を咲かせるらしい。僕は、そんな景色を見るべく、紅葉の里にやってきた。
「おぉ~。やっぱり綺麗だなぁ」
中学生の頃、一度行ったことがある。とても印象に残っている。当時は、夜の、満月が見える日に行ったから、とても綺麗だったことを覚えている。
「今日は、風も少し優しいな」
いつもはもっと暑いのに、今日は涼しい風が吹いて、快適な1日だった。
「この匂い、たまらない」
分かるだろうか?紅葉から放たれる、独特な香り。意外と、僕はこういうのも好きだったりする。
それから、僕は1日中紅葉を堪能していた。公園内は、そこそこデカい。例えるなら、東京ドーム。ほどはあるだろうか。
「歩き疲れたなぁ」
もう一日中公園内を歩いていた。気づけば夕暮れ時にもなっていて、公園内に5時のチャイムが鳴り響いていた。
「僕もそろそろ帰るかぁ」
つかれたし、帰ろうか。そうして、僕が出口を目指そうとした、その瞬間。
「やっと見つけた!!」
そんな、声が聞こえて、そのとき。
<<ギュッ>>
「・・・は?」
たしかに、抱きしめられた感触があった。それに、僕の腹元には・・・。
「え?」
何故か、手があった。どういうこと?と、いうか。
「待て待て!!離れろ!!」
「嫌です。離れたくありません」
とりあえず無理矢理剥がそうとするが。
「こいつ、力強い!!」
見た目で言えば、女の子だ。しかし、その力強さは明らかに女の子じゃなかった。
「絶対に離しません!!ようやく見つけたんですから!!」
何度も、手を退かそうとするが、中々勝てない。なんでだよ。どうなっているんだよ。と、そんなことに苦戦していると。
「ちょっと、何やってるんだよ!!」
どうやら、この女の子の彼氏?らしき人がやって来た。
「あ、ちょっと!!」
瞬くうちに、僕の腹もとに、その手はなかった。
「ほんとごめんなさい!!おれの妹が失礼なことをして!!」
どうやら、お兄さんだったようだ。
「いきなりどうしたんだよ。やっと見つけたって。僕たちは何処かで会っていたか?」
この子達の顔には、見覚えがなかった。だから、会っているということは、恐らくないはずだが。
「とりあえず、家、着いていっていいですか?」
「は?またなんで?」
意味が分からない。分からなさすぎる。色々、理解が追い付いていない。
「だめなんですか?」
「なんで見ず知らずの子供を家にあげないといけないんだよ」
「おいてくの?」
「う、うぐっ・・・」
そう言われると、少し躊躇ってしまう。少女は、まるで僕の弱点を知っているかのようなことをしてきた。
「ほんとごめんなさい。でも、ここじゃ少し話しにくいから、少し場所を移していただけますか?」
まぁ、なんとなく。大事な話な気がするのだ。とりあえず、何処かへ行こう。
「・・・ん?」
一瞬、おかしかった。なんで僕は、そう思ったんだ?僕は、仲のいい奴以外に興味はない。なのに、どうして話を聞こうと思ったんだ?前世の弱さがまだ残っているのか?
「まぁ、いいか」
とりあえず、場所を移そうか。
そうして、
「わぁ。ここが貴方のおうち・・・!!」
結局、行く場所もなかったので、家にあげることにした。これは、仕方ないのだ。
「それで、話ってなんなんだ?」
「あぁ、そうでした。あの、単刀直入に申し上げます」
そう言われたので、何を言われるのか。心臓がバクバクしながら、その言葉を待っていると。予想外の言葉が出てきた。
「私たちは、パパの子供なの!!」
「・・・は?」
子供?そんなわけないだろ。見た目はどう見ても、中学生。いや、高校生の可能性もある。それに、パパ?いやいや、妻もおろか、好きな人すらいないんだぞ?過去にそんなことがあった覚えなんてないし。だったら、親戚とかか?いや、だったらパパなんて言わないはず。
「だめだ。わからん」
「そう、ですよね。一つ一つ説明をしていきます」
一旦落ち着こう。それで、話を聞こう。
「まず、君たちの名前はなんなんだ?」
「おれの名前は、夢叶 翠星です」
「ん?まて」
夢叶。夢叶って。
「僕と同じ苗字じゃねぇか」
どういうこと?だったら本当に、僕の子供なのか?いや、でもおかしすぎる。
「と、とりあえず、そちらの女の子は?」
そう尋ねると、その少女は、天真爛漫に自己紹介を始めた。
「お兄ちゃんの双子の妹、夢叶 優夢です!!パパの、娘だよ!!」
と。
は?意味が分からない。とんだ偶然すぎるのだ。まず、僕に子供がいた記憶なんてないが、その次に、名前を聞いた途端、全てが繋がったような気がする。だって、優夢って。
「え?」
2つ前の世界、僕には妹がいた。その妹の名前を、優夢と言った。そして、最初こそピンと来なかったが、言われてみれば、顔や性格も似ている。あのときの優夢がブラコンだったように。
「お兄ちゃん!!」
今、目の前にいる優夢も、とんでもなくブラコンだった。




