学園一の美少女と友達に!?
「そろそろ、先輩に仲良くしてもらいたいですね」
私は、そんな最大の課題を掲げていた。
「これに関しては私も思うけど、あんな先輩のどこがいいの?酷く突き放して、罵倒しての先輩が」
「それが還っていいんじゃない!!みぞれも知っているでしょう?私は、こんなにも冷たくしてくる男の子がいなかったことは」
「そうだけどねぇ。私にはあんな先輩の良さがわかんないや」
私の名前は、白夢優希だ。1つ上の先輩である、夢叶大和先輩の事が大好きなのだ。2週間ほど前、そんな大好きな先輩に告白したのだが、私は初めて失恋を経験した。どうやらその先輩は、恋愛に一切興味がないといった雰囲気を醸し出しており、私がアピールをし続けたせいで一度距離をおかれてしまった。今は親友の夢川涼緩のおかげで話すことが出来ているが、それでも相変わらずの塩対応っぷりだ。それはそれでもっと先輩について楽しめることが出来るから、まだいいのかもしれないが、しかしこの状況が続いてしまうと・・・。私は先輩にくっつくことが出来なくなる。しかし、今無理矢理引っ付いてしまうと、また距離をおかれそうで怖いのだ。
「あれの心を動かそうってのは流石に無理なんじゃない?」
「でも、所詮男の子だから・・・!!」
「まず、その考えがいけないんじゃないの。だったら、関わるなと言って距離をおいたりしないでしょ」
「たしかに。でも、だったらどうしたらいいんだろ」
「んー。無理な話しかもしれないけど、遊びに誘ってみたら?先輩、部活入っていないみたいだし、土日もどうせ暇でしょ」
「たしかに!!それありかも!!よし、先輩を誘ってみよう!!」
「無理だと思うけど、まぁ頑張ってねー」
そうして私は、その約束をするべく先輩のところへと向かうのだった。
いつものように屋上でのんびりしていると、珍しく扉が開いた。一瞬教師か?とも思ったが、昼休みにわざわざ屋上に来る用なんてないだろう。だったら、誰なんだ?と思いつつ、その方を見ると。
「あ、いたいた!!せんぱーい!!」
「うげ」
うるさくて面倒くさい奴のお出ましだった。しかし、逃げ道もないので。
「なんだよ。用があるなら足早に伝えてはやく出ていってくれ」
「相変わらずですなー。それはそうとして、先輩。今度の土日どちらか空いていますか?」
あー。このパターンは遊びに誘う系だろう。細かいところまではわからないが、推測するにはこの遊びを通して仲良くなりたいとかか?だったら、
「無理だ。予定が詰まっている」
僕は、断ることにした。
「えぇ!?先輩、年中暇そうな顔をしているのに!?」
「こいつ・・・」
ついに本音を漏らしあがった。
「罵るなら帰れ」
「いえいえ。そんなつもりはないです。しかし、無理なんですかぁー。中々上手くいきませんねー」
「僕と遊びを通して仲良くなろうって言ったって無駄だぞ?」
「ば、バレていたんですか!?」
どうやら、僕の推測は的中していたようだ。
「わかる。お前だったら、そんな回りくどいことはしないだろうなって思ったからだ」
「あ、先輩が私のことを知ってくれている!!」
「そりゃあ、これだけしつこく絡まれてるからな。流石に知りたくないことも知ってしまうわ」
「んー。にしても、なんで先輩はそんなにも友達を作ろうとしないんですか?」
「・・・必要ないからだ。未来の話をしてしまうと、どうせ友達はみんな死んでいくんだろ?なんだって。親も、家族も、恋人も。全て、死んでしまうんだろ?そんな短い人生の中に、友達なんているか?」
「いりますよ。だって」
「悲しいだけじゃないか。周りから人が消え去っていくんだ。そんな、寂しい中自分が死ぬのは嫌じゃないか」
実際、前世で真愛が先に旅立ったときは、どれだけ悲しみに暮れたことか。その時じゃなくても、夢という人物や、当時の学園長、そして父親まで。そんな、僕の大切な人たちが周りから離れていく悲しみを、僕はもう感じたくない。
「かもしれないですけど。しかし、だからこそじゃないんですか?」
「と、いうと?」
「人間は、誰しも死にますよ。最後は、悲しい結末だとしても。結局は、死んでしまう。けど、だからこそ『この世界での』幸せを作るんじゃないんですか?」
この世界での・・・か。
「人であれば、誰だって転生します。もしかしたら、私とあなたが前世でお会いしていた可能性だってあるかもしれません。しかし、前世と今世では幸せの形は違うんです。だから、人は前世の記憶がなくても、今世でまた新しい幸せを体験するんですよ。あなたは、前世で満足するほど幸せを感じたんですか?」
実際、まだ満足しきれていない。たしかに、いろんな幸せをつくった。一番最初の世界では、友達だっていた。その友達と過ごしたときの幸せは、まだ覚えている。だったら、友達をつくる。という行動は、間違っていないのかもしれない。
「もちろん、強制は出来ません。私は先輩本人じゃないから。しかし、友達という存在も、悪くないですよ。というのを伝えたかっただけです」
「・・・なるほど、な」
少し、友達という存在が恋しくなったような気がする。全ては、この少女の説得によって。
「それを踏まえて。先輩、好きになれなくていいですから、私と友達から始めませんか?」
そんな、お願いをされる。そうだ。この少女のいう通り、幸せは世界によって違う。だから、どうせ死ぬ。そんなことはわかっている。だから、新しい幸せをつくる。それで、いいんだろう。
「ははっ。めんどうな奴に、一つ分からされてしまったな」
だったら、僕はこの世界での幸せをつくるとしよう。そうして、僕は初めてこの世界で友達をつくるのであった。