みぞれが甘えん坊になってしまいました!?
とりあえず幼児化したみぞれは一旦優希に任せることにして、僕はみぞれのお父様に呼ばれたため、そちらへ向かっていた。
「失礼します」
「突然来てもらってすまない」
「えぇ、大丈夫ですよ。それで、本題は」
「あぁ、そうだ。みぞれが幼児化していることについてだ。正直、まだ驚きを隠せていないだろ」
「ま、まぁ。そうですね。前代未聞過ぎて」
「みぞれがああなっているのは、昔からなんだ。別に、重い病気とかそういうのではない。ただ、みぞれは風邪を引いたら、見た目も精神も子供になってしまうそうだ。どうやら、そういうことらしい。それと、幼児化していたときの記憶はないから、風邪が治っても思い出すことがないんだ。もし、幼児化したみぞれが何か迷惑なことをしたら、そのときはお詫びを申し上げる」
「いえ、大丈夫ですよ。慣れたもんなんで」
「そ、そうか。まあ、とりあえずはそういうことだ。用は済んだ」
「わかりました。それでは、失礼します」
とのことだ。どうやら、みぞれは幼児化すると見た目も幼児化するらしい。それに、記憶がないなんて。
「あいつ、どんな設定をつけてんだよ」
現実離れした特殊能力をつけやがって。まぁ、僕が言えたことではないけど。そんなこんなで、僕は優希のところへ戻った。
「うーん」
なんとも、見苦しい状況。地獄絵図・・・まさに、それが合っている場面だった。
「ちょ、ちょっと!!先輩!!助けて!!」
「あ、おにーちゃん!!」
気狂う。おにーちゃんなんて言わないでくれ。
「ど、どういう状況だ?」
「みぞれがね、寂しいって言ってしがみついてきたの。そして、バランス崩してこうなった」
「なるほど。と、とりあえず、みぞれ。おいで」
「おにーちゃん!!」
僕がみぞれを呼ぶと、てちてちと歩く音を立てながら、こちらへ寄ってきた。
「先輩ありがとうございます。助かった・・・」
「おにーちゃん!!抱っこ!!」
「ぐはぁっ・・・」
「優希?」
突然。優希が倒れてしまった。
「どうしたんだよ。優希」
「尊い」
「は?」
「尊すぎる・・・!!なんでこんなかわいいの!?ねぇ、反則じゃない!?」
「たしかにかわいいけど、今はそれどころじゃない」
一旦みぞれを抱っこしながら、
「みぞれ。熱はありそうなのか?」
「うーん。ちょっと頭痛い」
「
そっかー。ちょっと、失礼するぞ」
「んっ」
みぞれのおでこを触ってみると、
「まぁ、風邪引いてる状態だから、熱があるのは当然か」
触った感触、37,5ほどだった。まぁ、微熱と言ったところだ。
「みぞれ。はやく熱を治したいだろ?」
「うーん。まぁ」
「じゃあ、いっぱい寝なさい」
「えーなんで。せっかくおにーちゃんたち遊びに来たのに。寝たくない!」
「駄々こねるな。はやく良くして、遊ぶぞ」
「遊ぶ!?やったー!!じゃあ、治すー」
子供って、ほんと単純だ。喜ぶような条件をつけると、すぐやる気になるんだから。
「んー、でも。一人じゃ寝れない」
「そうか。メイドさん呼んでくるか?」
「んー。今日はおにーちゃんたちと一緒に寝たい」
「えちょっ!?」
「うそだろ?ほんとに?」
「うん!!一緒に寝たい!!」
どうする?寝てあげるべきか?風邪が移ることはないが、流石に後輩だ。その上、異性だ。そんなあるまじき行為、許されるのか?ましてや、お嬢様に。
「おにーちゃん!!おねーちゃん!!はやく!!」
急かすな急かすな。
「おい、優希。どうする?」
「ね、寝てあげるべきだと思います!!」
お前普通に幼児と寝たいだけだろ。まさかこいつ、ロリコンなのか?そういう性癖の持ち主なのか?
「もう私我慢できません!!みぞれちゃん、一緒におねんねしましょうね」
「おねーちゃん!!はやく、おにーちゃんも!!」
くっそ、
「どうすればー!!」
結局、僕はというと、
「なんとかこれで済んでよかった」
手を繋ぐと言ったら、少し不満そうにしながらも、仕方なく承諾してくれた。ただ、優希が隣にいる安心感と、手を繋いでいる温もりを感じているからか、みぞれはすぐ眠りについた。そして・・・
「なんでお前も寝てんだよ」
看病しに来た優希も、みぞれと一緒に眠ってしまった。
「まったく」
でも、起こすわけにもいかないしな。そのまま寝させてやるか。しかし、何をしようか。
「暇だなー」
なんて思っていると。
「失礼しまー・・・って、あの」
「あっ」
「これは、どういう状況ですか?」
様子を見に来たメイドさんが、同じように困惑している様子だった。
「えっと、話せば長くなるんですけど・・・」
「大丈夫です。お聞かせください」
言われた通り、僕はメイドさんに一部始終を説明した。
「な、なるほど。まぁ、私も多々ありましたから、納得です。けど、大和様?」
「は、はい」
「お嬢様に、手を出したり・・・」
「し、してるわけねぇだろ!!」
目が怖いんですよ。メイドさん。まあ、たしかに危険人物ではあるな。お年頃だし、男子だし。
「でも、それでお嬢様が安心できたなら、感謝をお告げします」
「いや、大丈夫ですよ。メイドさんこそ、お疲れさまです」
「っ!!・・・いえ、造作もないことです。あと1時間ほどあとに、ご夕食の時間なので、その時間になったらまたお越しします」
「はい。ありがとうございます」
とりあえずは、なんの誤解もないようでよかった。はぁ、まったく、
「幼児化するだけで、人ってこんなにも変わるんだな」
体験したことのない異例の異変に、少し驚くのだった。




