花火は花のように咲いた
そんなこんなで、その後も、
「ねぇねぇ、金魚すくい!!」
「はいはい。わかったよ」
みぞれも、それ以外も。みんな楽しんでくれていたようだった。僕だって、いっぱい楽しんでいるがな。
「はぁ~。もうこんな時間かー」
「だねー。すっかり遅くなっちゃった」
「改めて大和殿、混ぜてくれてありがとうな」
この祭りで知れたことが一つあった。それは、カズがいい奴だってこと。こいつも、後輩や真愛たちのことを全力で楽しませてくれていた。意外に、人への思いやりがあったのだ。それに、関わりやすい人だった。
「あぁ、いいよ」
なんだかんだ言って、カズと一緒に行ったのも正解だっただろう。
「あ、そろそろ花火の時間だよ!!」
「え!!嘘!?なんかいい場所ない!?」
まったく、慌ただしいもんだ。
「それなら、我輩が絶好の場所を知っておるぞ。着いてくるがいい!!」
「おぉ、頼りになります!!」
言われるがままに、僕たちはカズへ着いていった。
「先輩!?あとすこししかないですよ!!」
「待て待て。そう焦るな。あと少しだから・・・」
「あ!!圏外になっちゃった」
「仕方ない。ほんとあとちょっとだから・・・!!ほら」
そうして、頂上に着いた瞬間。
「おぉぉ~」
僕は、そんな感想しか湧いてこなかった。なぜなら、そんな言葉しか出てこないほど、絶景だったから。
「あ、ちょうど花火が!!」
上がった花火が、ゆっくりと、花のように開花して、暗く染まった海に落ちる。花火の光が、暗い町と海を照らして、それがまた綺麗だった。
「先輩」
「お、おい。優希」
「こういうときくらい、許してくださいよ」
「わかったよ」
これが、形に残る『幸せ』なんだろう。僕が、あの頃から夢見てきた、本当の『平和』。二人の後輩に好かれていて、面倒くさい毎日を送っているが、それもまた、悪くないんだろう。
「ねぇ、先輩」
「なんだよ」
と、その瞬間。
「○○○○____」
「っ・・・」
花火の音で、その声は掻き消されてしまった。しかし、口の動きでは、こう言っていた。
「大好きですよ」
漫画みたいなことを言いやがって。可愛いだけあって、それでまたなんともいえない感情になるんだよ。
「ねぇねぇ、先輩。私も・・・」
そして、タイミングを見計らっていたかのように、また、
「○○○○○_____」
花火が開花すると同時に、みぞれもその言葉を言った。
「まったく、大和殿の妹と、我輩がいる前で青春を見せつけるな。まぁ、いいけどさ」
「僕は悪くないんだ」
「なんでですか?先輩が悪いんですよ?」
「は、はあ?なんで僕が」
「先輩が、私たちを好きにさせるのが悪いんです」
「そんな、暴論だろ」
そんな、祭りを過ごしたのだ。
「終わっちゃったねー」
花火も最後の一発を打ち上げて、遂に花火は終わってしまった。
「まだ帰りたくないなー」
「仕方ない。もう夜も遅いから、流石に帰るぞ」
「うーん。わかった」
「そうだ。大和殿」
「どうした?」
「もしよかったら、なんだが。帰る前に、連絡先を交換してもよいか?」
「・・・」
正直、もういいだろう。動画編集のバイトは、パソコンの方にファイルが送られているから、携帯で誤送することもなくなった。だから、仲良くなりたい人とは繋いでもいいか。
「うん。いいよ」
「え!?先輩私とは繋いでくれないのに!!」
「あ、そうだ。優希もいいよ」
「え、え・・・?ほんと?」
「あぁ、いいよ」
「やったやった!!やっと、先輩と繋げる!!」
「じゃあ優希殿!!我輩とも!!」
「先輩は、たしかにいい人なんですけど、でもやっぱ、許嫁と言われることがなくなるまでは、やめておきたいです」
「そんなに嫌かね」
「当たり前ですよ。私には好きな人がいるんですから」
「まあ、それもそうか。とにかく、大和殿とは繋げたから、我輩はこれで満足だ」
「じゃあ、そろそろお開きにしますか」
「じゃあ、さらばだ!!また機会があれば、どこかで会おう!!」
そうして、王子様は去っていった。
「じゃあ、二人とも。送ってくよ」
「え?いいですよ、そんなの。悪いですよ」
「大丈夫だって。真愛も連れてくし」
「そうですそうです!!」
「んー、まあ。甘えてもいいですか?」
「うん。いいよ」
そうして僕らは、二人の迎えをするのだった。
家に着けば、また静かな夜が始まってしまった。真愛がいるから、一人ではない。が、やっぱり物足りなさを感じる。
「まったく、僕は優希に依存しすぎなんだよ」
好きに生きる。とは言ったけど、優希やみぞれを好きになる。とは言っていない。しかし、優希と過ごしたあの一週間が楽しかったのも、恋しいのもまた事実。
「はぁ、めんどくさい」
忘れて、今日はもう寝よう。そうしようとしたのだが、
「おにいちゃーん」
瞼を閉じようとする寸前で、妹によって起こされた。
「なんだよ」
「いやさ?そういえばお兄ちゃんに言ってなかったけど、私2日後、陸上の全中なの」
「そうなのか。頑張ってこいよ」
「うん。頑張ってはくるんだけど、数日はお兄ちゃんと会えないからさ。だから、最後に一緒に寝たいんだけど。いい?」
「あぁ、いいよ」
元は、こんな妹ではなかった。僕に甘えてくるような、そんな奴ではなかった。しかしまぁ、こいつにとっては、両親がいないということは、相当辛いことなんだろう。
「僕が、親になるか・・・」
こいつに、辛い思いをして欲しくないしな。




