転生者である僕が前世の力を使って・・・!?
そして放課後、僕は名も知らない少女に呼び出されていた。
「なんなんだよ一体。話してやっただろ?」
「はい。まずその事について感謝をします。聞いた内容によれば相変わらず塩対応を貫いたようですが、それでも優希は嬉しそうで、また彼女に笑顔が灯りました。ありがとうございます」
「あーはいはい。それはわかった。で、本題はなんだ?」
「あぁ、えっと、関わるようになって一日が過ぎましたが、どうでした?」
別に、この少女だったら本音を打ち明かしても良いだろうと思った僕は、本音をぶつけるのだった。
「正直言って、やっぱりだるい。そのまま関わらないでいればと、少し後悔した部分もあった。けど、約束は約束だからな。それを破ったりはしねぇよ」
「そう、ですか。まだ優希のことは好きになれませんか?」
「そうだな。なれない。しかし、どうしてそこまで好きになってほしいんだ?」
「あー。えっと、私としても親友とあなたには仲良くしてもらいたいので」
少し、目が上の空になっているが、まぁ細かいことは追求しない方がいいんだろう。
「なるほど。しかし、悪い。それでも好きにはなれない」
「そう、ですか・・・。だったら、私は責任を負うと決めました。だから、いつでも相談に乗ります。なので・・・その、連絡先を繋いでくれませんか?」
「あー。えっと」
少し、悩んだ。できるだけ身近な人物とは繋ぎたくないが、こいつならうるさく通知を鳴らしたりはしないだろう。しかし、やっぱり身バレは怖い。
「あ、あの、無理だったらそれでいいんですけど」
悩んでいる暇なんてないか。まぁ、彼女が優しさをもって言い出してくれたんだ。だったら、
「わかった。繋ぐか」
そう言って、僕は初めて身近な人物と連絡先を交換するのであった。
「それで、なんだが。一応名前を教えてくれないか?」
「あぁ。そういえば言ってませんでしたね。私の名前は夢川涼緩です」
「みぞれか。まぁ、みぞれでいいか?」
「呼び方は、なんでもいいです。それじゃあ、用は済んだので」
そう言って、みぞれは去っていった。まぁ、やることないし、僕も帰るかぁ。
「・・・本だけ買って帰ろ」
そうして、僕が家に帰宅すると、
「なんか、靴が一つ多い気がする」
僕の家には、靴は2足程度しかなかったはずなのに、何故か3足目があった。そして、この靴は、
「何しに来た」
「ん?最近会ってないなーと思って。来ちゃった」
「聞いてねぇし」
「ま、言ってないからねー」
僕が今会話をしている人は、僕の妹の、新神 真愛2つ下の中学三年生だ。何故苗字が違うのかというと、この前も説明したが、両親同士が離婚しているからである。
「大丈夫なんか?あいつ、面倒くせぇだろ」
「別に大丈夫。今日は上機嫌だったし」
「そうか。手を出されたりはしてないか?」
「大丈夫だって。心配しすぎ」
「だってな。あんなクズ男なんだぞ?そんなクズだったら、未成年のお前にも手を出しかねん」
「ないから。でも、心配してくれてありがとう」
「なにかあったら、僕の家まで来いよ」
「そのときはねー」
「それで、なんだが」
僕は、真愛に最近合ったことを話した。
「えぇ!?そうなの!?」
「そうなんだ。それが事実なんだ」
「こんな冴えない兄が!?」
「おっと、僕が優しくなかったら遠慮なくしばいていたところだったな」
そんな僕の言葉を無視するかのように、
「はやく言ってよ!!お兄ちゃん、なにしてるの!?今すぐ付き合って!!」
「なんでだよ」
「これは千載一遇のチャンスなんだよ!?それを、自ら逃しに行くって言うの!?」
「好きじゃねぇのに、付き合う意味はあるか?」
「ない、けど・・・。でも!!そんな人逃しちゃだめだよ!!」
あぁ。うるせぇな。と思いつつも、僕はその後も真愛と他愛もない世間話を繰り広げるのであった。
次の日、祝日だったので、僕は興味を探しに町を出歩いていた。しかし、僕の興味を引くものはなにもなかった。なんでなんだろう。僕はたった数年眠ってただけのはずなのに、その数年の間で物欲などの全ての欲を感じなくなった。それが、謎でしかないんだよな。そんなことを考えながら、町を歩き続けていると。なにやら、人集りができていた。中心には有名人がいるのか。と思った。しかし、それは違ったようで。
「あれは、優希?」
よく見れば、中心にいたのは優希だった。そして、周りにいる人物が全員男なことから、恐らくナンパなんだろう。
「美女というのも、大変だな」
しかし、それは彼女が彼女自身で解決しなければいけない問題だ。僕は、こういうときこそ手を貸す必要はないだろう。それに、
「たす、けて・・・」
心が変わった。その一言で、僕は気づけば動き出していた。そして、
「うわっ!?」
近くにいた一人の男を、殴り飛ばしていた。
「威力をミスったか」
僕が殴った男は、数秒もしないうちに気絶してしまったようだ。まだ、そこらの力加減はできていないか。少し、直せねばならんところだな。しかし、今はそれどころじゃない。
「お、お前、何者なんだ!?」
何者か。という問いに。
「俺は、世界最強の称号を手に入れたことがある人間だよ」
「それってつまり・・・」
「あぁ。柔道世界一位だ」
咄嗟に出た嘘がそれだった。実際、そんなの取ったことがないが。前世を遡れば、たしかに世界最強の座に君臨していたが。
「それで、まだやるのか?」
そう僕が挑発をすると、
「す、すみませんでした!!」
と言って、その男たちは去っていった。
「いや、仲間は助けてやれよ」
倒れた男をどうしようかと考えつつも、
「大丈夫か?」
「え、えぇ。ありがとうございます。先輩、強いんですね」
「本当は助けないつもりだったんだがな。お前が助けてなんて吐露するから、仕方なく助けてやっただけだ」
僕がそんなことを言うと、
「ふふっ」
突然、優希が笑いだした。
「なんだよ。なにがおかしい」
「いいえ?しかし、やっぱり先輩は優しい人なんだなと思って」
「助けたのは、今回ばかりだけだ。次回からは自分でなんとか出来るようにしろよ?」
「はーい」
しかし、本当に助けるつもりはなかった。ただ、僕が平和主義者なだけで、その言葉を聞いたとき、反応的に動き出していただけだ。
「まだ、前世が抜けきっていないか」
そんな僕の甘さに少し反省を感じつつ、つかれた僕は自宅へと帰るのだった。