同居生活最終日
そうして、僕らは遊び続けていたら、すっかり辺りも暗くなってしまった。この充実した1週間の夏休みが、終わりを迎えるのだ。
「まだ、終わって欲しくないです」
「だな。まあ、最後に観覧車にでも行くか?」
「いいの?じゃあ、行きましょ」
そうして。
「この観覧車は上限二人までとさせていただいております」
「え、そうなんですか?うーん。困ったなぁ」
すると、
「ねぇ。観覧車は、先輩と一緒に行っていい?」
「え?」
「だって、迷路では行けなかったからさ。それに、先輩と話したいことがあるの」
「お、おう。そうなの。まぁ、いいよ。その方が平等だもんね」
「んー。まあ、わかった。行くか。みぞれ」
「はい!!」
そんなこんなで、僕はみぞれと観覧車に乗った。
「それで、話したいことってなんなんだ?」
「その前に、先輩は、好きな人はいますか?」
「それ、昨日もしただろ。いないよ」
「そう、ですか・・・。でもね、先輩」
改まって、みぞれがこちらに向き合った。
「っ・・・」
言うの。言うの。私。勇気を出すの。私は、先輩のことが好きだ。だから、告白しようと思った。のだが、肝心なところで、その言葉が出てこない。
「どうしたんだよ、一体」
先輩は、待ってくれているんだ。観覧車も、待つことなく回り続ける。だから、言うなら今しかないのに。なのに、どうして。いや、少し落ち着こう。
「スーッ。ハァーーー」
「なんで急に深呼吸なんか」
よし、言うしかない。いける。行けるよ。私なら、だから・・・!!
「好きです!!」
「・・・え?」
思ってもいない言葉が、彼女から唐突に伝えられた。
「す、好き?」
「はい。私は、先輩のことが・・・大和先輩のことが好きです!!」
「は、はぁ」
「だから、付き合ってください!!」
本日、3回目の告白を受けた。それは、以前とは違った別の少女から。正直、嬉しかった。みぞれも、可愛いし。優希とは違って、おとなしい子だったから。
「あ、あの。返事は」
あぁ、いかんいかん。答えをすぐに出してやらなきゃ。しかし僕は、誰にだってこう答える。だって、
「ごめん。お前のことは後輩としては好きだが、恋愛的にはまだ見れない」
僕が、彼女のことを好いていないから。
「そう、ですか。やはり、優希が」
「いや、それは一切関係ない」
「え?」
「単に、まだ好きな人がいないってだけ。だからさ、その。上から目線にはなってしまうが、好きならどんと来いよ」
「嫌ったり、しませんか?」
「そんなんで嫌うわけないだろ。安心しろよ」
「!!わかりました!!先輩、私の気持ちを聞いてくれてありがとうございます!!」
「まぁ、あとはなんか適当に話すか」
「はい!!」
これもまた、めんどくさくなりそうだ。しかしまぁ、悪い気はしない。だって、愛されているから。
そうして、それから数時間が経過し、気づけば家に着いていた。みぞれは先に家に送ったため、もう既にいなかった。
「はぁ~。終わっちゃいましたかー」
「そうだな」
これで、同居生活は終わりだ。と思ったのだが、
「ねぇ、大和くんたち。今日は夜も遅いですし、泊まっていきませんか?最終日ではありますし、日を越すまでは適応されると思うので」
んまあ、原理的にはそうか。夜だしな。今日は大人しく泊まっていくことにしよう。
そうして、本当に最後の居候をしていた。お風呂も全て済ましていたので、僕らはすぐに就寝する。
「ねぇ、先輩」
「どうした?」
「あの、最後の日ですし、一緒に寝たらだめですか?」
「・・・」
それは、答えにくかった。最終日くらい・・・と、許しを推奨する自分と、心を鬼にしろ。と囁く自分。正直言えば、一緒に寝てやってもいい。だって、こいつからしたら大事な最終日な訳だから。だから、悩んだ。そして、悩んだ末、
「まぁ、最終日くらい、いいよ」
「ほんとですか!?やったー!!」
結局僕は、許してあげるのだった。
「明日になったら、先輩はもう隣にはいないんですかぁ。寂しいです」
「仕方ない。約束は約束だからな」
ちなみに、すんなり真愛も一緒に寝ていた。まぁ、一人は寂しいか。こいつだって、色々あったわけだしな。
「ねぇ、先輩」
「どうした?」
「その、手を繋いでくれませんか?」
「ほう。そりゃどうして?」
「最後に、先輩の温もりを感じながら寝たいんです。だめ、ですか?」
「いいや。いいよ」
「えへへ、ありがとうございます。・・・先輩、相変わらず手あったかいですね」
「そうか?別にみんなこんなもんだろ」
「いや、きっと違うんです。この温もりは、先輩でしか味わえないと思うんです。私が先輩のことを好いているから。だから、特有の温もりを感じるんでしょうね」
「そうか」
「あ、なんだか・・・。ポカポカしてきました」
「そうか。眠かったら寝てもいいんだぞ」
「いや、寝たくないです!!最後の夜を楽しみたいんです」
「そっか。まぁ、そうだよな」
結局、こいつが僕のことを好いていることは変わらない。僕も、後輩としてはこいつのことを好きになってしまった。だから、気持ちもわかる。今日くらいは、いいだろう。こいつが寝るまで、僕は雑談に付き合ってやるか。




