過去
次の日、みぞれから結果を通告された。しかし、
「諦めなさい」
その言葉から、察した。みぞれは、先輩の説得に失敗したのだ。
「うそ、でしょ?嫌だよ。そんなの」
「彼は、あなたの愛にそこまで靡いている様子はなかったよ。むしろ、しつこく思っているようだった」
「でも、私は先輩の事が」
「昨日約束したでしょ?失敗したら諦めろって。だから、もう諦めなさい。愛は、そんな長く続かないから」
「でも、私は好きなの!!諦めなさいって、今さらそんなことはできない。だから、先輩がいつか心を開いてくれるようになるまで、その日を待つから」
「ほんとに、この子ったら諦めが悪いんだから。・・・はぁ、だったら好きにすればいいんじゃない?後悔したって、知らないからね?」
「今に見てなさい?絶対に、振り向かしてみせるから!!」
「はいはい。がんばってー」
棒読みで、みぞれは返してくる。いいわよ。だったら、
「本当に、やって見せるからね?」
私は、そう心に決めたのだった。
次の日、学校へ登校すると、朝から妙なざわめきが起きていた。そして、そのざわめきが起こっている正体は、
「今日の優希さん、一段と綺麗ですね!!!」
「あぁ、今日の優希様もとてもお美しいです!!」
そんな言葉が、端々から聞こえる。しかし、僕はそんなの眼中にも留めなかった。故に僕は、そのまま通りすぎるのだった。
「・・・嘘でしょ?」
そしてまた、昼休み。図書室で本を読んでいると、
「わぁ、綺麗・・・」
そこには、また話題の優希が現れた。しかし、僕は無視をして本を読み続ける。
「なんで・・・」
なんで、靡かないのよ!!そんな怒りが、私の脳内を駆け巡るのだった。
それから、先輩の目に留まるところで、私はアピールをし続けた。しかし、
「だめだ・・・」
流石に、落胆しざるを得なかった。
「やっぱり、諦めた方がいいんじゃない?」
「(*´・ω・)」
「だめだこりゃ」
もう、なにも考えられない。一体、どうしたら先輩は私に靡いてくれるの?
「・・・あーもう。埒が明かない。そんなに先輩の事が諦めきれないの?」
「う、うん」
「だったら、私がなんとかしてあげるわよ!!いくらなんでも、親友にそんな顔をされるのは嫌だし」
「お、おぉ!!頼りになる・・・!!」
こう見えてみぞれは、そこそこ男勝りな性格をしている。そして、説得上手だ。みぞれにかかったら、先輩をなんとか説得してくれるだろう。私は、みぞれにそんな期待を込めたのだった。
そうして次の日、僕がのんびりとしていると。
「ちょっと、先輩」
そう、僕を呼ぶ声が聞こえた。しかし、その声は、この前の厄介な女と同じ声をしていたので、
「・・・」
僕は、フルシカトをすることにした。何度も、話しかけてくるが、その度に僕は無視をする。すると、
「いい加減反応しなさいな!!」
「あいたっ」
突然、ビンタをされてしまった。
「なにするんだよ」
「あんたが無視するからでしょ!?嫌だったらはよ反応しなさいな」
「んだよ。ったく。・・・で、何の用なんだ。またあいつの話をしたら、本当にこれ以上口を聞かないからな?」
「いや、今回は優希の話ではない。けど、一部そうなのかもしれない」
「だったら、」
「最後まで聞いて。ねぇ、なんであなたはそんなにも人に興味がないの?」
「っ・・・」
「答えにくい?だったら、無理に答えなくてもいいけど」
「いや、別に答えれないわけではない。しかし・・・」
少し、無意識に苛ついてしまうかもしれないのだ。
「聞きたいか?」
「先輩が、いやな感情にならないのなら」
「だったら、話すとしよう」
そうして、僕は彼女に好きにならない理由を話した。
一応、説明をしておくが、僕は転生者だ。過去に何度も世界を渡り歩いて、そして現世に生まれた。そんな僕にも、一応親はいた。父と、母。しかし、僕の父親はクズ当然の人だった。僕と、妹が生まれてから、狂ったかのように母親にDVを喰らわすようになった。そして、虐げるだけ虐げて、最後は別の女を取っ捕まえて不倫。そして、離婚をした。追加で、女好きな父親は、僕の妹を引き連れていった。そして、僕の母親は、父が不倫して離婚してから、狂ったように働き暮れた。そのせいで、少し前に死んだ。クズな父親が起こした出来事によって、僕は段々と『愛』というものが信じられなくなった。もちろん、前世で結婚しているからというのもあるが、それとこれが重なって、人に愛想を尽くした。そんな、過去があるのだ。
「なるほど。辛い過去をお話しさせてしまって申し訳ございません」
「いや、いいんだ。辛くなんかない」
「だったら、優希と話そうとしないのも、他人と会話することを避けるのも、納得がいきます。しかし、私は変わらず優希の親友です。あなたにそんな過去があるとは知りませんでした。しかし、優希と友達まではいかなくても、話すくらいだったら、許してやれないでしょうか?優希があんな顔をするところを、私は見たくないんです」
「友達思いなのは、よく伝わった。しかし、彼女が僕に近づくことは、どちらにとっても辛い未来を産み出す。故に、彼女と関わることはできない」
「そう、ですか。だったら、私が責任を負います」
「・・・え?」
突然、彼女はそんなことを言い出す。
「もし、なにか面倒なことを引き起こしたら、私が責任を負います。だから、その代わりに優希にまた笑顔を灯してください!!」
「なんで、お前が背負う必要があるんだよ」
「優希の、親友だからですよ。お互い支え合うのが、親友じゃないんですか?」
「なるほど。僕はあまりそういうのは分からないが、それが親友だっていうなら、引き受けるしかないだろう。しかし、一つ条件がある」
「それは?」
「絶対に、無理はするなよ」
「っ。わかりました。それじゃあ結果は、優希とまた会話をしてくれるっていうことでいいんですね?」
「あぁ。それでいい」
「!!わかりました。ありがとうございました!!」
そうして、余程親友とまた会話させることが出来るのが嬉しいのか、笑顔で彼女は去っていった。
「まぁ」
たしかに、僕は人に興味がない。しかし、助けることはできる。もし、名も知らない彼女が、自分を追いやりすぎて、心を沈ませるときがあったら、
「その時は、助けてやるか」
と、そんな感想を抱くのだった。