あの大人気youtuberが引退を発表した!?
ネットに投稿されていた画像には、
「100万人を越えるyoutuber、まさかの彼女がいたそう」
というタイトルで、一枚の写真が掲示されていた。その写真に映る人物は、高校生ほどの身長の男子と、それより少し低い女子。そして、見慣れた風景。その人物は他でもない、この僕だった。
「なんで、なんで・・・」
僕は今まで、彼女がいないという事実を言い続けてきた。しかし今日、視聴者に写真を撮られたことによって、ネットには最大の勘違いが生まれている。
「どうすんだよこれ」
すぐに弁解しても、意味がない。それに、これだけバズっていたら、もしかしたらみぞれや優希、もしくは同級生にバレてしまう可能性も出てくる。
「さて、どうするべきか」
冷静に考えるとしよう。まず、この写真が出回っている時点で、弁解しようにも、ネットの民は頷くはずがない。だから、認める可能性も否めない。だとしたら、みぞれに迷惑がかかってしまう。だから、僕は、とある一つの方法を考えた。
「ここぞ、引退か?」
なにも言わず、適当な理由をつけて、引退すればいいんじゃないだろうか。そしたら、ある程度推測はされても、結局は活動をやめた。だから、問題はなくなるはずだ。ただ、ネット上が騒ぎを起こすだけで、別に問題はない。
「まぁ、ちょうど辞め時だよな」
正直続けていても意味がないだろう。だって、今は流行りの活動者でも、いずれはオワコン化することを避けられない。だから、人気がなくなる前に、引退した方が、僕としても楽なわけだ。
「正直、新たな楽しみが出来たしな」
今は、それがあれば十分だとも思える。だったらそろそろ、引退するか?
「それしか、鎮める方法がないと思うしな」
だったら、いいだろう。別に、視聴者になんと言われたっていい。炎上したっていい。僕が引退動画を上げてしまえば、僕は活動者ではなくなるから。ただの、一般人に戻ることが出来るから。だから、引退動画を作成しよう。
それから、二時間ほど、引退動画を作り上げて、ようやく完成したので、僕は・・・。
「悔いは、ない」
その、投稿するボタンを、押した。
「これで、終わりだ」
ダウンロードが進む。着々と、元活動者となる時間が迫ってきた。
「これで、いい」
よし、それじゃあ。引退も決まったことだし、飯でも作るか。
夜食を作っている最中、
「ちょっとお兄ちゃん!!」
「なんだよ騒がしいな」
「引退ってほんと!?」
「だったら、あんな動画挙げてねぇよ」
おそらく引退動画を見たであろう、僕の妹が、うるさくリビングに登場した。
「なんでそんな急に!!」
「別に。ちょうどやめたかったし。それに、あの騒動を弁解できる余地がないんだよ。だから、僕は開き直って、普通の、ただの一般人になることにしたんだよ」
「そんな、別にそんなことをしなくても・・・」
「別にいいだろ。それよりも、もう飯は食べるか?」
「食べる、けど」
「引退した事実は変えられない。さっさと終わらせろ。改めて言う」
僕は、力のこもった声で、言い放った。
「100万人もの登録者を誇ったyoutuber、柴田優生は、引退した」
「・・・そう、なんだね。わかった」
「じゃあ、飯食うか」
「うん」
たしかに、真愛は僕の実妹でありながら、柴田優生のファンだった。だから、悲しいのはわかる。
「でもまた、これからネットが荒れるんだろうなぁ」
その予想は的中した。次の日、僕は取材を受けていた。
「どうして、Youtubeをやめたんですか!?」
うるさい。うるさいマスコミが、僕の元へとやってきていた。まあ、そりゃそうか。朝起きて、ネットの反応を見てみたら、数々の考察コメントで溢れ返っていた。
「やはり、あの熱愛報道が関係してるんでしょうか」
あーもう、めんどくさい。僕はただ、学校へ行きたいだけなんだよ。だから、はやく終わらせるために、僕は言い放つ。
「はて。僕は、ただの一般人です。一般人が、恋愛をしたらだめなんですか?」
と、僕が言うと、スタッフ一同、沈黙を返してきた。
「やめてください。僕は学校なんです」
僕は、現在は一般人だ。そんな、騒ぎになるようなことをした覚えはない。
それからも、学校ではその話で持ちきりだった。何故か、主が僕ということはバレていないが、それでも、あちこちで僕の引退についての話があがっていた。また、放課後。僕が一人で帰っていたら、
「もう一度お聞かせください!!何故突然Youtubeをやめられたんですか?」
もう、正直しんどい。
「だから何度も言ってるだろ。僕はただの一般人だ」
「あの熱愛は本当なんでしょうか!?」
なんだよ。そんなに知りたいのか?だったら、教えてやるよ。
「あぁ、たしかに俺は、元々は活動者だった。けどな、引退した理由、お前たちが一番わかってんじゃねぇのか?なぁ、マスコミも、視聴者一同も・・・。お前たちが、俺の配信活動を壊したんだよ。全て、お前たちのせいで起こった出来事なのに、たった引退しただけで、それと、後輩と遊んだだけで・・・。熱愛だって。騒ぎ喚いて。何様なんだよ。ほんと。もう一度言うからな。いや、何度だって。俺の配信活動を壊したのは、視聴者、マスコミ含めた全員なんだよ」
僕がそう言うと、またマスコミは黙った。
「チッ。都合のいいときに黙り込むのかよ。しょーもねぇ」
不機嫌な態度を見せて、僕は再び帰路をたどった。見る限り、あれは生放送だったんだろう。後ろを振り返ると、マスコミはおっ返してきてはないようだ。
「最初からやらなければよかった」
こんなことになるくらいなら。




