言い争いになってしまいました!?
その日から、優希のアピールが始まった。僕が校門に入ってすぐ、
「先輩。おはようございます」
と言って、腕にしがみついてくる。
「邪魔くさいんだが」
「関係ないです。私は先輩のことが好きなんで」
もはや、ここまで来ると慣れてきたもんだな。慣れって恐ろしいな。好きと言われることに、慣れる日が来るとは。
「いいからどけ。周りの視線がいたい」
「先輩。そんなの、気にしてちゃダメなんですよ?気にするから痛いんじゃないですか」
「それはお前にしか出来ないんだよ。僕が必ず出来るってわけじゃない」
「そこは気合いですよ」
・・・根性論。
「とにかく、だ。暑苦しいから離れろ」
「いやですー」
僕自身、こいつがくっついてくる理由は理解している。それは、新堂さんの許嫁にならないこと。なってしまったら、僕を好きになれないから。だから、こうやって僕にべったりして、新堂さんにアピールしているんだろう。そして、そんな中で、
「おや?これはこれは。大和殿と優希君じゃないか」
「うげっ」
「あぁ、新堂さん」
「ごきげんよう。諸君」
そう言うと、周りの女子達が一斉にキャーと騒ぐ。
「あぁ。うるさい」
「これじゃあ私の声も聞こえないね。先輩。好きですよ」
「がっつり聞こえてるわ!!」
「相も変わらず、仲が良いようだな」
「そうですよ。私と先輩は仲が良い・・・いや、なんなら恋人関係です。だから先輩、諦めてください」
「いや付き合ってねぇよ!!勝手に捏造するな」
「はははっ。面白い冗談を言うじゃないか。どうだ?我輩と付き合ったらプラスな事しかないんだぞ?お金だっていくらでもあるし、自由な生活待ったなしだ!!どうだ。勇ましいだろ!?」
「そんなことはありません。私は普通の生活がいいんです!!」
「ほう。なら・・・」
「そこまでだ」
「ん。なんだ。どうした、大和殿」
止めざるを、得なかった。周りの視線が痛すぎる。だって、学園一の美少女と、学園一の美男子が言い争っているんだ。そして、その傍にはごく平凡な男子がいる。それだけで、だいぶ異例なことなんだ。それに加えて、周りの人たちはこちらを見つめている。耐えられるわけがないだろう。だって、まだ優希はくっついたままだから。
「とりあえずお前は離れろ!!」
「きゃっ!!ちょっと!!」
無理矢理引き剥がして、僕は告げる。
「とにかく、僕は無関係だ!!」
そう言って、走り出す。
「待たんか!!大和殿!!」
そんな声も無視して、僕は教室へと向かうのであった。
案の定、昼休みに僕らは集まっていた。
「なんで僕が・・・」
僕が一番の被害者だろうが。
「お前はいつになったら離れるんだ」
「先輩が奪われてしまうかもしれないから」
「僕はうばわれねぇっての」
「それで、だ。白夢殿、我輩と結婚しないか?」
「いやです。私は大和先輩と結婚します」
「と、言っているが。大和殿の意見は?」
「絶対にしない」
「なんでそんなキッパリと!?」
めんどくさそうだ。
「とにかく、です。私はあなたと結婚しません」
「相も変わらず、愛が深いなぁ。これでカップルと言われない方がおかしいとまで思ってしまう」
「僕は付き合う気なんか一切ない」
「白夢君。面倒くさいと思わないのかい?」
「正直言えば、ちょっとめんどくさい」
「・・・。こいつ」
「でも、そういうところが好きだったりするんです」
これでもって、可愛いのがずるいんだよなぁ。
「そう焦らなくたっていいんだ。時間はたっぷりとある。そこで愛情を注ぎ込もうじゃないか」
「はぁ。何度も言っているように、私はあなたと結婚するつもりはありません。まず、お母さんが勝手にお見合いにさせたのが悪いんですよ」
「しかし、我輩のお父様の目に留まってしまったものは仕方がない。お見合い相手に決定された以上、白夢君は我輩と結婚する運命を辿るしかないのだ」
「・・・」
正直、もう必要ないだろう。本当に、僕は無関係な人間だから。だから、こっそりと・・・
「おっと。大和殿?勝手に抜け出そうなど、許されると思うなよ?」
ですよねー。わかってました。
「先輩。大事な大事な後輩が絡まれてるんですよ?助けてくださいよ」
「しらねぇ」
「ちょっと!!まぁ、そういう無責任なところも良かったりしますけど」
じゃあもう、僕がなにをしてもこいつの癖に刺さるじゃねぇか。
「僕がいる意味があるか?」
「ありますよ。先輩は私の味方をする義務がありますよ」
「そんな義務はない」
「とにかく白夢君。はやめに検討をお願いするぞ」
そう言うと、学校のチャイムが鳴り響いた。つまり、昼休みが終了したってことだ。ったく、無駄な昼休みを過ごしたもんだ。
「なんでこんな目に・・・」
そう肩を落としながら、僕は五限目の準備を始めるのだった。
放課後、僕が靴に履き替えようとして、下駄箱へ向かうと、そんな僕を待っていたかのように、優希が立っていた。
「あっ。先輩!!」
「なんでいつも待ってんだよ」
「私は、先輩と一緒に帰りたいので」
ここで断っても、こいつはそれをフルシカトして後ろをついてくる。つまり、意味がないのだ。だから、仕方なく承諾して、一緒に帰るのだった。
「先輩は、私がお見合いに出ることはどう思っているんですか?」
いきなり、そんな質問をされる。
「どうって・・・別に、どうだっていい」
「んっ。私がほしいのはその言葉じゃないんですよ」
「はぁ?だったらなんだよ」
「だから・・・。その。あれですよ」
「あれ?あれって言われてもわかんねぇよ」
「だから・・・!!まぁ、もういいです。じゃあ、先輩」
「なんだよ」
「先輩は、私の事は好きですか?」
「さっきからなんなんだよ」
「いいから答えてください。あ、友達とかではなくて、恋愛的な意味で、ですよ」
「恋愛的・・・。それだったら、別に好きじゃない」
そう言うと、優希はいつもと違った反応を見せた。
「そう、ですか」
未だに好かれていないのが気にならなかったのか、少しだけしょんぼりとしてしまった。
「なんだよ」
「いや、いいんです」
「?」
終始彼女の意図が分からずとも、とりあえず帰路を辿るのだった。




