学園一の美少女に大和が・・・
彼女が、こんなにも積極的な少女だったとは知らなかった。現在、昼休みになったばかりだ。しかし、これまでの休み時間、
彼女は必ず会いに来た。棟も違うのに、そしてそこそこ距離があるのに、10分しかない休み時間の間に、必ず会いに来た。だから、おそらく昼休みも会いに来るのだろう。さて、ここからが本題だ。ここから、僕がどう行動するかによって未来が変わってくる。いつもなら、人目のつかないところで飯を貪る。例えば、学校の屋上とか。屋上と聞いたら、みんなが集まる場所だと思うだろう。しかし生憎、僕の学校は屋上は基本立ち入り禁止だ。なんで、そんな場所に僕は足を運んでいるのかって?・・・まぁ、細かいことは気にしなくたっていいんだよ。そうして僕は、いつものように屋上へ向かうか、それとも優希を待っておいた方がいいのか。それについて悩んでいると。
「せんぱーい!!」
「あっ」
しまった!!悩みすぎてしまった。そして彼女がそう言った瞬間、クラス中の視線が一気に集まる。
「と、とりあえず、場所を変えるぞ」
「ど、どこに!?」
「いいから!!」
そうして僕は無意識に優希の手を引っ張って、とりあえずどこかへ走るのだった。
そうして僕は、いつもの屋上にやって来ていた。
「えっと、屋上って立ち入り禁止じゃ・・・」
「細かいことは気にするな」
「いやいや、気にしますよ」
少々口うるさい奴だな。と思いつつ、
「それで、何しに来た」
「それはもちろん、先輩とお昼ごはんを食べようと思って!!」
「はぁ」
「なんでため息つくんですか!?」
そりゃそうだろ。こんなに、積極的だとは思っていなかったし、それに少ししつこい。
「なんで、こんな美少女がわざわざ会いに来て、そして一緒にお昼ごはんを食べようって誘っているのに、それなのにため息とは。あなたはどれだけ理想が高いんですか」
「いや、自分で美少女って言うなよ」
まぁ、言っていることは間違ってないんですけどね???なんか、それを言われると無償にうざく感じるぞ???
「とにかく、弁当を出してください」
「いや、持ってきてないが」
「え?どうして?」
「必要ないかと思って、今日は持ってきていない」
「そんな。体に悪いですよ?」
「いいんだよ。別に」
実際、過去の世界で十分に食料を蓄えれない生活を送ってきた。故に、空腹には耐性がついていた。
「じゃあ、食材少し分けてあげますから」
「いらない」
「どうして!!」
「母さんが丹精込めて作ってくれたんだろ。味わって食え」
「いや、手作りですけど?」
「うそ、だろ・・・?」
手作りで、このクオリティー?だとしたら、どれだけ料理が上手いんだ。
「とにかく、いらない。自分で作ったなら、それはそれで自分で食え」
「んー。頑固ですねぇー」
そうして僕は、近くのベンチに寝そべる。
「にしても、あの時先輩が手を繋いでくれた。へへっ」
そんな、気持ち悪い独り言が聞こえてくるが、そんなのを無視して、僕はこの引っ付き虫が去るのを待っていた。
そうして、教室に戻ると、その瞬間、生徒が僕の元へと飛んできた。
「おい!!お前あの美少女とどういう関係だよ!!」
「ナンパでもしたの!?」
「許さない。あんな美少女がこんな奴に引っ付いてもらっているなんて」
そんな、また面倒事に巻き込まれる。こりゃ、説明しても聞く耳持たないだろう。
「はぁ。面倒くせぇ」
やっぱり、学園内の有名人とは関わりなんて持ちたくなかった。僕は、
「こんな面倒事に絡まれるのは、苦手なんだよ」
と、小さくそう溢すのだった。
そうして、放課後になってすぐ、俺は帰り出していた。全ては、彼女に見つからないように。しかし、学校を出てすぐ。
「先輩!!」
間もない内に、彼女に見つかってしまった。しかし、ここで反応するような、僕はそんな甘い男じゃない。だから、
「・・・」
僕は、無視を貫くことにした。
「ちょっと!!先輩?」
そう何度も声をかけられても、無視する。もう、これ以上関わりたいと思わないから。だから、無視する。
「先輩。怒りますよ?」
段々と、彼女の声のトーンが下がる。本気で怒っている様子だった。しかし、それでも僕は無視を貫く。すると、
「だったら・・・えいっ!!」
「!!あほ!!」
突然、彼女が抱きついてきた。流石に、それに反応せざるを得ない。無理矢理引き剥がして、そして、
「先輩!!待ってくださいよ!!」
全力疾走する。しかし、僕は歩きで、彼女は自転車。自転車のスピードに勝てるわけもなく。
「なんで、どうしてそんなに冷たいんですか。先輩」
そう、優希は怒っている様子だった。だから、僕は正直な気持ちを伝える。
「鬱陶しいんだ。しつこく会いに来て。こうやって、登下校も一緒にしたりして。そりゃあ、仕方ないことではある。だって、好きならそうしてしまうから。だから仕方ないっていう部分もある。けど、うんざりなんだ。お前が関わってきて、そして面倒事に巻き込まれるのがうんざりなんだ。だから、もう関わるな。もう少し、お前は人気者である自覚を持て」
「っ・・・」
そうして、僕は彼女に背を向け、歩き出す。もう、彼女が追ってくる気配はなかった。ほんの小さく、彼女が啜り泣く音が聞こえてきたが、もう、そんなの気にしてられない。
「これで、いいんだ」
僕にとっても、彼女にとっても、これが一番いい選択だろう。だから、僕はもう振り返ることもなく、帰路を辿るのだった。