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言語の秘密

 現在のアグリニオンおける謎のひとつに言語がある。


 この世界に存在するほぼすべての言語を巧みに操るグワラニーや彼の配下と限定しなくても、人間の言葉を解す魔族の者は少なくない。


 それとは逆に人間はこの世界で最も古い言語である魔族の言葉を理解できない。

 しかも、このことは教育水準の低い平民クラスに限定されず、たとえば知の塊でブリターニャ王国の第一王子という地位にあるアリスト・ブリターニャのような者であっても例外ではないのだ。

 つまり、どのような状況であろうとも、魔族と人間が言葉によるコミュニケーションを取ろうとする場合は、必ず人間側の言語を使用することになるわけである。


 そして、それによって何が起こるのか?


 魔族は人間の会話を理解できるが、人間は魔族の話している内容がわからないという事態。

 そして、情報収集という観点でいえば、これは一方に圧倒的な不利益が生じる。

 それにもかかわらず、人間側が公式非公式問わず魔族の言葉を理解する努力をおこなってこなかったのはなぜなのか?

 それは「魔族はこの世に存在してはならぬもの」という金看板のような人間世界の理があるからであり、つい最近まで魔族の言葉を理解しようとしただけで裏切り者として死刑になっていたという事実がそれを証明している。


 だが、そうであっても、それは一方についての理由であり、多くの魔族が人間の言葉を理解できることの説明にはなっていない。

 しかも、この世界での人間は魔族に使役される者からその歴史が始まっていることを考えれば、逆はあっても、絶対的支配者である魔族が道具扱いしていた人間の言葉を使用してコミュニケーションを取るなどありえないことなのである。


 ありえない。

 極言に聞こえるかもしれないし、実際にこれはそれに近い表現ではある。

 では、そこまで言い切るだけの根拠はどこにあるのか?

 実を言えば、それは別の世界に存在する。


 そこでは、これとは逆、つまり支配する側が被支配者の言葉を封じ、それどころか焚書等を通じて存在そのものを抹殺し、自分たちの言葉だけを使用させることがその歴史上頻繁に起こっており、その結果多くの文字が重要情報とともにこの世から消えている。

 そして、それこそが力によって支配する者の本来の姿に思える。


 では、なぜ絶対的な立場だった当時の魔族が相手の言葉を使って人間たちと会話していたのか?


 それこそが一方だけが相手の言語を理解できるというこの奇妙な問題に深く関わってくる。


 そして、その答えがこれである。


 魔族の公的な記録で十一代目とされる魔族の王による第一言語から始まる八つの言語の下賜。


 つまり、現在魔族の言葉を忌み嫌っている人間たちが使用している自らの言葉の基礎部分も実は魔族によってつくられていたのである。

 ちなみに、現在共通語と呼ばれ異なる言語を使用する他国との交流の際に使用されるブリターニャ語は、第一言語が進化したものである。


「神聖なる我らの言葉を下賤な者が口にするなど我慢ならない。奴らには奴ら自身の言葉を与え、以降奴らが我らの言葉を口にすることを禁じよ」


 そして、これがその命令を発した魔族の王がそのときに口にした理由となる。


 ちなみに、このときに魔族の王はその言語を使う種族ごとにアルファベットのAから始まる名が書かれたリストを例の法則とともに与えている。

 そう。

 この世界とは無関係な世界から拝借したと思われる名が唐突に使われ出したのもこの王の命によるものなのである。


 つまり……。

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