第4話
どーもMomijiです!
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次話は明日の17時投稿予定です!!
自分の教室に向かって暗い廊下を歩く。
と、まだ教室の明かりが付いている。
まだ誰かいるのだろうか?
不思議に思い窓から教室を覗いて見た。
なんと、俺の教室で男女がキスしていやがる。
しかも濃厚にベロとベロを絡み合わせてお互いを貪りあっていた。
つーかあれ、元カノじゃん。
自分を元恋人が他の男とベロチューしてるの見せられるなんて、どんなプレイだよ。
俺がなかなかドアを開けないのを不思議に思ったのか、横から青倉も覗き込んでくる。
「…………ちっ…」
その光景を見た青倉は舌打ちをし、顔を歪ませる。ま、そうだよな、人がちちくりあってるのをみて嬉しい人間はいない。
青倉は大きなため息をこぼす。
「はぁ……」
「ため息つくと幸せが逃げて行くらしいぞ……?」
「んなもん、もうどっか行っちゃったあとよ。アタシには絶望しか残ってないんだ」
3角座りをし、見るからに落ち込む青倉。
その姿を見て、何となく事態を察することができた。
「あれ、お前の元彼……?」
「……はぁ、あんたデリカシーの欠片もないの?」
「おう、すまない」
「……正解。あいつがアタシの元彼よ」
そう言って顔を伏せ項垂れる。
昼休みに泣いて少し元気になったとは言え、まだ吹っ切れているかと聞かれればNOだ。お互いに……。
「先輩もその顔は……元カノだったパターン?」
「ご名答ー……。ご褒美に飴ちゃんあげる」
青倉はいらないとだけ言ってまた黙ってしまった。
しばらく沈黙が続き、教室の中から声が聞こえる。
「ねぇ、好きよケン君。世界で1番愛してる」
「あぁ、僕もだよ。世界で君だけしか愛せない」
愛を確かめ合った2人はまたイチャつきだす。
世界で1番だの世界で君だけだの、お前らは知るわけもないよな、世界で1番残酷なことをしているなんて。
そんなことを知る由もなく、チャラ男達はイチャつき続ける。
「あぁ、なんて香織は美しんだ……」
「もう…、そんなこと言ったって何も出ないんだからね」
「いいや、嘘じゃない。アイツとは大違いだよ」
「アイツってあなたと付き合ってた後輩ちゃんのこと?」
「そうだよ。まず見た目がな、明らかに遊んでる感じするしな……。付き合っててもあんまり一途な感じしなかったし」
某有名配信者なら「あなたの感想ですよね?」で切り捨てられるレベルの圧倒的主観。なんの根拠もないのにアイツは青倉を捨てたのか……?
お前はそんなやつじゃないとフォローを入れるも、青倉は顔を上げずに膝に顔を埋めたままだ。
まぁ、無理もないか。
「それに比べて、香織はほんとに一途だよな。僕を愛してくれて尽くしてくれる」
あぁ、反吐が出そうだ。
万が一にも一途なら、香織はあの日、お前とデートなんか行って居ないだろ。そんな不誠実の人間が1人の人間をいつまでも愛し尽くすことができるかよ。
「ま、君もあのパッとしない男と別れられて清々したろ?全く君に唯一欠点があるとしたら、過去に選んだ男がアレだったことだろう」
「ええそうね、かなり後悔してるわ。第1、あの人は私に釣り合わなかったのよ。付き合って上げてただけでも感謝して欲しいわ」
後悔ねぇ……
確かに、俺は勉強も毎回赤点をギリギリ回避するどうかだし、スポーツだって下の上ぐらいだ。
それは自覚している。
だがそれでも、俺と付き合って後悔しているって言葉が胸の傷を抉る。
「俺、頑張ったんだけどなぁ……」
独り言は廊下の闇に霧散する。
でもまぁ、俺も辛いが1番辛いのは青倉だろうな。
努力して努力して努力して、それでも一方的に別れを告げられた青倉はもっと辛いはず。
こんぐらいで先輩である俺がへこたれる訳にもいかないのだ。
が……、それでもしばらくは立ち直れそうにない。
目から出てくる汁を袖で拭っていると横から声をかけられる。
「先輩はそんな人じゃない。大丈夫だよ……、えへへ……、先輩のまね」
顔を上げると目元を赤くした青倉と目が合う。
「なんて顔してんのよ、先輩……」
そう言って笑う青倉。
俺に言ってくるくせに、自分だって酷い顔だ。
そんな、俺より辛いはずの彼女は袖でグシグシと目元を拭い、笑う。
「はぁーあ、なんでアタシらあんな奴らのためにここまで嫌な思いをしなきゃならないんだろうね?バカバカしくなって来ちゃった。ので、今から殴り込みをかけたいと思います」
そう言って立ち上がり先輩も来る?とか聞いてくる。
「は!?ちょまて!!お前!!」
慌てて襟を掴もうとしたが僅かな差ですり抜けられ、青倉はそのままドアを開け教室に入っていく。
「はいはいはい!カットカットォー!!」
「うおっ!!なんだお前?って泉!?なんでこんなところに!?」
驚くチャラ男を気にもとめずに青倉は続ける。
「セリフ間違えてますよぉ!?何が世界で1番愛してるだぁ?今は世界で1番だろぉ!?次はどの女を世界で1番愛すのかは知らんけど!!こんなところでイチャイチャイチャイチャしてんじゃねーよ!!」
「うるせーよ!!もうお前とは別れたんだから関係ないだろ!?」
「別れたぁ!?散々派手だのビッチだの好みじゃないだの言うだけ言ってアタシの同意も取らずにさっさと逃げ去っておいて!!あれで別れ話が成立するんだったらこの世に離婚調停とかねーんだよ!!」
教室に入らずに外で音だけ聞いてるとかなりヒートアップしている模様。
青倉の言っていることが事実ならチャラ男は相当なクソ野郎だな。
「でももういいわ。あんたみたいなクソナルシ野郎には付き合ってられない!!アンタみたいな根性無しとは望み通り別れてやる!!」
「っ!!誰が根性無しだって……!?」
「はんっ!!お前だよ!もしかして根性もなけりゃ鼓膜までねーの?そのくせ性欲は人一倍強いくせに!!あーあアンタに色々させなくて正解だったわ!危うく色んな初めてをクズ男に奪われるところだった!!」
「ちょっと貴女?」
今まで蚊帳の外で他人面して聞いてた香織が横から口を挟む。
「黙って聞いていれば、この人のことをクズ呼ばわりしたり、暴言を吐いたり。ケンくんはそんな人じゃないわよ?それに貴女、聞いたわよ?ケン君があんなに一途に思ってたのに、キスどころかハグすらさせなかったそうじゃない。それは貴女になにか、やましい事があったからでしょ?それを自分のことは棚に上げて、ケン君を責め立てて……。即刻謝罪しなさい」
「っ……!!」
予想外の援護射撃に青倉の言葉がつまる。
つーか、香織はどの口でやましい事があったなんてのたまっているのだろう。
むしろコソコソ隠れてやましいことをしてたのは、お前らのほうだろうがよ。
そう考えるとなんだかイライラしてきた。
教室の中では未だに青倉と香織が睨み合っている。
俺は、半分空いてたドアをわざわざ音を立て前回にし、教室へ入る。
睨み合っていた全員の視線が俺に集まる。
緊張で吐きそうだ。
1番最初に口を開いたのはチャラ男だった。
「君、今取り込み中なんだ。部外者は出ていってくれるかな」
その言葉を無視して、チャラ男の目の前まで歩き、がんを飛ばす。
「ねぇ、聞こえなかったかな?部外者は出ていってと言ったんだが。君、もしかして耳聞こえてない?」
「俺の事、覚えてない?」
「すまない。思い出せない。なぁ本当に話の邪魔だから……」
「俺も当事者なんだが?」
「は?」
「そこにいるアバズレの元彼ってやつだ」
チャラ男は俺と青倉を一瞥し、合点がいったように笑った。
「あぁ、君がそうなのか。なんだい?2人揃って復讐でもしようっていうの?」
「いんや、別に復讐だとかはどうでもいい。俺に関しちゃな。ただ面白おかしく生きて生きたいだけだからな」
「じゃあなんだっていうんだ?そこの尻軽を助けて俺かっこいい!とでも思いたい感じか?」
「はは、別に助けたいとかは思わないさ」
「じゃあ何しに……」
「まぁそんなことよりさ。さっきそこのアバズレが吠えてたのが聞こえてたんだが、お前はちゃんと青倉のこと、ちゃんと思っていたのか?」
「おい!今誰のことをアバズレって!!」
「質問に答えろよ」
俺はチャラ男を睨む。
「……ッチ!当たり前だろう!!僕は泉のことをちゃんと愛してたさ!!それなのにその女は僕に何も返してくれやしないじゃないか!」
「だから、浮気したと?」
「……はぁ?」
横で香織を睨んでいた青倉の視線がチャラ男に移り、目付きが更に鋭くなる。
「ちょっと先輩、それ初耳なんだけど?」
「そ、そんな事実はない」
「アンタは黙ってて!!」
その一言でチャラ男を黙らせた青倉は再び俺を問いただす。
「どういうこと?」
「あぁ、このバカ男は覚えていないみたいだが、俺はコイツらが一緒にいるところに遭遇してるんだよ」
唯一、覚えているであろう香織は居心地が悪そうに下を向いている。
その悔しそうな顔いいね!もっと見せて欲しいな。
「一緒に居たぐらいじゃ、なんの証拠にもならないだろう。それとも何か?一緒にいるだけでも浮気になるのか?君の恋愛価値観は中学生並だな」
そう言ってチャラ男は勝ったようにせせら笑う。
「まぁそう言わずにさ、証拠の写真もあるから見てみろよ」
俺はスマホでトークアプリを立ち上げ、総悟から送られてきていた写真を見せつける。
その写真は2人が仲睦まじくラブホから出てくる写真。
俺は気付かなかったが、総悟が何かに使えるかも知れないとその場で撮ったやつだ。
どこまでチャッカリしているのやら。
「ま、青倉に見せるかどうかは迷ったけど……。これで一途に愛してたとかの言い訳は出来なくなっちゃったな」
「脅し……か?」
「脅しねぇ……、正直、それも考えたけどな。学校中にばら撒くとか脅して金でも貰うことも出来なくもない。いっそ学校に提出して退学にすることだってできるしな」
それを聞いてチャラ男と香織の顔が真っ青になる。
「だが、それをしたとして、あまり面白くないし、俺は復讐がしたいわけでもない。」
それを聞いて香織達が少しだけホッつく。
「が、それはあくまでも俺の話だ。この写真の処遇は俺1人じゃ決められなくなったから、青倉、これお前が好きに使っていいぞ」
「「!?」」
「え、アタシ?」
助かったとでも思ったのか、幾ばくか緊張が解けていた2人に再び緊張感が走る。
ふへへ、いいねその顔。白ご飯も1杯ぐらいはイケそうだ。
「…………」
いきなり写真を好きに使っていいと言われ、青倉も悩んでいるみたいだ。
そりゃそうか、若干15の少女が2人の人生を台無しにするかもしれない選択を、迷わないわけがない。
しばらく熟考し、青倉は口を開く。
「先輩。その写真……、消して貰えないかな」
「……分かった」
俺はスマホを操作し、写真を削除する。
「い、泉……、許してくれるのか」
恐る恐るといった感じでチャラ男は青倉に問う。
青倉は穏やかに微笑み、チャラ男に近づいて行く。
「……っ!!ありがとう泉!!許してくれてありがとう……!!全然伝わっていないと思っていたが、やっぱり僕の愛は君に届いて─────」
─────バチっ!!!!!─────
おっふ。
青倉は大きく腕を振りかぶり、平手でチャラ男の頬を張った。
その大きな音にビビり、思わず目を瞑る。
「誰が許す許さないの話をした?」
「ごごご、ごめんなさい!!」
「アタシは写真を消してって言っただけだよなぁ?それを許されたと勘違いして、挙句、愛が届いてただぁ!?」
「ひいぃ!!」
「しかも、ちゃんと浮気してるし……」
そう言って青倉は、今度は逆の腕を振り上げる。
「今度は利き腕だ。避けるなよ?」
「……」
───パーン!!!!!───
「ほんっとに最低」
冷めた口調で吐き捨て、青倉は教室から出て行った。
「なぁ、あんた、青倉は自分のことを思っていなかったとかって言ってたが、あいつはちゃんと、あんたのこと好きだったはずだよ」
「……なぜ、そう言い切れる」
「あいつ、お前に振られたってかなり落ち込んで、泣いてた。お前のこと好きだったのにって」
「…………」
「ま、これに懲りたら次はちゃんとするこったな」
自分のカバンと青倉がそのまま置いていったカバンも持ち、そのまま教室から出る。
廊下に出ると、青倉がオロオロしながら纏わりついてくる。
「どーしよ先輩!アタシ、教室にカバン置いてきちゃった!!今さら取り行けないよぉ、どんな顔してもう1回教室に入ればいいんだよぉ!」
「バカが、ノリと勢いで行動するからそうなるんだ。ほれ、持ってきてやったから感謝したまえ」
「ノリと勢いで生きてる先輩に言われたくないね。でも……、ありがとう」
「……ん」
満面の笑みでお礼を言われ、つい柄にもなく照れてしまった。
青倉が、照れてる〜なんてつついて来るが無視する。
と、青倉がいきなり叫びだした。
「ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ー!!!!」
「うお、びっくりしたぁ!!どうしたんだ?」
「で!電車!!まだ間に合う!?」
「いんや、もう間に合わないな5分前とかに発車してる」
「……。どないしよ…門限間に合わないや……」
「まぁまぁ、どうにかなるだろ。お前家どの辺なの?そういえばショッピングモールにいたし、もしかして中央町あたり?」
「……そうだけど」
「じゃあ、バイパス道路使って帰れば電車より早く着くな」
「はぁ?アタシ達まだ学生よ?車なんて持ってる訳ないじゃない」
「あははー、ソウダナー」
10分後、青倉はコインパーキングに停めてある俺の愛車、CB400SFの前で絶句していた。